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マシュー・ボーン版『赤い靴』の中のバレエ・リュス~2~


マシュー・ボーン版『赤い靴』の中のバレエ・リュスを引き続きご紹介していこうかなと思います。

あまり書くと「ネタバレ」になるのかな…とも思いますが、バレエ・リュス周りだけ、ということで。

1回目にご紹介した『火の鳥』の絵画だけではなく、色々、バレエ・リュスがちりばめられている作品です。今日はバレエ・リュスのダンサーのお話。

さらに、今日は2月22日 "猫の日" だそうなのでバレエ『牝猫』をヘッダーにしてみました。
男性は後にパリ・オペラ座芸術監督になったセルジュ・リファール、女性はアリシア・マルコワです。バレエ・リュスによって1927年初演された透明のチュチュ(正確にはチュチュの上に透明のスカート)衣裳、美術で上演されたバレエです。

映画『赤い靴』の冒頭で登場するスター、イリナ・ボロンスカヤはアリシア・マルコワがモデルなのです。
そこで演じられるダンサー像はマルコワの「ザ・スター」的な存在感や発言、態度を少し知っていると彼女の場面の面白さが倍増するかも。

役名ではロシア人になっていますが、実はニネット・ド・ヴァロワに次いでバレエ・リュスに参加した英国人ダンサー。本名はリリアン・アリシア・マークス。(バレエ・リュスではロシア風な名前やロシア名でも発音しやすい表記への改名がしばしば行われいるのです。)

バレエ・リュスに1925年に参加した時には14歳と非常に若く、後にバレエ・リュス・ド・モンテカルロが結成されて看板スターとして10代のバレリーナ3人が ”ベビー・バレリーナ” として登場すると「私こそが本当の "ベビー・バレリーナ” なのよ」としばしば不満げに語っています。
(当時、英国外での14歳での就労ヴィザは苦労もあったそう。)
「アンナ・パヴロワのミニチュア (原語 "Miniature Pavlova" なのでもっといい訳もありそうですが)」とも呼ばれたダンサー。

アリシア・マルコワはバレエ・リュスで活躍した後、バレエ・リュス・ド・モンテカルロにも参加、バレエ・リュスの最後の男性スターの一人アントン・ドーリン(『青列車』は彼のためにつくられた作品)と「マルコワ・ドーリン・バレエ団」を結成して、英国のバレエの発展にもとても大きな影響力のあった人物です。1963年には英国王室より「デイム」という継承権を持たない準貴族に列せられています。

映画『バレエ・リュス~踊る歓び、生きる歓び~』の冒頭にも出演されていますが、私は残念ながらお会いした事はありません。

映画の冒頭場面でも彼女のまさに「スター」といった振る舞いや口調も印象に残ります。
日本語版DVDはだいぶ高騰しているようですが(再販されたらいいのに…)英語版でも見られる方は簡単に手に入りそうですので、可能な方は是非。

映画マシュー・ボーン版『赤い靴』の中では彼女の怪我によってヴィクトリア・ペイジという若い女性ダンサーがスターの座につきます。ロシア人の後にヨーロッパ系の「Page=小姓」と言う名前のダンサーがスターに着くというのもちょっとにやっとしてしまう点かもしれません。

映画好きであり、バレエ史的な視点も沢山含まれたマシュー・ボーン作品は沢山の楽しみ方ができそう。

アリシア・マルコワは今ではこんな映像が簡単に見られて嬉しい限り。

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こちらはアントン・ドーリンと。

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こちらは1950年代で少し遅いのですが全幕も!
「ジゼル」は当たり役の一つでした。(バレエ・リュスで1930年に上演の話があったものの、1929年にディアギレフの死で解散したため実現しなかった上演でもあります。)

バレエ・リュス、もっと知りたい!と思われた方は3月21日&3月3月31日(同じ内容で2回開催です)Zoomトークご参加下さいませ。

2021/03/21 (日)18:30-20:00 (サイトの表記の登録が21:00になってしまっておりますが、正しくは20:00です。システム上訂正ができないので、申し訳ありません) はこちらから。 


3月31日(水)14:30-16:00はこちらから




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