充電式で、生きていく。双極性障害の暮らし【15】復職2
部署のスタッフはあたたかく迎えてくれた。
他にもパワハラ上司(エライほう)にひどい目に遭っている人もいて、ご飯を食べながら愚痴り合ったりしていた。
最寄り駅の安い居酒屋にも、みんなに何度か連れて行ってもらった。お酒はやめていたが、以前はイベントなどの帰りには必ず飲んで帰っていたので、懐かしかった。
しかし何より、仕事がきつかった。
体力はもちろん落ちているし辛いのは言うまでもないのだが、言うならば「脳の体力」が格段に落ちていると感じた。
「これくらいならできるだろう」と配置された仕事だが、全然進まない。
どれもやったことがある業務なのに、以前よりずっとたくさんメモを取らないとできない。
理解するにも、作業するにも、とにかく時間がかかる。
Aの作業をしながらBやCの作業について考えるということが、全くできなくなっていた。
結構、絶望した。
スムーズに仕事をすることは二度とできないのだろうか、と途方に暮れていた。
カウンセラーの友人に現状を伝えると「いきなりマルチタスクなんて大変だよ!大丈夫?」と返ってきた。
「やっぱりそうだよなー。アタマ動いてないもんなー」と腑に落ちた。
仕事が無い日は寝込んだ。
何もする気が起きず、横になっていた。休職中は「もう仕事だって頑張れる!」と思っていたが、それは大きな間違いだった。本も読むどころではない。座っていることすらできなかった。
何もできないのが悔しかった。
相変わらず友人がごはんなどに誘ってくれたので食べに行ったり、家で一緒に食べたりしていた。
体力的には余裕がなかったが、友人たちが精神的な支えになってくれた。
しかし、余裕が無さすぎる割に上司たちは理解してくれなかった。
パワハラ上司たちとのやりとりは基本無かったが、電話を取ってしまっただけで体調を崩したりしていた。
やりとり自体、したくもないのだ。
休職・復職の手続き関係については人事のエライ人とやりとりをしていたのだが、パワハラについてまとめた書類が人事には行っていないことが復職後にわかった。
働かない頭で、されたことを一生懸命まとめて出したのだが…
まあパワハラしてる当人に提出したのが、今思うとダメだったと思う。人事には自分について書かれたものなんて当然出さないだろうし。
とりあえず人事のエライ人にも書類を送った。
しばらくして、人事のエライ人と話すと、「書類の内容はパワハラとは言い切れない」と言われた。
え?身体こわして4ヶ月半も休職していたのに?
と思った。
始終自分ルールでダメ出しをされたり、顧客の前で叱責されたり、
無茶苦茶な量の仕事を負担させられたり、
相談しようとするとさらに残業して報告書作らされてあげく無視されたり、
この曜日だけは資格試験やプライベートのために休みたいというと
「せっかく研修してやろうとしてたのに(※その時初めて聞いた)
こいつはこんな理由でこの曜日休みたがる」と
エリアの社員にCCでメールを送って晒して自己正当化されたり、
そこにパワハラ要素がひとつも無いの???
驚いた。
どんな体調になったかは、1ミリも考慮されないのだ。
怒りや悔しさ、失望が沸きあがってきた。
それまでも、次の年度からどうするかは考えていた。
直属だったパワハラ上司とは同じエリアに勤務するのも支障が出ているし、パワハラ上司(エライ方)は部門全体の統括なので、その人たちから離れたいと思うと異動するしかなかった。
入社以来、ずっと同じ部門で勤めてきた。
業務自体は好きだし、他のみんなも好きだ。顧客も大好きだ。
できれば一緒に仕事をしてきたみんなのいる場所で、以前のポジションでの復帰も模索したかった。
しかし、そういった気持ちが粉々に打ち砕かれた。
20年いた部門への未練がばっさりと断ち切られた瞬間だった。
「じゃあ、そんな所には居られないので退職か異動したいです」
と思わず口走っていた。