ベイツメソッド
ベイツメソッドとは、さまざまな改善できないと思われている目の症状を改善するメソッドです。このメソッドを使うことで、近視、遠視、老眼、ダブルビジョン、乱視などの症状がよくなって、より見えるようになった人もたくさんいます。「見えなくても見える?」に出てくる、デビッド・ウエバー氏やモシェ・フェルデンクライスも影響を受けたメソッドです。
開発者のウイリアム・ベイツさんは、目医者さんです。いろんな患者さんを見ていくうちに、なぜ彼らは視力が良くならないのか、疑問に思い始めました。そして、研究に研究を重ね、眼科医者から従来信じられてきた既成概念を、次々と覆していきました。その一つが、「近視は改善しない」と言う思い込みです。ベイツさんは、目にかかる物理的、心理的ストレスが視力を弱めてしまうこと、近視は改善できることを、"The Bates Method for Better Eyesight Without Glasses" で滔々(とうとう)と語っています。
私が出会ったベイツメソッドの講師は、カルロス・モレノさんと言うロサンゼルス在住の方です。彼は27年前に自身に起こったコンタクト事件をきっかけに、ベイツメソッドを練習して近視を克服しました。彼の目は澄んでいて、目の下のくまや窪みなどは一切ありません。見え方と実際が一致しているのだなと思わせます。彼のようにこのメソッドで、度が強い近視や遠視、老眼がなくなった人が何人もいるのです。 で、ベイツメソッドって、一体何をやればいいのでしょう?それが、びっくりするぐらいシンプルなんです。そして、とても地味です。一言で言うと、目を疲れささない練習なのです。 最初は、私も、え?それだけ?って感じでした。まあ、色々とテクニックはあるものの*、結局全ては、自分がいかに凝視をやめて、目を疲れささないことができるかにかかってるんです。
ベイツメソッドのプロセスは、 次のようなものです。
まず「凝視している自分」「目が疲れている感じ」を感知する。そして、「凝視をやめて、目を休め」ます。これが大変難しい。特に近視の人は、凝視する癖があるので、目がすぐに疲れてしまう。仕事をやり始めた途端に、目が疲れているのがわかるのですが、それを無視して仕事を進める。すると目は、緊張した状態にロックインされてしまいます。こうなってしまうと、なかなか休めることができません。目が痛い、疲れている、休みたいと言っているのに、休むことを自分に許さないんですよね。これ、私も身に覚えがあります。やはり、目と心は密接に繋がっていますね。
目を休めるための実際のテクニックは、こんな感じです。
パルミング(手で目を覆う)をしながら、「黒」の色をつぶった目の視覚視野を広げる、楽しかった思い出を思い出す。または、自分の記憶の中の「黒」のイメージで鮮明に思い出せるものを選んで視野の中に広げていく。墨汁で満たされた筆で自分の名前を書き、視野を黒で満たしていく、など記憶にあるよく知っているイメージを使うこと。
シフティング (一つのところを見つめないで、様々なところに焦点をシフトする。)この際、眉と眉の間にレーザーポイントを想像し、目で見るのではなく、レーザーポイントをシフトさせていく。
スインギング(体を左右に少し動かし、見ているものが反対の方向に動くのを知覚する)脳に全てのものは動いているのだと教えることによって、凝視を解く。
と、最初はこの三つをやります。 そして、**できるだけメガネやコンタクトを外す。ベイツさんによると、メガネやコンタクトは目にストレスがかかり、視力を悪化させるだけだと言います。これは実際、私も体験しました。近視ももちろんそうですが、老眼鏡をかければかけるほど度が進み、文字が見えなくなり、もっと強い度の老眼鏡を調達しなければならないとわかって、かけるのをやめました。そのことを目医者さんに言うと、先生はなぜか恐怖に引きつった顔で、「かけとかないとダメだよ!」と言うのです。その他にも、「君は右目と左目の差が激しいから、網膜剥離にならないようにしっかり検査をしておくように。」とも何度も念を押されました。「気をつけるって、どうしたら良いんですか?ジャンプしたらダメとか、そう言うことですか?」何も知らなかった頃の私は聞きました。「いや、そう言うわけじゃなくて、視野が少しでも欠けてきたり、飛蚊症が急にひどくなったら、すぐに来るんだよ。」え!?それって、網膜が既に剥離しかけてからじゃないですか!その前に気をつける方法を教えてくださいよー。
目医者に行く度に、解決策を提示されることなく脅されるだけで、暗い気持ちになっていたのですが、最近同じことを言われている人達がたくさんいて、彼らも近視を克服したと聞き、元気つけられました。
メガネの話に戻ります。アメリカでは、マイナス何々と言う度で視力を測ります。例えば、処方箋でマイナス10だと、レンズを調整して、正常な人が見るよりも、物が10倍小さく見えるように作ります(近視の場合は凸、遠視の場合は凹)。自分の目の中のレンズで光が屈折する前に、もう一枚の人口のレンズで光を屈折させるのです。そうすると、裸眼で見ているよりも、クリアに見えるようになりますが、眼球は既に近視や遠視で変形している上に、レンズに適応するようにさらなる歪みを強いられます。
最近、メガネをとる時間を増やしているせいか、メガネが本当に嫌になってきました。私は日本製の軽い金でできたフレームを使っていますが、その金が皮膚に当たる違和感、目の周りに箍(たが)をはめられているような感じ、そして、メガネを欠けていると、メガネで見える範囲での世界だけに自分が集中していることがわかりますし、目に非常に負担がかかっているのが、徐々に感じられるようになってきたのです。 メガネを外して外を歩くことが多くなり、自分が清々しい気持ちで満たされるのを感じます。裸眼で読んだり書いたり、コンピューター作業をしたりとまでは、なかなかいきませんが、今は、「見える」ことよりも「自然で疲れない」ことを選びたい気持ちでいっぱいです。
ちなみに、ベイツさんや他の目の専門家によると、人間の目は、現代社会で求められている、文字を読んだり書いたり理解したりする作業に適応できるようには、進化してこなかったそうです。ふーむ。