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「人間関係を根底から変える方法」を読んで、やってみた。
お店を19年続けています。
店舗には、小さいですが、フルサービスのレストランと、隣にテイクアウト専門店があります。
レストランでは、食事の始まりから最後まで、担当したテーブルのお客様とのやり取りがありますが、テイクアウトのほうでは、会計をして、商品を渡すだけです。
そこでは1分もかかりません。
けれど、そんなわずかな時間の中ででも、相手を心から愛おしいと感じる瞬間があるのです。
何かしら本当の繋がりを感じる瞬間があるのです。
深い本質的なやりとりが発生するチャンスがあるのです。
そのことを私はこの本から教わり、実際に体験しました。
「ニュー・アース」の作者でもある、スピリチュアル作家の大御所、エックハルト・トールの著書です。
この本の、「人間関係を根底から変える方法」の章でこんなふうに書いています。
誰かに出会ったとき、ほんの一瞬でも、意識のすべてを相手に注ぐことによって、相手の存在を認識していますか?
それとも、相手を目的のための手段、あるいはたんなる役割とみなして、相手の価値を感じていますか?
スーパーのレジ係とあなたの関係のクオリティはどうでしょう?
駐車場の係員とは?
修理係とは?
顧客とは?
意識を向けるのは、ほんの一瞬で構いません。それで十分なのです。相手を見つめたとき、相手に耳を傾けたとき、意識の鋭敏な、静止状態が起こるはずです。
それは短いときには、ほんの2,3秒かもしれませんが、それでもふだん演じている役割とは違う、もっと真実に近いなにかが湧き上がってくるはずです。
この文章を読んだ翌日、たまたま店のスタッフが急に休んだので、私はその機会に店に出て、 本に書いてあることを試してみたのです。
これまでは、店員とお客様、という役割があったうえで、接客はカジュアルでフレンドリー。「正確に、迅速に、感じよく」対応することが優先でした。
けれど、この本には、
「誰かに出会ったとき、ほんの一瞬でも、意識のすべてを相手に注ぐことによって、相手の存在を認識していますか?」
と書いてあります。
忙しく仕事をしていると、つい流れ作業になってしまいがちです。お客さまに投げかける、「ありがとうございました」の言葉と、それに伴う笑顔でさえも、オートマチックではなかったでしょうか。一瞬立ち止まって、「意識のすべてを相手に注ぐ」ことが これまでいったいどのくらい出来ていたでしょうか?
ほとんどの人間関係は、単なる言葉の交換に過ぎません。つまり、思考の次元に留まっているのです。
それで私は、会計を終えた後、商品を渡すときに 意識して、相手の目を見て「ありがとうございます」と伝えるようにしました。本当にほんの数秒です。
見た目には、これまでとは変わらない接客でしょう。
けれど、「今この瞬間」を、意識のフォーカスとすることで、普段は思考の雑音によってかき消されている、静止の空間に、心を開くことになるのだと本には書いてあります。
その空間こそが、分断のバリアなしに、相手とのコンタクトを可能にする統一の場であり、そこでは相手はもはや他人ではなく、一つの意識として溶け合っているのだと。
素敵ですね。
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私が驚いたことは、私のこの対応に対して多くの相手(お客様)が、まっすぐに私の目を見つめ返してくれたということです。
そしてそれを繰り返していく、短い時間のうちに、そのクオリティを持つ、次元の磁場がそこに形成されていくのを感じました。
何故なら、目と目を見て通じ合うたった一瞬に 凝縮されたお互いへの 慈しみのようなものが行き来しているのを感じ始めたからです。
どの人の瞳も、宝石のように美しく、輝いているのに気づきました。その輝きが、私の心の中心に、真正な愛を刻印していくようでした。温かくて、柔らかくて、愛おしい、初対面の相手にそこまでを感じることにびっくりしました。
そして、相手もきっと温かい気持ちで、店を出てくれている、と確信できたのです。
本に書かれていた、「もっと真実に近いなにかが湧き上がってくる」、それは こういうことだったのかと、喜びでいっぱいになったのです。
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私は日本で仕事をしていた時に、職場が自分には合わないと知りながらも そこで2年間勤めて続けていたことがあります。
けれど最後には、出勤前に朝食をとっていると、 自然と涙が溢れるようになりました。そして次第に人と目を合わせられなくなったのです。
自分のメンタルに影響が出ていることに気づきましたが、誤魔化していました。
けれど学生の頃からの親友と食事に行った時、 私は、彼女の目さえ見ることが出来なかったことにショックを受けて、仕事を辞める決心ができました。
もう自分を騙すことはできないと分かったのです。
その後、症状はぴったりと止みました。
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目というのは不思議です。
どこかへのポータル、扉なのでしょうか?
現在、誰もがマスクを着用して、相手の瞳だけが、こちらにとって大きな印象になっているのは、とても興味深いことです。
嘘をついていると、人の目を直視できないと言います。
自分にとっての真実を口にすること、行動すること、それらが妨げられると私たちの目は悲しむのだと思いました。そして、真実への扉が閉じてしまうのです。
私は、目と目を合わせ、一瞬でも意識のすべてを相手に注ぎ、真正に相手と向き合えば、言葉がなくとも、深い繋がりの体験をすることができるのだと知りました。
私たち自身が真実、愛そのものだから、お互いを映し合うのです。
それは温かく、愛と思いやりに溢れています。
相手の美しさに圧倒されます。
自分が無防備であることに気づきます。
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以前、1週間以上、無言で過ごす、サイレント・リトリートに参加したことがあります。そのときに、相手の目を見つめてする瞑想、Eye Gazing Meditation をしたことがあって、そのときにも素晴らしい体験をしました。
ですが、それがこの日常で、こんなにも簡単に実践できることだったとは思いもしませんでした。なんというギフトでしょう。
そのときあなたは、もう「台本どおり」に行動していません。「真実の自分」、「ありのままの自分」なのです。その次元があなたの中で花開くとき、あなたは、相手の中にある真実の次元をも、花開かせることが出来ます。
私の仕事は、一日のうちに何度でも、
ありがとう、と言い、
ありがとう、と言われます。
この本を読んだことで、たったそれだけの触れ合いが、さらに深く、満たされた体験になり得るのだと実感しました。
あなたの目は、何を映していますか?
「世界でいちばん古くて大切なスピリチュアルな教え」エックハルト・トール著 はこちらでも紹介しています。