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『オペラ座の怪人』/パリ・オペラ座の秘密~5~
『オペラ座の怪人』で怪人が舞台を鑑賞するのは舞台に向かって左手(下手)の5番ボックスという設定になっています。
「ボックス席」は日本にはない客席の形態です。
実際に行ったことがある、という方も多くいらっしゃると思いますが、オペラ・ハウスらしい一番好きな客席でもあります。
欧州のオペラ・ハウスでは大抵この「ボックス席」が備わっています。
『オペラ座の怪人』のセリフでも出てきますが、この席は「キープ」するものでした。
つまり、現在のように客席として席が1枚ずつ購入できるようになったのは本当にごく最近の事で、ボックス単位で販売されていたのです。
ではそれまでどのように席が販売されていたか、と言えば『オペラ座の怪人』の時代は家によって年間買取、曜日による買取といった「アボネ」(定期予約者)という方法でした。
ですから、ボックス席には○○家の人か関係者が必ずいるという空間でしたし、人数もボックス席に入れば大丈夫でしたから、一応定員はあったもの、今のように席での販売ではありませんでしたから厳密なものではありませんでした。
また、ボックス席には現在もそうなのですが、ドアを開けるとまずコートをかけたり、鏡があってちょっとした身だしなみを整える空間があります。
1990年代までは頼むとここに高い足のついたクーラーに入れられたシャンパーニュやプチ・フールなどを頼むこともできました。残念な事に現在はそうしたサービスは一切できなくなりましたが、空間は残っています。
冬などコートをクロークに預けずにそのままこちらにこられるのは便利です。
この空間と客席部分にはカーテンがあり、現在は常に半分開いている状態ですが、完全に閉じることも構造上は可能で、以前は人目についてはいけない恋人たちや、政治の密談にも使われた空間です。
Box席は一番オペラ座らしさを感じる事ができる空間で大好きなのですが、元々あまり写真を撮る習慣がないので気が付けばほとんど写真がありませんでした。
また別の機会にご紹介できたらと思いますが、1990年代はこのBox席、入るためには会場係員が持っているノブをつけて開けてもらうほかなく、その度に必ずチップが必要でした。
それがどうしてもイヤな人は中に人がいるのを確認してコンコンとノックして開けて貰ったりしていました。
今でも幕間に誰かが閉じてしまった時にも中の人にノックして開けてもらうということもあります。
私はチップ制度はそれほど悪いものだったとは思っていないので、あれもまた一つの「風景」として懐かしいものです。チップを入れる小さなポケットがついた洒落た手袋を愛用していた時期もありました。
今でもBox席にはドアノブはついておらず、内側からしか開きません。
「オペラ座の怪人」が舞台を見ていたとされるそんな独特の空間、ヨーロッパ諸国にお出かけの際には是非体験して下さい。
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