【固定記事】ごあんない
みなさま、こんにちは。漫画家の尚桜子(NAOKO) です。
本格的ストーリー漫画から、自伝マンガ(出産・育児・家づくり)まで幅広く描いています。2021年4月に描き下ろしコミックエッセイ「家キャンプはじめました。」がA&FBOOKSより発売!
過去の読み切り作品集も電子書籍としてもうすぐ発売予定です。
専門校でマンガ講師も経験し、マンガ家やマンガ業界についてもいろいろ思うところがあります。よかったら時々のぞいてくださいね!
【連載】にわかですが、ベイスターズと少年野球を楽しむ4コマ!
https://note.com/naoko_y/m/m61d8ab65bc8f
【連載】うめちゃんのどき★土器すていほーむhttps://note.com/naoko_y/m/m6f8d6819f013
【連載】わが家は今日も建築中!~子ども部屋編~https://note.com/naoko_y/m/m999fbfeb2db9
【掲載中】
わが家は今日も建築中!【1】物件探し編
https://note.mu/naoko_y/m/m22da344f37fc
わが家は今日も建築中!【2】家族愛編
https://note.mu/naoko_y/m/ma6b0288b9360
わが家は今日も建築中!【3】購入編
https://note.mu/naoko_y/m/m890068cb066a
わが家は今日も建築中!【4】デザイン・設計編https://note.com/naoko_y/m/m54107a2c4f99
わが家は今日も建築中!【5】最高のわが家編https://note.com/naoko_y/m/m3ad45b9ee353
お産トラウマは怖くない!
https://note.mu/naoko_y/m/m2e768287c5c5
天使のサプリ
https://note.mu/naoko_y/m/m634aec926b83
全力イラスト(不定期)
https://note.mu/naoko_y/m/m294415081815
【雑感】漫画家・尚桜子のひとりごと
https://note.mu/naoko_y/m/m850be8f9dbef
「わが家は今日も建築中!」は、CLAP社の運営するサイト「デンショバ」で連載されていましたが、より多くの方に見ていただくためnoteでも発表することになりました。
以下の記事は、noteをご利用の皆様に「初めまして」のご挨拶として、担当の編集者がインタビュー記事としてまとめてくれたものです。
漫画では語られない裏話や、夫・タカの本音も語られていますので、漫画を読む前にぜひお読みください!
【インタビュー】夫婦の絆が強まる住宅購入って?
マンションではなく、建て売りではなく、注文住宅にした理由
――このマンガを描こうと思ったきっかけは?
尚桜子 住宅の購入って、人生に一度あるかないかの決断だと思うんです。理想の住まいを手に入れるまでの道のりは険しくて、土地さがしから購入、設計、建材さがし、入居にいたるまでにたくさんの衝突があって、本当に大変でした。「この体験をマンガにして残したい」そう考えたのがきっかけです。
――はじめての不動産の購入がマンションでもなく、建売でもなく、注文住宅という人は、珍しいと思います。建売や中古の戸建ては検討しなかったのですか?
尚桜子 自分たちの理想とする住まい、ライフスタイルを突き詰めていったときに、パッケージの建売では満足できず、注文住宅しかない、と思うようになりました。たまたま義理の兄が建築士だったので、たくさんのアドバイスをもらうことができました。詳しくは、ぜひマンガで読んでください!
タカ 建売は、たくさん見ていましたし、最初は中古でもよかったんですけどね。でも、見ているうちに目が肥えてしまったんだと思います。
――マンションは?
タカ マンションという選択肢は、最初からありませんでした。個人的なイメージですが、マンションは最終的には売り抜けるマネーゲームのような気がして。人によっては、家は資産で、帰って寝るだけの箱でもいいと思う人もいるかもしれませんが、私自身、田舎の一軒家で育っていますし、それではちょっと寂しい気がしていました。何より、妻の意向も強かった(笑)
尚桜子 私は、空中の空間にお金を払うのがムリ!って思っちゃう(笑)
タカ もちろん、住まいに対する考え方はいろいろです。僕も妻も一軒家で育ったから、家に対する価値観は近かったんだと思います。子どもの頃の記憶を辿ったときに、親はよく庭仕事をしていました。そういう原風景が、住まい探しには大きく影響するんだと思います。
タカの実家問題
――地方で育った長男であれば、実家の問題はついて回ることになると思います。実家ではない場所にマイホームを買うに至った理由は?
タカ 実家の問題は、いつか向き合うことになるだろうと思っていました。実家の親がどう考えているか、自分は長男としてどうあるべきか、という問答ですね。親は、「私たちのことは考えなくていい」と言ってくれますが、本心かどうかはわかりません。自分たちが引き継いできたものが今後どうなってしまうんだろうという不安はあると思います。
尚桜子 どんなことでも、話し合うのが大事だと思います。タブー視がいちばんよくない。タカの実家はちょっとした地主さんだったから、とくに考えるところがあったと思います。
タカ 普段の会話で話すことではないと思いますが、親が元気なうちに決めないといけない、大切なことですよね。
――今は、実家のことをどう考えていますか?
タカ 現段階で、将来どうするかという結論を出すことはできません。でも、家を買って、地域での人間関係ができてくると愛着がわきます。そういう気持ちの変化はあります。
尚桜子 今から何十年後の将来のことを今決める必要はないのかなと思うようになりました。私の父が、よく言っていることがあるんです。人生には三つの坂があるって。それは、「上り坂・下り坂・まさか」の三つです。
――「まさか」があるから、物事はいまを基準に考えたほうがいい、ということですね。
便利さがストレス?
――以前のお住まいは、東京の杉並区でしたね。都会は便利な一方、敷地面積が狭いし、人も多い。郊外に住まいを決めた理由は?
尚桜子 東京は便利ですが、「暮らす」というのとは少し違うような気がしていました。今はちゃんと「暮らせている」っていう感覚があります。
――尚桜子さんにとって、便利さはいいことではないのですか?
尚桜子 私は神奈川県の田舎のほうの出身です。家の目の前に神社があって、木々のざわめきが好きでした。都会は、職場が近ければ便利でしょうが、私のように家で仕事をしていて、子どもたちの送り迎えをするだけだったら、かえって都会は不便なんです。一方通行は多いし、駐車場は少ないし高い。子どもにとって一番いい環境を用意するために、落ち着いて生活できる場所を求めていました。
――都会は落ち着かない?
尚桜子 選択肢の多さが、かえってストレスになることもあります。たとえば娘にバレエを習わせるのに、東京だと通える範囲にバレエ教室がいくつもあります。そうすると、それらの評判を調べなくてはいけない。
――駅ごとにひとつ、教室があったりしますよね。
尚桜子 駅ひとつ向こうの教室に行くのを「遠いから」と躊躇うと、それは私の怠慢なんじゃないかって思ってしまう。最寄りの教室を選んだ自分の決断に確信がもてなくなるんです。もし、二駅先の教室まで送っていけばベストな環境を与えられるのに、その手間を惜しむのは母親として正しいのだろうか、と考えたりするんです。
――選択肢がなければ、悩む必要もないわけですね。都心の便利さについて、タカさんはどうお考えですか?
タカ 私は会社員です。通勤時間は毎日のことですから、重要なポイントでした。
――バスは嫌?(笑)
タカ そうですね(笑)。ここから駅まで、徒歩で12分くらい。会社までは、ドア・ツー・ドアで1時間10分くらいです。職場が家から近いと便利ですが、妻は勤めているわけではないし、広い公園がある地域のほうが、子どもにとっていいと思いました。
――毎日の通勤時間が往復でおよそ2時間半。正直いって、東京のほうがよかったのでは?
タカ 家と職場が近いと、平日でも早く帰って家事を手伝ったり、子どもの送り迎えに協力したりもできますが、通勤に時間がかかるとそれができなくなることもある。妻には、それを理解してほしいと伝えました。
――互いに主張があるから、価値観をすり合わせるのは難しいですね。
尚桜子 相当手加減して描いているんですけどね(笑)
――そうなんですか!ときどき「尚桜子さん、手厳しいな…」って思っていました。
3度の家出
――タカさんは、サイトアップする前にマンガを確認しますか?
タカ 見ます。でも、だいたいすでに完成されています(笑)。
尚桜子 もはや直せない段階で(笑)
タカ 「いいよね?」っていう圧力を感じますね(笑)。もっとも、ストーリーの流れもありますから、今までNGを出したことはありません。
――実際と違うところもあるんですか?
尚桜子 たとえば、家を飛び出したのは1回じゃありません。3回くらい家出しました。
――マンガでは、飛び出した次の回ですぐ、夜には帰ってきましたが、何をしていたんですか?
尚桜子 2駅くらい歩いたけど、行くところもなかったから、一人でカラオケに入りました。
――何時くらいだったんですか?
尚桜子 22時くらいだったかな。
――思っていたより早く帰ってきたんですね(笑)
尚桜子 出て行ったのが17時くらいでしたから(笑)
――戻ってから、どんな話をされたんですか?
尚桜子 よく覚えていませんが…ずっとケンカをしていたこともあるし、たまに蒸し返したりしたこともあります。でも、ここに引っ越してからは、子どもが「パパとママ、ケンカしなくなったね」って言ってくれました。
タカ ケンカ減ったよね。
男と女の価値観の違い
――購入を決めてから、ケンカは減りましたか?
尚桜子 設計が進み、実際に建築が始まると、休みのたびにトシ(義兄の設計士。以下「トシ」)との打ち合わせがあるし、決めなければならないことがたくさん出てきます。お互いに疲れちゃって、険悪になった時期もありました。トシが私たちの意向を丁寧に聞いてくれるうえ、完璧主義なので、またずいぶん時間がかかっちゃって…それはこれから、マンガで描きます。
――楽しみ!
タカ トシさんは建築士で、尚桜子は漫画家だから、どちらも表現者といえます。二人ともこだわりが強いから、選ぶものがどんどん高価になっていくんですね。一方、私の意見はほとんど通らない。それが、なんとなく面白くなくて…。「お金を払うだけかよ!」って思ったこともあります。
――どうしてタカさんの意見は採用されないんですか?
尚桜子 トシは建築家だから当然、建材に詳しいんです。私の意志を先回りして理解してくれる。でも、タカはその分野の人じゃないから、置き去りになっちゃう。私も気にはなっていたのですが…。
――時間もないでしょうし、どんどん進める必要がありますからね。
尚桜子 タカが怒ったとき、その理由は理解していたつもりですが、私もまたいっぱいいっぱいだったんです。
――具体的なケンカの原因は何でしたか?
タカ タイルとかカーテンとか、細かいところです。
尚桜子 例えばカーテンだと、フロントレースといって、窓側にドレープ、部屋側にレースを付けると、カーテンを閉めたときにレースの模様がすごくきれいに見える付け方があるんです。私はそれが憧れで、そういう視点でカーテンを探していました。でも、タカにとってはそんなに価値のあるものではなく、「それって、何かいいことあるの?」みたいになっちゃって。機能は変わらないけど、キレイじゃん!っていうのが共有できない。
タカ そうなると、もう勝手に決めればいいじゃないかって思っちゃいますよね。休日のたびに車を出して、妻がトシさんと商品を見ているあいだは、子どもの面倒をみなきゃならない。たまに提案すると、けんもほろろだったりして。
――お金を出すのは、主にタカさんですからね。
タカ 注文住宅にしたことで、ただでさえコストがかかっていますからね。このままいったら、どうなっちゃうのかなって不安に思いました。
――傾向として、男は「機能」さえ問題なければ、あとは安いほどいいって考えると思います。
尚桜子 家にいる時間の多い妻からすると、一番目立つリビングのカーテンで手を抜いたら、これまでの苦労はなんだったんだって思っちゃうんです。
夫婦ゲンカは互いに理解し合うために必要なプロセス
タカ でも、結果として妻の言うことを聞いてよかったなって思っています。
――それはすばらしい!
尚桜子 トシが、「ここまでやってくれる旦那さんはめったにいない、タカさんは本当によくやってくれているよ」って言ってくれたんです。それがきっかけで、だんだん理解し合えるようになった気がします。
タカ サラリーマンは平日、あまり家にいないから、妻に任せちゃう人が多いみたいですね。
――予算切って、あとは勝手にどうぞって感じになるんでしょうね。
尚桜子 トシが、「これだけ高いお金を出すんだから、楽しめ」って言ったんです。
タカ 家は高い買い物だから、ケンカも含めてすべて楽しんだほうがいい。一生にそう何度もあることじゃないんだから、目一杯楽しんだほうがいいですよね。たくさん関わってのめり込んで…。お金のことは心配でしたけどね。
――建築の本質は夫婦仲にあるみたいですね。
尚桜子 そうそう。そうじゃなかったら、絶対いい家は建たない。お互いに満足のポイントは違うから、話し合って解決していかないと不満ばかりが残っちゃう。そんなの悲しいじゃないですか。
変化を楽しむ家
――この家にテーマがあったら教えてください。
尚桜子 それは、この先マンガで描きますのでお楽しみに!ただ、トシは設計をする際に、まずテーマを決めるんです。間取りはパズルみたいなものだから、何よりテーマが大事だと。その時、家さがしで感じた夫婦の価値観の違いや、夫婦ゲンカの経験が役に立ち、そのままこの家のテーマになりました。
――部屋がすべて直接リビングにつながっている家というのは、なかなかありませんよね。
タカ それは、この家のテーマと大きく関係しています。でも、子どもたちも、ある程度の年になるとプライバシーを気にするようになると思います。時期がきたら、寝室と子供のスペースを改装して、プライバシーを保てるようにする予定です。
――家の二階部分に増築するための空間が残っているのは、子どもの成長に合わせて作り上げるためですね。いま、子どもたちの部屋はどうなっていますか?
尚桜子 いまはまだ小さいので、ふたり一緒のスペースで遊んだり、勉強させたりしています。寝るのは家族4人同じ寝室です。子供時代は短いので、今この瞬間を思い切り楽しみながら、成長と共に変化させていくつもりです。現在は平屋ですけど、場合によっては総二階にも改装できるんですよ。
――いちばんのお気に入りは?
タカ ここ(リビング)です。この大きいリビングは全部の部屋につながっていますから。今後、子どもたちがそれぞれ独立したスペースを持っても、家族みんながつながっていることになれていれば、閉じこもることもないと思います。
――いつも一緒にいられますね。尚桜子さんのお気に入りは?
尚桜子 私もこのリビングが気に入っています。でも、一つ一つに思い入れがあります。カーテンにしてもタイルにしても、いろいろな試行錯誤をして選んだんです。一つ一つ説明できるくらい思い入れがある。それが、大切なことだと思います。苦労して選んだものだから、「ああ、これにしてよかった」といつも思いながら生活できています。
――タカさんは、休日にはどんなことをしているんですか?
尚桜子 DIYに励んでいるかな(笑)。ゴミ箱スペースにぴったり収まる、素敵なダストボックスやキッチンワゴンをつくってくれたんです。私がイメージを描いたら、タカが設計図を起こして、イメージどおりに作ってくれるんです。理系だからか、こういうのが得意で助かってます。
タカ 経費削減の涙ぐましい努力ですよ(笑)
尚桜子 庭も、越してきた当初はなにもないむき出しの土でしたが、芝を買ってきて自分たちで貼りました。木も、植木屋さんではなく、自分たちで選んで植えました。バラの苗を買いにわざわざ遠くまで出掛けたり、野菜やハーブを育てたり、ガーデニングが夫婦共通の趣味にもなりました。
タカ 男性は、女性よりも想像力が少ないのではないかと思います。建築中はつらいこともありましたが、実際住んでみて、後悔は少ないように感じます。「家は3回建てないと理想の家にならない」とよくいわれますが、私としては3回分くらいの労力を費やしたと思っています。それもこれも、妻がリードしてくれたおかげですけどね。
――ありがとうございます。それでは、最後にひと言お願いします!
尚桜子 このマンガは、子どもたちに実家をつくってあげたいという思いからスタートし、2年がかりで建築家と家を建てた奮戦記です。その道のりは平坦ではなく、価値観の違いが夫婦ゲンカを生んで、あわや離婚というところまでいったこともあります。でも、夫婦それぞれが自分自身と向き合い、お互いを理解し合うことで、夫婦の絆、家族の絆がずっと強まったと思います。ぜひ、多くの方に読んでいただきたいと思います!
【プロフィール】
尚桜子 NAOKO(なおこ)
神奈川県生まれ。別冊マーガレットでデビュー。モーニング「ちばてつや賞」入選。「スーパージャンプ」(集英社)、「モーニング」(講談社)、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」(ベネッセ)等に寄稿。「熱中! ソフトテニス部」(ベースボール・マガジン社)にて「颯太のテニス日記」連載。
電子書籍『颯太のテニス日記(1)(2)』『助産師さん呼びましょうか?(1)~(5)』『お産トラウマは怖くない! 産前産後の不安・イライラ解消法とトータルバースレビューのススメ』など。
【著書】
『わが家は今日も建築中!』(1)~(5)
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『マンガ 妊娠・出産リアル体感BOOK 助産師さん呼びましょうか?』(1)~(5)、合本版
https://amzn.to/2BI8vvZ
『お産トラウマは怖くない!』
https://amzn.to/2Pr9Yt6
『颯太のテニス日記』(1)~(2)
https://amzn.to/2L8zPTr
その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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