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日本は何処へ〜風の子供

日本の子供は元気だ。すごく可愛い。見た目だけじゃなくて、なんていうか、態度が可愛い。声が大きくて清々しい。「子供は風の子」のタフさがあり、「大和魂」の礼儀作法を持っている。自転車で三人組でパーっと走ってきて、すれ違う私に「こんにちは!」と大きな声で挨拶してくれたり、ちょっと前に、これまた自転車で急カーブしすぎてこけてしまった男の子を助けてあげたら、「ありがとうございます!」とキリッと言って、さーっと去って行ったり。大袈裟かもしれないが、近くの公園で野球やドッジボールをしたり、鬼ごっこをしている子供たちを見ると、日本の将来が大丈夫なような気がして、心が少し休まる。その反面、私が英語を教えている中学生の子たちは、もう既に元気がない。宿題、塾、課外活動に追われて休む間もなく、寝る暇も惜しんで勉強しているので、目にクマを作って、いつも疲れている。中学や、いや下手すると小学生でさえも、シリアスな社会問題を考えることが要求されている世の中、子供らしく元気でいられるのは小学校低学年ぐらいまでなのかもしれない。

もちろんこれは、私の行動範囲内でなのだが、今までアメリカで見てきた子供たちは、活気がなく、子供らしくない子が多かった。アメリカの公立学校は経済的に恵まれない家庭から来る子が多いのだが、ハワイで小学校に派遣されていた時は、貧富の差によって、借りてきた猫のように振る舞う子供がいるかと思えば、暴れ回って暴言を吐く小学生もいた。ニューヨークや他の州でも公園では、子供はいつも家族と一緒で、子供たちだけで遊んでいる光景を見ることはほぼなかった。これは治安のせいもあると思う。

子供といえば、スロベニアに行った時、こんな光景があった。3世代ぐらいの家族で公園からの帰り道、三輪車に乗っていた男の子が大人から遅れ始めて、とうとう転けてしまった。前を歩いていた大人たちは振り返ったが、急いで走り寄ろうとはしない。「大丈夫だよ、起き上がれるよ」と言いつつ、見守っているだけだ。そして、その子供は、「大丈夫」という言葉に安心したのか、泣きもせず、歯を食いしばるでもなく、自分で起き上がって前の大人に追いついた。そしてその家族は、何事もなかったかのようにゆったりと散歩を続けたのだった。日本とかアメリカだったら、すぐに走り寄って助け起こしたり、はたまた「歯を食いしばって自分で起き上がれ」的なことを言うかもしれない。ヨーロッパの骨太さ、スロベニアという国のおおらかさが感じられる出来事だった。

テクノロジーが進んでいく社会とバランスをとるかのように公園で走り回る子供達。これから来る世の中、この子達はどういうふうに育っていくのか案じてしまう。心身がエネルギーに満ちていて、想像力豊か、果てしない可能性を秘め、大人が逆立ちしても考えつかないことを考える目がキラキラした子供、そんな子供らしさを持ち続けてほしいと願うばかりである。



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