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黒鳥に会った

わけあって、水戸に出かけた。
千波湖のほとりで、くちばしが鮮やかに赤くて首の長い、大きな黒い鳥に会った。
コクチョウだった。
調べてみると、オーストラリアに住む鳥で、渡り鳥というわけではなく、この辺りに移入されたものらしい。
警戒心はまったくなく、手を伸ばせば触れそうなくらい、無邪気に近づいてきた。なかなか可愛らしい。

バレエ「白鳥の湖」に出てくる黒鳥は、王子をたぶらかす悪魔的・誘惑的な女性として描かれるが、実際のコクチョウはそんなに悪い奴という感じはしなかった。むしろ善良というか、人間を疑うことを知らない生き物だという気がした。
ブラックスワンという言葉には「ありえないと思われていた、壊滅的被害をもたらす事象」という意味もあるが、そういう不吉な印象など全くない。

中国系アメリカ人の作曲家ブライト・シェンは、ブラームスのピアノ小品「間奏曲イ長調op.118-2」を美しい管弦楽版へと編曲し、それに「ブラック・スワン」という題を付けた。その真意は、バレエの黒鳥のことよりも、ひょっとするとオーストラリアに住むこの鳥の純朴な印象によるのかもしれない。

この「ブラック・スワン」という曲について、どれほど優れた編曲であるかを指揮者ジェラード・シュワルツが演奏とともに解説している動画があるので、ぜひ参考にされたい。
https://www.youtube.com/watch?v=Lbm4ouevlVo

作曲家の公式サイトによると、ブラームスの間奏曲イ短調op.118-1とのセットで構想されているようで、別々に演奏してもかまわないとのこと。ブラームス好きには必ず受ける美しい曲なので、いつか日本のオーケストラにも定期演奏会などで取り上げてもらいたいものだ。
なお、ブラームスの晩年の名作であるop.118の小品集の残り4曲についても、シェンは今後オーケストレーションしたい意思を明らかにしている。


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