ミラノ フオーリ・サローネ2019 レポート(24):Università degli studi di Milano(ミラノ大学)
サローネの中でも見どころのスポットの一つがミラノ大学(Università degli studi di Milano)であろう。
国立大学であるゆえに、ミラノでは、Statale(スタターレ:国立)という名で呼ばれることの多いミラノ大学。
なお、著者が現在、在外研究を行うために登録しているのもこの大学である。
ミラノ大学は毎年、デザイン系の雑誌『INTERNI』がキュレートする展示が行われている。
会場となるキャンパスは、15世紀に誕生して以降、形を変えながら、20世紀初頭までは病院としても使われていた建物である。
今回のテーマは、「HUMAN SPACES」。
「生活(Life)は、建築より重要である」と、ブラジル生まれの建築家オスカー・ニーマイヤー(Oscar Niemeyer :1907-2012))は言った。
今年の展示はこの言葉を受け継ぎ、人間の生活に必要なものをデザインの中心に据えた。
インターネットなどの情報技術や、生活をより早くより楽なものにする科学技術は、飛躍的に発展したが、私たちの生活の質はどうなっているであろうか?と展示を通して問いかけているという。
「人間の時間、空間」(Human Spaces)というテーマは、一人一人の人間の幸福にフォーカスすることによる場、環境、背景を体現するプロジェクトである。
正門を入ってすぐ目の前の中庭に設置されるのは、プラスチックのゴミで作られたオブジェ。
フィレンツェ大学出身のアーティスト、マリア・クリスティーナ・フィヌッチ( Maria Cristina Finucci )の作品であるこちらは、上から見る「Help」と読むことができ、メッセージ性が強いものとなっている。
また同じく中庭には、“Giraffe in love”と題されたミラノのインテリアデザイナーQeebooによる作品。
題名の通り、愛らしい麒麟が、照明を加えているものであるが、密猟の危機にさらされる最も背の高い哺乳類にオマージュを捧げたものだという。
そして、アメーバのような石のオブジェは、建築家ヴィヴィアン・コゼ(Vivian Coser)による”Brazilian Stone Scape”というもの。
他写真には収められなかったが、ロンドンの建築家Waugh Thistleton 、イタリアの建築家ピエトロ・リッソーニ(Piero Lissoni)、デザイン事務所エストゥディオ・カンパーナ(Estudio Campana)、ダリオ・クラトーロ(Dario Curatolo)、ワールプール(Whirlpool)とコラボレーションしたM+S Labなどと、世界中のデザイナーや建築家の作品も構内に展示されていた。
こちらは正門からの入り口付近に設置されていたミラノの建築家マルコ・メレンディ(Marco Merendi)の”Leonardo in the greenhouse"。
なお、期間中、夜の音楽イベントなど、構内は華やかな照明に照らされる。
静かな放課後の大学という普段の姿とは、また違った一面も見ることができよう。
さらに、ミラノ大学の近くに建つ世界一醜い塔として名高いヴェラスカ塔も夜になるとブルーにライトアップされている。(残念ながら昼間の写真のみ)
Duomoの徒歩圏内にありながらもなかなか訪れることないキャンパスに足を運ぶきっかけとなる展示であろう。
参考記事:mentelocale.milano
INTERNI HUMAN SPACES(ミラノ大学)
住所:Via Festa di Perdono 7
会期:2019年4月9〜19日