プロフェッショナルに求められる意外な要素
人間というものは、相手にプロフェッショナリティを求めるときに、単にロジカルで技術的な能力のみを求めるのではない。
相手がたしかな価値提供をしてくれるかどうかはもちろん気になるが、相手が人間的にどんな人かということも気になる。自分がこれからかかわろうとしている相手が、できることなら人間的にも素晴らしい人であって欲しいと心の中で願っていない人はいないといっていい。
現実的にはそこまで望めないと思っても、なんらかの心が通じ合う要素は欲しいと思うものだ。
だから、スポーツの話なら何でもついていけるとか、山と湖と渓流釣りが趣味だとか、映画や芸能界ネタには詳しいということも、単純に雑談して肩の力をほぐしながら「なじみ」をつくったり、まじめな話の前段にするという意味では貴重なのである。
雑談だけでも、お互いに相手の人柄や問題意識はかなりわかる。
仕事とは関係なさそうに思えるテーマについて話しながら、その人の仕事での能力やスタンスをなるほどなと実感できることは多い。
全国の隠れたうまい自家製のうどんを食べさせる店を探して歩き、六百軒を超える店の情報をストックしていて、しかも何軒かのうどん屋さんからメニュー開発とお客をふやす方法について提案して欲しいといわれてそれに応えてきたという話を聞くと、「この人は地道に自分の脚で何かを探す能力や情報整理の技術がありそうだ」と想像しないわけにはいかない。
文字どおり自然体で相手に「食い込んで」信頼され、なんらかの問題解決をすることもできる人ではないかとも思える。
こちらのほうからも、いろいろと聞いてみたくなる。もちろん、どこのうどん屋がうまいかということもふくめてだが。
絵本が好きでボランティアで毎月五冊ずつ自分で選んだ絵本と児童書をある施設に寄贈し、十五年以上、月に二度子供たちに読み聞かせに出かけ、読み聞かせをとおしてかなり多方面に人脈が広がっているという話を聞けば、その人の人柄はもちろん、ねばり強さや、社会意識を知ることになる。最近の子供たちがどのような特徴のある子供たちなのかについて聞いてみたくなるかもしれない。
どんな施設なのか、なぜそういうことをはじめたのかということを聞けたなら、さらに、その人の人生にたいするスタンスが見えるだろう。ストーリーとしても興味深いものがあるはずだ。大げさに考えなくても、意外に身近なところに、自分のできる社会貢献があるということを教えられるかもしれない。
仕事を頼むならそういう人に頼みたいと思う人は少なくないだろう。
社会貢献イメージが求められる企業の研究所では、そういう人をトップにしたいと考えるかもしれない。また、功成り名を遂げ金もある人がその話を聞けば、資金と人脈を提供し、活動をひろげる支援を申し出たいと思うかもしれない。
その人のもっている人間的要素が、ときにはロジカルでテクニカルな専門能力よりもはるかに、その人を一段高いレベルのプロフェッショナルに押しあげるということは少なくない。
専門能力がなければプロフェッショナルとは呼べない。そのいっぽう、プロフェッショナルほど、人間的要素が求められているといえるのである。
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