シェイクスピア~哀しみの女たち~
高校の先輩で、一時期同じマンションに住んでいた俳優田野聖子さんの久しぶりの舞台にお邪魔しました。
聖子さんの盟友で、オペラ歌手田村麻子さんとおふたりでの「シェイクスピア~哀しみの女たち」。
シェイクスピアの「オセロ」の妻デズデモーナ、「マクベス」のマクベス夫人、「ハムレット」の恋人オフィーリアという女性たちの、同じ場面を、聖子さんがモノローグ(登場人物が相手なしにひとりで言うせりふ)として演じ、そのあと麻子さんがオペラアリア独演する、というユニークな形で、「男性目線で語られる作品」を、女性の視点でおふたりが演じ、歌う公演でした。
夫オセロを献身的に支えるデズデモーナに対し、あることをきっかけに部下との浮気を疑い、手にかけてしまうオセロ、ただただ夫のために、という一心で生きてきた心優しいデズデモーナの哀しみ、
そのあとの「マクベス」は、夫を王にしようと当時の王様を殺害させ、夫は王になるけれど、夫は恐怖から次々と罪を重ね、マクベス夫人自身も恐怖から幻覚を観たり、狂っていく・・というお話。
最後のハムレットは、父である王を殺されたハムレットがその復讐のために豹変していき、彼女自身も精神を病んでいく・・・というようなお話。
アンコールは「ロミオとジュリエット」の1場面。恋を知る前のジュリエット、知った後のジュリエットの純粋さをふたりがそれぞれ演じ、歌いました。
この4役を2時間のなかで、次々演じるというのは想像を超える大変さだなぁ・・と思います。
無垢で優しいデズデモーナのあとは、野心家のマクベス夫人。。みたいな全然違う人格。
それでも、2時間の間、全く飽きることなく、それぞれの役の女性に感情移入できたのは、聖子さん、麻子さんそれぞれの演技力、歌唱力がとてつもなく素晴らしかったから。
私はわかりやすくて、「あーこれは無理」と思うともう雑念だらけになってしまうのだけれど、その役に感情移入し、引き込まれ、圧倒され、終わってからもしばらく余韻に浸っていました。
とくに、なぜかマクベス夫人に感情移入をしてしまって(笑)。
自分の心の中にこんな狂気的な気持ちが潜んでいるのかなあ、そういう心のうちをさらすことになってしまう演劇、歌の力というのはすごいものだなぁ、と思いました。
こういった自分の感情と思いがけず向き合うことになる、というのも、
素晴らしい文化・芸術と触れるときの醍醐味です。
そして、改めて、シェイクスピアを読み直し、女性目線で考えてみたい気がしました。