ちょっと不思議な耳のはなし
ある午後、私は友達がやっているヒーリングルームにいた。
そばを流れる川のごうごうという音。
こじんまりした部屋の中は 浄化され尽くした空気感。
光が下りてくるのが感じられるほど、繊細な彼女のマッサージに、まどろんでいたとき、彼女がたずねた。
「どこか、特別にフォーカスしてほしいところある?」
私は答えた。
「実は、右耳が最近、とても痛くなるの。」
実際、ほとんど病院に行くことのない私が、その頃、その痛みのせいで 病院に行ってみようかと、考えていたところだった。
彼女は私の耳に、手をかざした。
しばらくそうしていると、彼女は戸惑いを隠しきれないように私に囁いた。
「間違ってたらごめんね、
でも、私、今 あなたの耳に手を当てていたら あなたの過去世が見えてきたの。
あなたは中国に住む、お金持ちで高貴な年配の女性だったわ。周りには 従者や召使いがたくさんいた。あなたはとても高慢で、人に指図ばかりして、誰の話も、聞く耳をもたなかったの。
その時のブロックが、現在のあなたの耳の痛みになっているのよ。
でも、こんなこと、あなたからまったくイメージできないから、ちょっと戸惑ってるんだけど。」
私はそれを聞いて、思わず笑いだした。
だって、あまりにも見覚え(?)があったから。
ピンときたというのだろうか。
私は言った。
「ああ、それって私よ。すごくよくわかる。
私はふとっちょの高慢ちきな、いばりんぼうだったのよ!」
なんとなく、彼女(私の昔の姿?)が蘇ってきた。
今、それらを見てみれば、こっけいでもあるけれど、一生懸命に生きていたにしかすぎない。
自分の弱さを隠すために、強いふりをしていたんだと、今ならわかる。
何をあんなに恐れていたんだろう?
そして、その体験の名残りが、今の自分にもあることを、心は理由なく納得していた。
友人はしばらく私の耳の上に手を当てて、エネルギーの詰まりを取り、流れを流してくれた。
「これでもう、大丈夫だと思うわよ」
友人はそう言ってくれて、
そして、私の右耳は痛まなくなったのだった。
今でもたまに、いつの間にか、自分の我を通すことが目的になってしまっていたり、自分の意見に囚われて、周りが見えなくなるときがある。
孫悟空の頭の輪っかが、戒めのためにぎゅっと締まるように、気のせいか、私の右耳もツンとする感覚が蘇ってくる。
そんな時は、私は自分の頭の斜め上で様子を見ている気がする、あの太っちょおばさんに囁いてやる。
「今生では、あなたの出番はないのよ!」と。
自分を愛すること(セルフラブ)と、自己重要感(セルフインポータンス)をはき違えていた人生だったんだね。
私の妄想の中の彼女は、とても愛おしい。
大丈夫よ、
あなたのお陰で今回は、自分を愛することを優先する人生にしようと、決めている私がいるのだから。