一番好きな香り
香水は人生で欠かせない、大好きなものの一つ。
無人島に流されても何かきっと花、木の実、流木、石を打ち付けた香りなど何か香りで遊ぶだろうな、と思うほど好き。
香水はあれこれ試して随分色々なものを使いますが、一番よく使う香り、長く使っている香りは何かしら、とふと考えてみると、結局この香りかも…。
と、いうのがランコムのTresorです。
(日本語表記が「トレゾァ」となっているのがちょっと違和感があります。フランス語ですし「トレゾー+小さなル」と発音しますので)
宝物、という意味のフランス語。
1952年にJean Hervelinによって調香されたのが最初だそうですが、香調は違うもので継承したのは名前だけとのこと。
1990年のリニューアルは「香りのピカソ」とも呼ばれた調香師Sophia Grosjmanによるもの。
最初からトップノートが香っていてもいいという新しい発想で薔薇の香りが時を貫くフレグランスとしてなかなか革命的だった側面もあるよう。
私が知ったのは1990年代のリニューアル時。
イザベラ・ロッセリーニがイメージ・モデルでした。
最初のTresorが生まれた年に生まれた彼女のイメージが一番鮮烈かもしれません。
後から知った事ですが、もともとプライベート・フレグランスとしてSophia Grosjmanが作った香水をイザベラ・ロッセリーニのイメージ調香したものがTresorとなったとか。
以後、イメージモデルはイネス・サストレ、ケイト・ウィンスレッド、ペネロペ・クルス、エマ・ワトソンと変遷していますが、香りのベースは変わっていませんが、少し私の鼻が悪くなったわけではなく、人工香料の部分が多少弱まったとの記述があり、納得しました。
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このイザベラ・ロッセリーニのイメージはパリ・オペラ座の公演プログラムの裏表紙にもしばしば登場しています。
1992年に少し長めの滞在だった時のプログラムでも手にしたのも思い出の一つです。
そしてイザベラ・ロッセリーニはミハイル・バリシニコフで有名な映画『ホワイト・ナイツ』が最初の大きな役でもあったりします。(ちょっとこじつけっぽいけれど、本当のお話。)
香水を私が最初に手に入れたのは、発売すぐの事。
当時まだ日本発売が決まっていない頃、父が出張で海外に行く時にお土産として頼んだのでした。ですから、『high fashion』誌の文字情報と「宝物」という名前とイメージだけが頼りでした。
そして父はよくわからなかったのかもしれませんが、100mlというビッグボトルをもって帰国。アプリコットピンク&オレンジがふわっとにじんだボックスをちょっとドキドキしながら開けました。
今は見かけない底に向かって小さくなる台形型の凹凸のあるボトルで、かなり大きなものでした。フランスのランコムサイトには100ml自体は掲載があるのでまだあるのかもしれません。(写真がなくて確認できず)
私にとってのファーストフレグランスではないのですが(その話はちょっと長くなるのでまた機会があれば)、印象に残る1本でもあります。
そして初めてまとってみて、想像以上に甘やかな香りではあったのですがすぐになじんで大好きな1本になりました。こんなに?と思った100mlも案外あっという間でした。
面白いな、と思うのですが、今では自分が分からないけれど疲れてしまっている時に一番心地いいと思う香りにもなっていて、朝からこれに手が伸びる時は疲れているのだ、という一種のバロメーターにもなっています。
以前、医師に「どうやったら自分が疲れているって分かるんでしょうか?」とお尋ねしたらちょっと当惑気味に「普通は分かるんですけれどねぇ」と言われてしまいましたが…。
それを教えてくれるのは私の場合フレグランスの選択なのかも。
もう何リットル使ったか分からないほど愛用しています。
少し離れる時期もあったのですが、結局は戻って来る香り。
発売以来手元になかった時期が事はない香りです。
派生した香りがいくつか出ていて、試してはみたのですがオリジナルが一番好き。
最後のパウダリーなヴァニラがふわっと感じられる香りは本当にほっとします。私のフロリエンタル好きのスタート地点でもあるのだろうな、と思います。
かなりのレア商品だそうですが、1954年頃に開催された社交界のイヴェント用につくられた下の写真のようなボトルも存在するそう。
ダンサー達と名付けられたこのボトル、どこかで出会えたらいいなぁと思っています。何のイヴェントのためにつくられたのかも気になります。
香りといえば、先日ご紹介した『香りの器 高砂コレクション展』は21日まで開催中です。