経験が邪魔をする#6
例えば、サッカーの試合を観戦していたとします。あなたはサッカーの熱狂的なファンである。今日の試合は序盤から接戦だ。しかし、両チームとも未だに点が入らない!
両チーム点が入らず、延長線へ。延長後半、始まってすぐに相手チームに点を奪われた。しかし、その3分後!こちらのチームのストライカーが点を決め同点に!そのままPK戦へ。
両チームPK戦、順当にシュートを入れていき、自分チームの5本目、ペナルティマークにボールを置き、突進してキック………。
「えっ?」
そのままボールをポスト横にそれ外れた。
その瞬間、絶叫し、
「やると思ったよ!」と口々に言った。
あくまで、これは一例です。これから起こることを予測するのと、すでに起こったことを解説するのでは、大違いです。
第6回行動経済学を考えるでは、私たちには、過去の出来事に意味を与え、それ以前の状況から避けようもなく生まれた結果なのだと考えるという特殊能力があることについて説明します。
▶︎目次
1.このおかしな判断について
2.たくさんの事例
3.結果よりもプロセスが大事
1.このおかしな判断について
冒頭のような特殊能力は、前もって知っている情報があったのだから、すでに起こった出来事も予測できたはずだと、間違って思い込むことがある。これを「後知恵」という。
実は、このような後ろ向きの姿勢から出てくる判断のバイアス(ゆがみ)は、カーネギーメロン大学のバルーク=フィッシュホフが一連の優れた実験によって明るみに出している。
また、これには、学識や能力に関係なく、経営者からホームレスまで、どのような地位の人でも陥るところが面白い。
あなたの上司に報告書を持っていくと、「そうなると分かっていたよ!」と一蹴されることがあるだろう。
そういう時は、次回報告書を持っていくときに、どのような結果になったかを上司に予測させてみよう。うまくいけば、そこで結論の独創性を示し、それが最初の直感とどんなふうに違うのかも、簡単にわかるのだから。
2.たくさんの事例
この事例はあげるとキリがないため、少しだけ紹介しよう。
a.投資家の言い訳
ある投資家が、株を新たに買おうとする。これから伸びると予想される業界の中でも、有力な株である。しかし、その1ヶ月後に誰も予想ができなかった暴落が発生し、株価が下落し始めた。
ある投資家は「そんな気はしたんだよ!くそ!直感に頼ればよかった!」当然根拠はないんだけど……。
b.南海トラフ地震がいつかもうすぐ起きるぞ!プレートが大きく動き始めている!
これを聞いても誰も離れないのは、そうならないと思っている人が多いかもしれないからだ。しかし、いざ起きてみると、みんなが、なんでなんだ!と解析して、対策をいう。
「あれ?それ起きる前に言ってたことじゃないの?」
c.有名な実験で、ワインの専門家が、安いワインと高いワインがわからない状態で、高いワインを当ててもらうという実験があった。結果は、約半数が安いワインを高いワインだと判断した。そのワインが高いと知っているから、それ相応のコメントをするのだろう。
※このほかにもたくさんの事例が存在するが、それについては、私が今回このnoteを書いた参考として、ダニエルカーネマンの「ファスト&フロー」を読んでみるといいよ!
3.結果よりもプロセス
例えば、カップ一杯の水を飲むときにも、危険がないとは言えない。こぼして、割れてしまうことがあります。
しかし、これが電話が鳴ってしまって、受話器に手をかけようとしたらこぼしてしまうであったり……。場面は様々である。
防ぎようのないミスは誰にでもある。
ある決定が正しいかどうかを知るためには、その決定に伴う結果を考えるのではなくて、決定のプロセスを考えなければならない。
ただ、「結果はどうでもいい」と言っているのではない。
結果は大事である。しかし、結果が分かった上で評価することが、将来何かを決定する上でよくないことにつながるからである。
テレビのスポーツ観戦ではよく見られていることである。プロセスを見て、あなたがどのような選択をしたのか、どのような中身であったかを、後になって冷静に分析できる眼を持つことが重要だ!
将来につながることだろう。