防衛「省」について


 これまで防衛庁は総理府の外局として省よりも格下の行政機関と位置づけられ、防衛庁長官は国務大臣であるにもかかわらず権限が制限され、予算要求や閣議請議をすることができなかった。また諸外国では、国防担当機関はすべて「省」であった。
 これらの問題をかかえつつも、防衛庁が省に昇格しても目に見える影響がなく、野党の反対もあったため、歴代内閣は防衛庁の省昇格に消極的な姿勢をとっていた。
 ところが、自民党の派閥である清和会に属し、政治的にはタカ派である小泉純一郎が内閣総理大臣に就任すると、防衛庁の省昇格論議が一気に高まり、小泉政権を引き継いだ第一次安倍政権においても省昇格が推進され、2007年1月防衛省が発足するに至った。
 防衛庁が防衛省に昇格した背景には、国防意識の強い政治家が政権を担当したという側面はあるものの、庁から省へ昇格することで職員の士気を高め、政策官庁になりつつあった防衛庁に予算請求や閣議請議できるようにすることが求められていた点も見過ごせない。緊急事態が発生した時点で防衛大臣から閣議請議して迅速に対応できる点も昇格の利点といわれている。また諸外国と連携して防衛政策を計画実行していく中でカウンターパートとしての地位を確保する必要もあったのだろうと思われる。一部には自衛隊を官僚が統制する「文官統制」から政治家である防衛大臣のコントロールする「文民統制」への移行が図られたと評価する見解もあるが、自衛隊の最高司令官が内閣総理大臣である以上大きな影響があるとは思えない。

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