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「なんと言われようと、メタルが大好きだ!」という衝迫を全力で肯定してくれる一冊──『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)

労作です。そして、なんとも贅沢な本です。

『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』

もともと購入予定だったのですが、編集担当・築地教介さんからご恵投いただいてしまいました。恐縮です。ありがとうございます。

星海社新書はスタート当時から意欲作を量産してきたレーベルですが、相変わらず攻めてますね。興味深い本が多いです。

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雑誌『ヘドバン』編集長の梅澤直幸氏が編者に立ち、「メタルの基本」をテーマにして必聴アルバム100枚をセレクトしたという本作。タテ軸に「歴史」、ヨコ軸に「枝葉(メタルにおける膨大なサブジャンル)」と置いて吟味を重ねただけあり、網羅感が素晴らしい。「100枚」という制限のなか、メタル初心者から上級者まで幅広く読者を押さえつつ、一定の納得感を与えなければならないことを踏まえると、もう十分すぎるくらいのラインアップでしょう。

執筆者諸氏も超豪華。

伊藤政則、増田勇一、荒金良介、奥村裕司、川嶋未来(SIGH)、後藤寛子、鈴木喜之、高橋祐希、武田砂鉄、行川和彦、西廣智一、長谷川幸信、山崎智之……と、信頼のおける面々が並んでいます。


なお、帯コメントを寄せたのはBABYMETALのプロデューサーであるKOBAMETAL氏。このあたりも抜かりありませんね。

■「あのバンド、忘れてない?」と思うところもあるけど……

いやまぁ「あのバンド、入っていてもいいんじゃない?」と思うところがないわけではありません。

メコンデルタは? ウォッチタワーは? レーサーXは? テスタメントは? アナイアレイターは? デストラクションは? ソドムは? コロナーは? シニックは? いくつか日本のバンドも入っているけど、ドゥームを忘れてない? ココバットは? ……てな具合に、挙げようと思えば、いくらでも挙げることができます。 

ただ、この手の「定番100選」的な企画に付きものの「なぜ、これが入っていないのだ」という相剋は、どこまで網羅しても不可避なので、そこにこだわっても無意味ですし、無粋です。あくまで「この本の作り手が考え抜いた結果」として、まずは素直に鑑賞すべきでしょう。だいたい、このような企画を制作するに際しては、セレクトするだけでも相当な手間であり、かなりの葛藤が伴います。その労を思うと、同業者として敬意しか湧いてきません。

■ここまで生きてきたからこそ、出会うことができた名盤たち

個人的には、本書を読み進めながら、ローティーンのころからの自分の歩みを「ヘヴィメタル」という斬り口から振り返るような感慨をおぼえました。

クソみたいなことも多かった人生だけど、これらの音楽がそばにいてくれたおかげで、僕は救われ、鼓舞され、生き長らえることができたのだな、と。長い時間をかけて、ここまで歩いてきたからこそ、本書で紹介されているような素晴らしい作品と出会うことができたのだな、と。

そう思うと、ちょっとは自分の人生を肯定できるような気がするのです。「中学のころから30年以上、メタルを聴いてきたよかった」。そう痛感させてくれる本でした。

本書は、まだ出会ったことのないメタルバンド、メタルアルバムを求めて、導入編的、参考書的にページを繰るのはもちろんのこと、僕のように自分の音楽遍歴を再確認するような読み方もできるでしょう。

僕も100枚中、99枚は聴いたことがありましたが、唯一、Sunn O)))の『Black One』だけはキチンと聴いたことがありませんでした。この機会にチェックしてみようと思います。

本当にメタルを愛する人たちが丁寧にしたためていった本であること。その誠実さが行間から伝わってくる良書です。

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※余談:ナパームデスの『From Enslavement To Obliteration』は、高校のころの一時期、通学時の愛聴盤でした。周囲から「速すぎて意味不明」「なにを言っているのかまったくわからない」と一笑に付されたことを数十年ぶりに思い出しました。



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