【ジャズのリズム:その2】クリアなサウンドとリズム

ジャズのリズムについて考えるシリーズ、2回目です。

ビッグバンドでも小編成のコンボでも構いませんが、自分たちの演奏とジャズ史に残るような素晴らしい演奏とを比べたときに、何が異なるかできるだけ具体的に考えてリストアップすることは、今後の個人の技術向上やバンドアンサンブルを高めていく上でとても役に立ちます。

リズムに関していえば、主に次の3つのことがいえるのではないかと思います。

  1. 優れた演奏はサウンドがクリアですっきりしているが、自分たちの演奏はなんだかごちゃごちゃしていて実際に演奏していても見通しが悪い。

  2. 優れた演奏はスウィング(グルーヴ)に幅や奥行きや深みのようなものが感じられるが、自分たちの演奏はあまりそのようなものを感じることができない。

  3. 自分たちの演奏に対して、すぐれた演奏はサウンドがいきいきしている。

今回は、1.について一緒に考えてみたいと思います。

クリアなサウンドとは

すぐれた演奏は、サウンドがクリアだと書きました。

サウンドがクリアであることにどのような効果があるか考えてみると、まず、その曲が力強いスウィングであれ繊細で微妙なものであれ、表現しようとしていることを明確に聞き手に示して伝えることができることです。次に、クリアなサウンドのほうがごちゃごちゃしたアンサンブルと比べて、聞く側も聴きやすく、演奏する側も含めて全員が単純に楽しいということ。そして、サウンドがクリアなほうがご機嫌にスウィング(グルーヴ)するということです。

次に、サウンドがクリアだという状態は、より具体的にどのようなことなのか整理してみると、まず無駄な音がない(少ない)こと、そしてリズムが正確であることなどがあげられると思います。

ごちゃごちゃなサウンドをどうするか

無駄な音を減らす

まず、無駄な音が多いということについて、例えば、ビッグバンドのホーン・セクションのように書かれた譜面を演奏しているときには、間違ったタイミングで無用な音を出さないということもあるのですが、より演奏に際して裁量を与えられているピアニスト、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーのようなリズム・セクションのコンピングに関しても、ミストーンをできるだけ減らすとともに、あまり意図の明らかでない音を極力減らすことが大切です。言い換えるなら、コンピング(伴奏)であっても、自分のパートのラインを常に歌い切ることが重要ということです。

もちろん、それぞれ好みの演奏スタイルというものがあるでしょう。音数の少ないスタイルもあればそうでないスタイルもあります。しかし、自分の目指すスタイルと自分自身の演奏を実際に比べてみてください。大抵の場合、自分の演奏内容は、本当にバンドのアンサンブルに貢献しているでしょうか。すぐれた演奏家は何気なく演奏しているように見えても、必ずといってよいほど一音一音に意図や効果があります。無駄な動きや音はほとんど皆無に近いといっても過言ではありません。アンサンブル全体のなかに自分のパートをしっかり位置づけて何度も聞き返し、意図や効果を見抜いてきちんと理解し、最終的には表現できるようになることが大切です。

リズムは正確に

正確なリズムもクリアなサウンドにとって必要不可欠な要素です。

例えば、ビッグバンドのサックス・セクションによくある指がもつれるような細かなパッセージもそうなのですが、ブラス・セクションのようなパーカッシブなアンサンブル、あるいはリズム・セクションを含めた全員でのリズム・フィギュア(ブレイクや、いわゆる「キメ」など)のように、譜読みも演奏もさほど難しくないことをきちんと正確に演奏できているか、ということがとても重要です。

まず、アタックのタイミングをまずは正確に演奏すること。そして、音価を正確に理解し演奏できること。決してインチキをしないこと。

例えば、タイによるシンコペーションによるリズムを、曖昧な理解なまま演奏していては、決して明確なサウンドにはなりません。一度タイを外してゆっくりなテンポ(実際のテンポの半分を推奨)から徐々に(5%くらいずつ)テンポをあげて練習しましょう。誰もが苦手な2拍3連符も、3/4拍+3/4拍+1/2拍のようにごまかして演奏しがちですが、1拍3連の2つずつがタイになったものとしてていねいに根気よく練習するとうまくいきます。

長い音価の切るタイミングもとても重要です。その音は、本当に全音符なのか。本当は付点2分音符+4分休符、あるいは、2分音符+2分休符などではないのか、しっかり意識すること。そして、もしセクションであれば、セクション全員が音を切るタイミングをしっかり自覚して揃えることが重要です。

見通しの良い演奏

上で指摘したこと、特に、正確なリズムで演奏することは、速いパッセージでなければ、さほどフィジカル(身体的)なスキル・アップをすることなしに実現できる即効性のある方法だといえます。

曲の始めから終わりまで、常に徹底して行うよう習慣化するには少し時間が必要かもしれませんが、ほぼ誰でも(どのバンドでも)実現できるポテンシャルはすでにお持ちのはずです。これを試さない手はないでしょう。

このように、リズムを正確に意識し楽器で表現できるようになるだけで、アンサンブルにおける見通しはとても良くなるでしょう。演奏者は演奏中、自分の音や他人の音がよりクリアに聞こえてくるはずですし、録音を聞き返してもその効果を徐々に実感できるようになるはずです。

上達するということは、行動を変えることによって達成されます。行動を変えるためには、新しい考え方を取り入れたり、考え方を少し変えたりすることが不可欠です。

見通しがよくクリアなサウンドは、よくスウィングするジャズ・アンサンブルのための必要条件の1つといえるでしょう(これはジャズだけでなく、すべての音楽に当てはまるようにも思います)。まずは、ミストーンを含めて無駄な音をなくすとともに、音符や休符をきちんと理解することでリズムを頭(目)と身体でしっかり意識し、正確なタイミングで表現できるようにすることがとても重要だと考えます。

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