台中JAZZフェスティバルと台中が世界有数のサクソフォン製造地となった物語
先日の金曜日、台中で開かれている「爵士樂音樂節(JAZZフェスティバル)」へ行って来ました。既に暑くない10月の夜、金曜日ともあって、メイン会場である市民広場では、多くの人たちが音楽を聴きながら楽しそうに過ごしていました。
前の方に座って音楽に聴き入っている人、ビールを飲みながらジャズのリズムを楽しむ人、音楽そっちのけで友達と語り合う人、雰囲気を味わいに来ている人、人それぞれの楽しみ方が出来るこの音楽イベント、今年で20年目を迎えたそうです。
私が会場に着いて暫くすると、日本人の小林香織さんというサックス奏者の方がステージで演奏を始めました。少しの中国語であいさつをして演奏に入り、観客も温かく拍手をして。とてもいい雰囲気。海外の野外ステージで日本人の演奏を聴けるなんて、嬉しい機会です。
日本人だけでなく、海外からも有名なジャズアーティストが出演するこのイベントは、10月11日から20日まで開催されました。メイン会場での夜の演奏のほか、台中の各地でも演奏会があったようです。
主催は台中市と台中市文化局。事前にチケットを買う必要がないので、仕事帰りにふらっと立ち寄ってみることもでき、気軽に参加できるイベントであるのが魅力的です。
ところで、ジャズといえば、サクソフォンの音色を先ず思い出す私ですが、そのサックスを台湾で初めて製造し、世界的なブランドとして成長させた町が、台中市にあるのをご存じでしょうか。
それは苗栗県に隣接した、人口5万3千人程の「后里」という地域です。
なぜ「后里」がサクソフォン製造の里になったのか。
その経緯が、許世楷元駐日台湾大使の奥様である、盧千惠氏の著書「フォルモサ便り」に書かれていますので、要約してご紹介したいと思います。
「第二次世界大戦後、后里に住んでいた張連昌さんという青年は、隣に住んでいた、かつて日本で作曲の勉強をしていた張基盤さんが吹くサクソフォンの音色が大好きであった。しかしある時火事が起こって、サクソフォンが焼け焦げてしまった。張連昌さんは、大変器用な人で、見つかったサクソフォンを分解して、400の部品の一つ一つを精密に写し取り、三年の時間をかけて台湾最初の手作りサクソフォンを組み立てた。張さんは、この自分が作ったサックスが、米進駐軍所属のフィリピン人奏者に大金で買いつけられたことをきっかけに、楽器作りをスタートさせて、「連昌楽器工場」を作った。その後、フランスなどからも下請け注文が多く入るようになり、年間多い時で六万本を製造していた時期もあるー」
1980年代には、世界で生産されるサックスの3つに一つが台湾製だったそうです。三代目になり、独自のブランド「LC」(張さんのイニシャル)を生み出し、技術力があり、品質が良く、ラインナップも豊富と、今でも世界で高い評価を受けているという后里のサックス。
張さん、という一人の青年の「情熱」が、サックスという宝物を生みだして、小さな后里という町が楽器を通じて世界につながっていったことー
素敵で誇らしい町の物語ですよね。
后里には、今もサックスを作り続けている工場のほか、張さんを記念して作られた「張連昌サクソフォン記念館(張連昌薩克斯風博物館)」があります。サクソフォンの展示や、製造工程の説明を見ることができ、張さんのサクソフォン物語に触れることができる場所となっていて、横にはサックスの模型やオルゴールなどが作れる体験工場もあります。子供を連れて行っても楽しめるかもしれません(私も随分前ですが、一度行ってきました)。
住所をお知らせします。
水曜日が休館日のようです。
張連昌薩克斯風博物館
台中市后里區公安路330-1號
電話 04 2556 2363
機会がありましたら、どうぞお立ち寄り下さい。
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