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4.デンマーク教育視察レポート|デンマークの私立&公立小学校
2022年8月13日〜22日に、北欧のデンマークとフィンランドの2カ国に、教育視察(概要のnote記事はこちら)に訪れました。
子連れなら子連れなりの学びもあるのではないかと思い、思い切って2歳の息子を連れて行ってきました。
訪れた小学校について
小学校の視察では、コペンハーゲンの私立小学校(INGRID JESPERSENS GYMNASIESKOL)と公立の小学校の2校を訪れました。
先生方がカラフルな装いで華やかであったこと。そしてデンマーク流に甘いスイーツのデニッシュとコーヒーで出迎えてくれたことが印象的です。
(デンマークではミーティングは甘いものを囲みながらするのがルールだそうです。これがないとやる気が出ない!とか)
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自己紹介をした後、2つの授業を見学し、見学の感想やQAタイムを設けていただきました。
2つの小学校視察で印象的だったことをエッセンスにまとめてシェアします。
※デンマークのやり方がベストだと思っているのではありませんが、人を育む一つの考え方、やり方としてシェアします!
個を尊重し育む設計とかかわり
全員が特徴ある存在。各々の特性に合わせて学びを深められる環境をつくる。
デンマークの小学校に学期のテストはありません。これが、他の子との競争を前提にせず、自分のペースで自分の学習を深めていける環境を保証する土台の一つになっていると思います。それに加えて、一人一人の学習を支援する、という先生方の明確な思想がありました。
<お聞きした話>
・特別な支援が必要な子どもに対してだけではなく、全ての子どもを特徴的な存在として捉えるようにしている。
ー 特別な対応が必要な子供に対してどのような対応をとっているか?の質問に対して。
・公立の小学校では私立よりも多様な生徒が入学するので、それぞれが異なる前提で見て接する事が重要であるという考えを持っている。
・学習のサポートは、基本的に一人一人の学びのスピードに合わせる。子供たちに合わせて学びを進める。
・生活班などのリーダーを置いていない。得意なことなどの役割上のリーダーを置くことはあるが、生徒の中で、ヒエラルキー・上下の関係ができるような学級づくりをしていない。
・ノートをどのようにとるのかは自由(ノートをどのように取ると良いかはレクチャーするがチェックはしない)。
デンマークの学校現場では「教育」と言う言葉はあまり使わず、「ファシリテート」を使うのだそうです。
このことからもデンマークにおける生徒と先生の関係性や先生の支援についての思想を知ることができました。
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※padletを活用した教科のウェブサイトに毎回の授業内容が記録され、確認できるようになっていました。
学びが促進される環境のデザイン
最短で学力を伸ばすことに重きを置いたものではなく、学び方を獲得できる環境であるとともに協同的・創造的な学びの場が設計されていました。
<お聞きした話>
・問題は1人で解かせるのではなく、2人で解かせるようにしている。
・学習の進度に差があっても、わかっている生徒は教えることで学習が深まり、わからなかった生徒は知ることができると言う考え方に立っている。
・座席は先生が決める。どのようなペアにすると学びが深まるのか?を考えて決定している。
・問題を解かせる時には、正解不正解を重視するのではなくどのようなプロセスで、どのような材料を使って解いたのかを見ていく。
・自分が学ぶことだけでなく、自分が学んだことを周囲にシェアしていくことが大切であると同時に伝えている。
私が特に印象的だったのは自分の学びを周囲にシェアしていくことの大切さを教えているところです。
学習を自分の中に閉じず、自分の経験や学びや意見をシェアしていく教えがここからスタートしていることに感銘を受けました。
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先生の服装も非常にラフでした。また小学校の校長先生もカラフルなワンピースにアクセサリーを着用するなど特別ではないが華やかな印象でした。
しっかりと生活指導を受けてきた私からすると非日常の風景でした。
しかし自分のことを様々なツールで表現することが当たり前になっている中で、服装なども自己表現の一つだなと感じました。
生徒たちが先生一人一人も個性があり、様々な表現をしている姿に接することは、悪いことではないなと思います。
その他、私立小学校では音楽・ミュージカルなどの表現に力を入れているようで、自分がやってみたい楽器にトライできます。
年に2回ミュージックナイトと言うイベントがあり、毎日楽器演奏の時間を設けているとのことでした。
こちらでも、出来不出来と言うことにフォーカスするのではなく、生徒が取り組むプロセスをみていると熱心に話してくださいました。
先生が先生の役割に集中できる環境づくり
生徒の保護者とのコミュニケーション
一人一人を特別な存在としてみて個々の特徴に合わせていくということは、
子どもたちの学習の支援も、学級運営もかなり手間がかかります。
だからこそ、先生が子どもたちの学習を見ることに集中できるような環境づくりも行なっていました。
<お聞きした話>
・生徒の保護者とのトラブルに時間を使わず、先生が学習を見ることに専念できるよう保護者への指導を行なっている。
・先生は何でも屋ではないこと、セラビストではないこと、あらゆることを求められても応えられないことを保護者に伝えている。
・生徒が学校の悪口を言ったときには、成熟した大人として感情的にならず、先生へのリスペクトを持った対応をして欲しいと保護者に伝えている。
・家庭における生徒へのコミュニケーションの方法について、子供とどのような言葉を使って話すのか、なぜそうするのかなどについて理解できるよう支援を行なっている。
(こちらは、学校と家庭の協調という協会があり、学校が親に配布可能なマニュアルなども準備されているようでした。)
・学校では生徒が色々なことにチャレンジすることを支援しているが、学校の中に専門性を持った人がいない場合には、教育委員会がサポートをしてくれる環境が整っている。
学校のことは先生が一番の理解者、家庭のことは親が一番の理解者、という共通認識を持ってもらうように、保護者とのコミュニケーションをとっているところが生徒の学びを支えるもう一つの土台になっていました。
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まとめ・学び
認知や心理発達上も、他者との違いや周囲からみた自分について意識するようになってくるのが7-8歳と言われます。
小学校のタイミングで、自分という存在や自分のペースで学んでいくことを許容され、得意なことや自分の学び意見をシェアして聞いてもらう経験は、
自分が社会(チームやクラスといった小単位でも)の一員であり、自分のできることで周囲に働きかけていく能動性を引き出すとともに、自信につながっていくだろうと思います。