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オランダの学校教育の特徴⑨<オルタナティブ教育の小学校>

以前、オランダでは憲法の中に「学校設立の自由」という条文がある。
ということについて書きました。

オランダの学校教育の特徴①<学校設立の背景>
https://note.com/naom_27/n/nf6f8badafb4c

オランダでは制度上、日本に比べて比較的簡単に学校の設立が認められます。また、学校のカリキュラムにも多様性があります。

私自身、オランダへの移住のお手伝いや、ライターとして記事を書く中で、「オルタナティブ教育」についての質問をよく受けます。

また、オランダは「イエナプラン教育」で有名だという認識が日本国内では広がっているという感覚を持っています。
私自身も移住する前は「イエナプラン教育の学校がたくさんあるらしい!」と勝手に思い込み、イエナプランに限らず、オルタナティブ教育に興味を抱き、色々と調べていました。

しかし、調べていく中で、オランダにおいて、オルタナティブ教育と呼ばれる教育がメインストリームではない。ということがわかってきました。

例えば、私の住むデン・ハーグにはイエナプランの小学校はありません。
オランダで第3の都市と言われるハーグにさえ、イエナプランの小学校はないのです。

他にもオルタナティブ教育と呼ばれるものには、モンテッソーリやシュタイナーなどの教育がありますが、めちゃくちゃ多いという印象はありません。
(もちろん、日本に比べたらその数は多いと思いますが...)

また、意外にあるのは、
「オルタナティブ教育には分類されないけれど、独自のカリキュラムで教育を行っている小学校」です。
そういった小学校は学校登録上では「一般的なカリキュラムの小学校」ですが、学校独自でカリキュラムをアレンジし、人気の小学校になっている場合も多くあります。

私自身もモンテッソーリ小学校をいくつか訪れたことがありますが、
「やっぱりモンテッソーリだから良い学校だなぁ!」
という判断に及ばない学校がいくつかありました。

そもそも「モンテッソーリだから良い!」なんてことはない。と言えます。
「子どもに適した教育」が良い教育であって、カリキュラムが魔法のように全ての子どもの才能を見事に開花させることなどあり得ない。
ということを、学校視察から学んできました。

しかし、教育における選択肢が少ない中で育ってきた日本人にとっては、
「この教育はこうです」
「この教育を受けるとこうなります」

という明確な答えをもらえた方が気持ちが楽になります。

これは、まさに日本人が教育文化の中で「一問一答」の問いを多く解いてきたからかもしれません。

しかし、オルタナティブ教育も、そうでない教育も、全て良い教育です。
学校選択において、あえて一つだけ付け加えるのであれば「学校における教育活動の質の差」かもしれません。

教職員の人間関係が悪かったり、校長の学校経営がうまくいっていない小学校では、教員の交代が多く起きやすくなります。
それが「悪い」とは言いませんが(偶発的に続くこともあるため)、学校選択においてそういった点は注視すべき点かもしれません。

要するに、カリキュラム差があるというよりは、学校差があるということでしょうか。

また、子どもの成長に関して言えば、オルタナティブ教育では特徴的な教育活動を行うため、家庭でもそのカリキュラムに習った生活を心がけなければ、学校教育の効果が得にくい。というのも聞いたことがあります。

最近では、
「モンテッソーリの学校に入れたのに、うちの子は...」
というような言葉を保護者から聞かされることも多くなった。と、あるモンテッソーリ小学校の先生が話していました。

保護者が子どもにとって「適切である」とした教育を受けさせている時、少なからず保護者もその教育の在り方を理解し、家庭でも実践していく必要がある。と、彼女は言っていました。

「学校が全部やってくれるから。という姿勢では...ね。」
と私にウインクしてくれた彼女の表情が忘れられません。

それはある意味、当然のことのように思えますが、オランダにおいても「モンテッソーリ」という言葉を過信し、学校教育に預けすぎている保護者が多いのも事実なのでしょう。

前述した通りオランダには、オルタナティブ教育も含め、ここに書ききれないほどの「教育における選択肢」があります。

「教育/学校選択において何が一番大切なのか」
「一番良い教育とは何なのか」

子ども一人ひとりが異なり、家庭一つひとつが違う以上、
これに対する「明確な答え」は存在しません。

全て違って、全て良い。なのだ。と、オランダに暮らし感じています。






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三島菜央<🇳🇱オランダ在住/元高等学校教諭>
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