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あの豊臣秀吉も組織改革に失敗していた?!

歴史が嫌いな私が楽しんでよく聴いている「COTEN RADIO」
深井さんやヤンヤンさんの語りは、決して年号を覚える学校の授業のようではなく、
歴史の時代背景、価値観、登場人物の心の動きも含めてわかりやすく解説してくれるので、
親しみやすく、心に残るエピソードが多いです。

さて、今回「COTEN RADIO 52-6秀吉を待ち受ける天下統一後のネクストステージ」を見て、「秀吉も組織改革で苦しんで、しかも失敗した」ってことを知りました。

秀吉が天下統一したのは、1587年ですから、今から400年以上前も組織改革で苦しんだ人がいたわけです。

私自身も、前の会社で経営者だったとき、ミドルマネージャーにクーデターを起こされて苦しんだ経験があったためか、今回のお話を聞いて胸がしめつけられる気持ちになりました。
(秀吉に比べたら太陽とアリみたいな違いはあるのですが💦)

深井さんがここで力説しているように、
秀吉がした失敗は「属人的問題じゃなくてこういう状況になったらこうなる。」って言葉が刺さりました。

現代の多くの組織マネジメンターが苦しんでいるのは、社長、部長が愚かだからという属人的問題じゃなくて、もっと大きな枠組みの変化による「構造的な問題」によって引き起こされていると言えます。

現代も、大きな時代の変化を迎えており、マネジメント環境も大きく変化しています。
400年前の状況と現代の状況は違いますが、構造的問題は「パラダイムシフト」だと言えます。

パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが、
劇的に変化することを言います。

今日、我々は転換期にある。これから起こる変化は、19世紀半ばの第二次産業革命や、大恐慌や、第二次大戦後の構造変化よりも急激である。(中略)
21世紀の現実はこれまで20世紀において有効であり続けてきた方法や姿勢とは、まったく逆のものを要求しているからである。

明日を支配するもの P.F.ドラッカー/上田惇生(訳)


天下統一で起きたパラダイムシフト


秀吉は戦国時代で初めて天下統一した人ですが、実は、天下統一した瞬間から「パラダイムシフト」が起きちゃったんです。

武力で大出世した秀吉が、ようやく天下統一し、戦わなくても良い泰平の世の中を必死に作ったわけですから「やれやれ、やっと泰平の世が来た」と安堵したはずです。
ところが天下統一の前と後では、今までの「価値観」や「ルール」や「必要とするスキル」や「人材」がガラッと変化してしまったため、天下統一後は以前のマネジメント手法がまったく機能しなくなったわけです。

たぶん、天下統一した直後は、秀吉本人もそんな大変化が起きるなんて思ってもいなかったでしょう。

天下統一前・後で、どんな変化が起きたのかと言うと
①天下統一前後の「価値観」が激変した
天下統一前は、諸大名の間で、戦いに勝つ力が求められていた
・天下統一前・・・価値観は「武力第一」

天下統一後に求められたのは、国の安定と発展ですから、安定した政権運営能力が必要とされます。
・天下統一後・・・価値観は「安定政権維持」

秀吉は、現代で言う総理大臣の責務を負うのと同じですから
彼は、国の運営を一手に担い、法律の制定、予算の決定、外交、国防、公共サービスの提供など、多岐にわたる業務を行う必要がありました。

②天下統一前後で求められる人材もスキルも変化した
統一前は、戦うための戦略や武器を扱うスキルが必要だったのに対し
統一後は、安定政権維持のために、政権中枢と大名をつなぐ「ミドルマネジメント人財」と「ミドルマネジメント力」が求められるようになりました。

③統一前後の政権を維持するための制度も変化した
天下統一前は、大名ごとの内部ルールを適用すればよかったのに対し
統一後は、安定政権維持のために制度ルールを整え、全国に施行をる必要がありました。しかし、天下統一した後の制度が不完全でしたので、やりながら制度を変化させ固めていったのでしょう。


天下統一後の豊臣政権は、政権中枢と諸大名との間を取り次ぐミドルマネージャー層(文官)が超不足してしまったのです。あわてて人財養成するも、なかなかうまくいかなかったようです。

豊臣秀長(秀吉の弟)は調和のとれない豊臣政権のまとめ役(取締役兼統括部長)であり、秀吉のやりすぎを押さえる役目も持っていました。
しかし、秀長死後、秀長が進めようとしていた政権の体制整備が中断されて文官と武官の対立が解消できなかったことにあります。

想像してください。
今までのトップレベルの武力を誇っていた筋肉ムキムキのマネージャー(大名)の元に、本社(豊臣政権)から派遣されたモヤシみたいな若造が来て、偉そうに「本社からの指示ですから従ってください」と言われたらムカつきますよね。

今までは通用していたことが、通用しない。何かが大きく変化してしまったけれど、その変化に心がついていけない。こうした武士たちの小さな不満の積み重ねが、ミドルマネージャー個人に怒りの矛先として向かいました。石田三成も優秀なミドルマネージャーだったのですが、この構造変化に巻き込まれて亡くなった人でした。

きっと、最後まで豊臣秀吉は組織改革に力を尽くしたはずです。しかし、豊臣政権は徐々に瓦解してしまうのです。

静かな怒りが・・・

現代の経営で言うと、自社の経営戦略よりもさらにマクロな外部環境に「ニューノーマル(新しい常識)」が訪れると、今まで前提としていた考えや、社内のルール、行動のしかたがまったく変わってしまって、いろんなところでバグが発生する状態です。

パラダイムシフトは、
価値観、求められる仕事内容、スキル、仕事の仕方、優先順位・・・
今までの全部が根底からガラッと変わってしまうのですから、全員ものすごいストレスに晒されるのです。
苦しいのはあなただけじゃない。
会社の社長だけが苦しいだけじゃなく、ミドルマネージャーも現場の社員も全員苦しむのです。


ここに、コロナ自粛を強いられた後、働き方や生き方の価値観に対するアンケート結果があります。
およそ7割の人が「働き方や生き方に対する価値観が変化した」と回答しています。
また、その変化の内容を見ると、コロナ禍前は、家庭や自分の健康よりも仕事を優先していたが、コロナ禍後は、仕事よりも家庭や自分の健康を大切にする。というふうに、物事の判断軸が自分の内的価値観を重視する傾向がみられました。

コロナ禍によって7割の人が生き方や働き方の価値観に変化
社員一人一人が内的価値観を優先する生き方へ

少なくとも、パラダイムシフトが起きていることを認知している人は、こうなることは予測しているので
心の準備も、方策もある程度は対処できるかもしれません。

しかし、時代の変化と言う大きなパラダイムシフトは、なかなか認知が難しいですし、受け止めるにも時間がかかります。

今まで、会社に忠誠心を持つことが当たり前だと思って無理して働いていた社員。しかし、その魔法はコロナによって解けてしまいました。
社員は、会社よりも、社員自身の心身の健康、家庭、自分の生き方を大切にしたいという「価値観」に目覚めてしまったのです。

つまり、社員が会社を必要とするよりも、会社が社員を必要とする時代になったことを意味します。

働き方の価値観が変わったと言うことは、会社に関わる人全員に新たに求められるスキル、社内制度、仕事のやりかたetcを見直し更新する必要があります。

経営者は、この会社は何のためにあるのか、将来どんなビジョンをイメージしているのかを再定義します。そうしなければ、バラバラの社員の気持ちを一つにすることは不可能になります。

人材不足の今、社員自身の生き方や方針を尊重しながら、会社側がその要望をかなえていく体制ルールに変革しなければなりません。経営者や上司は、部下である社員の強みを引き出し成果を出せるような働きかけも必須になるでしょう。

一方で、社員自身も自分の生き方を見つめ、会社のビジョン・ミッションを叶えることが自分の夢を叶える場であることを前提にして、考えや意見を勇気を出して伝えていく主体性を発揮していけるように意識変革が求められます。

指示命令をしても社員が動かない。指示命令しないと動かない。
と悩んでいる経営者さんは、パラダイムシフトに追い付いていないかもしれません。昭和のやりかたはもう有効ではありません。
後戻りはしないのです。変わるしかないのです。

チェンジリーダーとなるために必要とされる条件の第一が、変化を可能にするための仕組みとしての廃棄である。最初に行うべきは、もはや成果をあげられなくなったものや、貢献できなくなったものに投入している資源を引き上げることである。機能を捨てることなくして、明日をつくることはできない。

明日を支配するもの P.F.ドラッカー/上田惇生(訳)



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