【詩】 名無しの生き方
僕に名前はない。
人間は、何かに名前をつける時、
必ず「意味」を考える。
だからきっと、僕に意味なんてない。
作られた意味。
生きる意味。
死ぬ意味。
そんなもの、僕にはない。
ある男が言った。
お前はガラクタだ、俺には必要ない、使えない道具に価値なんてない、ナイナイ尽くしのお前にこの家は分不相応だ。
僕は家を追い出された。
僕を拾った女が言った。
あなたは何の能力もない、あなたに比べたら私の方が断然優れている、優れているから生きる価値がある、誰に何と言われても私の価値は揺るがない、あなたは欠陥品よ。
僕はその家からこっそり逃げた。
ひとりぼっちで、公園で、
ブランコを漕いでいる。
暗い夕方の空に、きぃきぃと寂しい金属音。
寂しさも虚しさも、全部夕陽に溶けていく。
僕の隣のブランコに、小さな男の子が腰掛けた。
小さな男の子は僕に言った。
ボクはまだ子供なの、お父さんたちが喧嘩する理由は分からない、ボクはまだ小さいから知識もない、お母さんはボクに産まれた意味をくれなかった、だからボクは自分で自分の意味を見つけないといけないんだ、きっと最初から意味を持っているものなんてないんだ。
小さな男の子が僕に手を伸ばした。
こんなところで何してるの?
お家に帰らないの?
僕は正直に答えた。
帰る家はない。
どこの誰に拾われても、ガラクタの僕は結局捨てられる。
便利な道具にもなれなければ、誰かより優れたものにもなれない。
ナイナイ尽くしの僕に意味なんてない。
すると、男の子はこう言った。
一緒だね。
僕も合わせてこう言った。
一緒だね。
僕ら二人は手を取って、夜の街に消えてった。
僕は元々ひとり。
君も元々ひとり。
元々ひとりの僕たちは、
自分自身の意味を持たない。
だけど、意味のない僕たちは、
二人で手を取り合って、
初めて光のような意味を見つけた。
そんな気がした。
勘違いかもしれないけれど、
僕たちは今、分かり合える。
意味のないもの同士、
この世界で生きていこう。
『意味』で溢れた、この世界で。