【吉岡直樹のジャズ・ベース・レッスン:その3】メジャー・スケールの4度と5度の練習

こんにちは。名古屋のジャズ・ベーシスト吉岡直樹です。

コントラバスを演奏する方のお役に立てればということで始めたYouTubeのレッスン動画の7本目、8本目を公開しました。

第1回目以降の動画の内容は次のとおりです。

  1. 開放弦のテクニック

  2. 左手の形

  3. 左手の基礎づくり

  4. ポジション移動

  5. メジャー・スケール

  6. メジャー・スケールの3度のインターバル

  7. メジャー・スケールの4度のインターバル

  8. メジャー・スケールの5度のインターバル

なお、第5回目、第6回目の動画は、前回の記事からご覧いただけます。

練習の目的

今回アップした動画は、前回に引き続きメジャー・スケールのインターバルを扱っています。この練習では、メジャー・スケール「を」多角的に学ぶことに加え、メジャー・スケールのインターバル「で」ほかの2つのことを学びます。すなわち、運指法と左手のフィジカルなスキルです。

スケール・スタディ

スケール・スタディの基本は、基本的にはそのスケールを練習することでしょう。しかし、それだけでは実践的なスキルは身につきません。なぜなら、スケールは必ずしも最初の音(主音)から始まるとは限らないうえに、必ずしも順繰りに(つまり「ドレミファ」とか「ソファミレ」のように)演奏されるとも限らないからです。

ベースラインもそうですが、特にメロディやソロはスケール内で様々な跳躍をしていることのほうが多いはずです。

スケール練習は、100回も練習しなくても覚えます。それならば、101回目以降の練習のかわりにそのスケールの様々なインターバルを練習することで、そのスケールの理解を深め、より実践的なスキルや音感が磨いたほうがよいということになります。

合理的で一貫性のある運指

コントラバスを弾いていると、特にソロ中に悩まされるのは「運指の手詰まり」です。みなさんも、頭の中に鳴ったフレーズを弾こうとしたのに、運指に行き詰まって断念してしまったという悔しい体験があるのではないでしょうか。

ソロラインのみならず、メロディやベースラインは、おおむねオクターブ以内の跳躍でできています。したがって、様々なインターバルをスケールのなかで行うことで、実践的な運指法が身について、結果として「運指の手詰まり」に陥りにくくなることが期待できます。ただし、これは遠い道のりではあるのですが。

そのためには、運指に合理性を持たせることが必要です。なぜなら運指の迷いが減るからなんですね。私のエチュードは、上りと下りを対称形になるようにわざわざ構成しています。つまり、言葉でいえば回文のようになっています。そして、運指についてもまったく対象(「回文」)になるように付けています。それが合理的な運指だと考えるからです。

「こっちはこう弾いたのに、なぜこっちはこう弾いたの?」という矛盾がないように精査しているつもりです。もちろん、原則には例外(たとえば音楽的な文脈によるもの)もあるのですが、可能な限り一貫性を持たせるように吟味したつもりです。

左手の強化

エチュードではしつこいくらい左手の「準備」を要求します。実際の演奏現場でここまでのレベルで「準備」の動きを実践しているベーシストがいるかと言われると、私も含めて疑問がないわけではありません。

しかし、だからといって基礎練習における「準備」は不要である、あるいはそこそこできれいればよい、という考え方には慎重になるべきだと考えます。なぜならば、一般に実際の演奏は練習室でのクオリティよりもクオリティが落ちます。もちろん共演者に触発されてふだんよりも高いパフォーマンスをすることもありますが、フィジカルなスキルに関していえば、クオリティは下がっていると考えてよいと思います。

そうであるならば、練習室でのクオリティをできるだけ高い状況にしておくことがアドバンテージになるのではないでしょうか。

加えて、できるだけ高いクオリティで基礎練習に取り組むことは、それだけで左手の「筋力トレーニング」になります。

実際、私の指定する「準備」の動きで練習すると、特に左手に負荷がかかってバテてくる人も少なくないと思います。しかし、地道にこの練習を続けることで左手の筋力が増強され、本番での音の立ち上がりがクリアになり、音色が豊かになることが自覚できるようになるでしょう。

これは、「準備」の動きによって他の弦の振動をミュートしてしまうことを防ぐために、左指を指板に対して立てて演奏することによる音色の改善効果も含まれているものと考えます。

このように、練習室において日頃から「準備」の動きをしっかり取り組むこと、ステージでの演奏パフォーマンスの向上が期待できます。最初は根気と体力が必要ですが、地道にトレーニングしてみてはいかがでしょうか。

動画

動画はこちらです。

2本の動画をまとめて見ると40分以上かかりますので、お時間があるときにでもゆっくりご覧ください。

PDF版

今回の動画に関連してPDF版の教則本も作りました。

今回は上の2本の動画の内容とほぼ同じ内容です。

  • ポジション一覧

  • 第11章 メジャー・スケールの4度

  • 第12章 メジャー・スケールの5度

A4版、21ページの内容で、動画で使用した実際の音と左手の動きの対応を可視化した楽譜が中心です。有償での提供になりますが、もしよろしければご覧ください。

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