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『大脱獄』(1975)石井さん、これどうなってます?
一部分だけでも死体花の雨 北大路翼
これはいったい、どうなっているのだろうか?
網走刑務所に収監されている梢(高倉)。強盗殺人の容疑で死刑が確定していたのだが、実は、殺人を犯したのは、一緒に銀行強盗に入った剛田(田中)。梢は、剛田らの策略によって嵌められたのだった。
梢らは、他の死刑囚とともに脱獄を計画、自分を嵌めた剛田らに復讐に向かう。のだけれど、色々な場面でいったいこれはどうなっているの?と首を捻ること暫し。
逃走中に出会った具合の悪そうな、踊り子のあき(木の実)の、検便、検尿の結果はどうだったのだろう?
北海道のストリップ小屋にて踊っていたあきと仲間。なにやら、小屋主の都合で小屋を閉めているとかで稼ぐことが出来ない。石炭も小屋主の言いつけにより分けてもらえない。
Why?なぜ?
梢を運ぶ救急車の登場も唐突だし・・・・・・。
だが、この作品、さすが石井輝男監督!なのだ!
なんやかんやあって、動く機関車の中で剛田の射殺に成功するのだが、ここ!かなり凄まじい!刀などで切りつけた際に、頭部がごろんと落ちるのはよく見るのだが、今回、吹っ飛んでました。跡形もなく。血しぶきだけを残して・・・・・・。
おおっ!となったのだが、その後がちょっといただけない。拳銃を構える男の腕に、梢の撃った弾が当たるのだが、腕がごろんと落ちる。その描写、あまり見かけないかも。刀でならよく見るのだが。 いや、頭を吹っ飛ばすくらいだからありえなくもないか。
最後の一人の口中に銃口を突っ込み、撃ち殺すのだが、ここは真っ白な雪に鮮血が飛び散るだけ。頭は無事。というか無傷。
いったい、梢の銃の威力はいかほどなのだろうか?
いやいや、そんなこと真面目に言ってはいけないのだ。これは劇画タッチの画を楽しむ。石井作品を楽しむ。ただそれだけ!
だから、剛田の右目が白濁しているのも、歯並びが悪いのも、国岩(菅原)が急に眼帯をしていたのも、Why?なぜ?と言ってはいけない。これらは、石井作品の世界観に入り込むためのアイテムなのだから。
今作では、高倉健と菅原文太の数少ない共演作品なのだが、文太にぃの出番が少ないのが、少々不満っちゃ不満かな。
一部分だけでも死体花の雨 北大路翼
いったいなにがあったのでしょう。詳細は分からないが、おそらく無念の死をとげたことは間違いない。どこの部分か分からないけれど、どこの部分であっても、人間に違いない。せめてこの雨が暖かく包んでくれますように。
『大脱獄』(1975)
監督:石井輝男
脚本:石井輝男
出演:高倉健/菅原文太/木の実ナナ/小池朝雄/田中邦衛