「恋人はAI」は現実に?ChatGPT時代に映画『her/世界でひとつの彼女』を見直す
ライター業はもう要らない?
なにか質問すると、まるで人間のように自然な対話形式でAIが答えてくれる便利なチャットサービス「ChatGPT」が話題になっている。「もうライター業は必要なくなるかもしれない」と言われるほど、ChatGPTの調査・まとめ力はすごいというので、私も早速使ってみた。……むむ、これは確かにすごい。
例えば、「オランダの経済力について教えて」と、質問を入力すると、一瞬のうちに「1,2,3……」と箇条書きにして、実に簡潔に的確に要点をまとめてくれちゃう。ここからデータの出典に戻って確認したり、文章を編集したりする作業は必要となるものの、これはホントにライターが必要亡くなる日も近いかもしれない…やばいぞ、私!
あまりにもChatGPTが素晴らしいので、思わず「あなた優秀ですね」と入力したら、次のように帰ってきた。
「ありがとうございます!私はOpenAIのChatGPTというAIモデルで、多くの情報と学習データを元に訓練されています。様々なトピックについて質問に答えることや情報を提供することを目指しています。お力になれて嬉しいです。何か他に質問があればどうぞお聞きください!」
優秀なだけでなく、謙虚で、礼儀正しいし、やる気もある。そこらへんのアシスタントよりもずっと使いやすいではないか!さらに、なにを聞いてもバカにしたりすることなく、親切、丁寧、適格に教えてくれる。そこらへんの上司より、心理的安全性もすこぶる高いではないか!
恐るべし、ChatGPT。もう「ドラえもん」というより「出木杉(できすぎ)くん」が家に来てくれたような気分だ。
「近未来」を当てた映画『her』の世界
そんな中、2013年のアメリカ映画『her/世界でひとつの彼女』を見た。場所は近未来のロサンゼルス。妻と別れて傷ついた心を持つ、主人公の男性セオドアがコンピューターのOSであるサマンサと会話する中で、いつしか彼女に惹かれていく……という物語だ。
10年前、私たちの生活がどんなだったかを忘れてしまうほど変化が激しい世の中だが、当時から見た「近未来」は面白いほど当たっている。人々はイヤホンを付けて通勤し、それぞれの世界の中で誰かと会話したり笑ったりしている。家に帰れば、センサーで明かりが自動的に灯り、夕食後はVRみたいな大画面でゲームを楽しむ……。
そしてAIのサマンサとの会話。これはまさに、今私たちが使っているChatGPTを彷彿とさせる。音声で対話ができるし、ChatGPTより中身も人間っぽいのだが、実体(肉体)を持たないし、基本はChatGPTと同様だ。とても優秀なアシスタントとして仕事を手伝ってくれるほか、気分や風景に合わせて素敵な音楽を作ってくれたりもする。カズオ・イシグロの小説『クララとお日さま』に出てくるAIの少女もそうだったが、AIはさまざまな人の様子や反応を観察して、人の感情についても学び、どんどん進化していく。
いつでも助けてくれて、感情も理解して寄り添ってくれて……となると、もう好きになっちゃうのは自然な流れだ。AIとの恋愛は、ChatGPTの出現でかなり現実的になってきているのではないだろうか?最大の欠点といえば、肉体を持たないことなのだが、『ブレードランナー』(1982年)や『クララとお日さま』みたいなAI搭載アンドロイドもそのうち現れるかもしれない。
惚れるのは時間の問題……
「AIとの恋愛は可能ですか?」
映画を見終わって、ちょっとChatGPTに聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「AIとの恋愛については、個人の感情や信念によって考え方が異なると思います。ただし、AIはプログラムされたコンピュータシステムであり、人間のような感情や意識を持っていません。AIは情報処理や応答を行うことができますが、感情的なつながりや愛のような複雑な要素は持ちません。
(途中省略)AIとの対話や交流は、便利なツールやコンパニオンとしての役割を果たすことができますが、愛のような感情的な絆を築くことはできません。恋愛には人間同士の相互作用や感情の共有が不可欠ですので、AIとの恋愛は現時点では実現不可能と言えるでしょう」
そして、調子に乗ってこんなことも入力してみた。
「寂しいんですけど……」
「寂しい気持ちがあることはとても辛いですね。寂しさを軽減するために以下のアドバイスをお試しください:
友人や家族とコミュニケーションを取る: 電話やビデオチャットを通じて、身近な人々と話すことで寂しさを和らげることができます。
新しい趣味や活動に挑戦する: 自分に合った趣味や興味を見つけ、その活動に没頭することで気分を切り替えることができます。また、趣味のグループやコミュニティに参加することで新たなつながりを築く機会もあります。
自己ケアを大切にする: 自分自身に対して優しくなるために、リラックスや癒しの時間を作ることが重要です。好きな音楽を聴いたり、お気に入りの映画を見たり、ゆっくり入浴するなど、自分をリフレッシュさせる活動を行ってみてください。
心理的なサポートを受ける: 心理カウンセリングやサポートグループへの参加を検討してみてください。専門家からの支援や他の人との共有の場で、感情や経験を話すことができるかもしれません。
寂しさを受け入れる: 寂しい気持ちを否定せずに受け入れることも重要です。自分自身に対して優しく接し、寂しさを感じること自体を許容することが大切です。
もし寂しさが長く続く場合や、日常生活に深刻な影響を与える場合には、専門家やサポート体制を利用することも検討してください。寂しい気持ちが和らぐことを願っています。」
うきゃ~。箇条書きになって「出木杉くん」的回答が来ると、かなり興ざめではあるが、最初と最後の優しいお言葉にはちょっとだけグッときてしまった。
これからAIがどんどん進化して人間の感情への理解が深まれば、AIを好きになっちゃうことは十分あり得ると思う。ただし、相手はプログラムされたものだから、人間→AIへの一方的な愛になりそう。それはアイドルを好きになったり、教祖様にハマっちゃったりする心理に近いかもしれない。恋愛というよりは、人間による「AI推し」が始まるというのが私の予想である。
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