【詩】されど、芝生は青いまま


俺はあの人を「うらやましい」と思っていた。


俺よりも賢い頭を持っている。
俺よりも優しい心を持っている。
俺が1つの行動を起こすまでに、彼女は5つの行動を起こしていた。

隣の芝生は青い。
俺の芝生はどこかくすんだ緑色だ。



ある日、俺は彼女に言ってしまった。

「俺はきみがうらやましい」

俺はうらやましいと思う限りの事柄を言い続けた。


すると、彼女は右手を前に出し、ぼくの言葉を制してこう言った。

「わたしはあなたがうらやましい」
「わたしより賢い頭を持っている」
「わたしよりも優しい心を持っている」
「わたしが1つの文章を作るまでに、あなたは5つのきれいな文章を作っている」
「隣の芝生は青い。わたしの芝生はどこか色あせた藍色だ」



俺は彼女の言葉を信じられなかった。



だけど、いまならわかる。

俺は彼女のある一面を見ていた。

彼女は俺のある一面を見ていた。

俺も彼女も、同じものを見ていなかった。


俺たちは交わらない。

捻じれて
外れて
違う場所を見てしまう。


それを寂しくないとは思わないけど
それが当たり前だと納得もできる。


俺は俺。彼女は彼女。

「うらやましさ」に間違いなんてない。
それも自分の感情だ。


だけど、捕らわれてはいけない。
彼女にできることが、俺にできることじゃない。
俺は、俺にできることをやるしかない。


隣りの芝は青いまま。
濃くも薄くもなりはしない。

変えられないことで立ち止まるより
変えられることに目を向けよう


立ち止まりさえしなければ
俺は明日も前に進める


だから、俺は筆を執った。

白いページを黒で埋めて、

明日の自分を記すために。



【次】虹のかがやき

【前】宝石の音色

【その他の作品】→こちら へ どうぞ


//////////////////////

見出し画像には、『上の森 シハ』様のイラストをお借りしました!

ありがとうございます!