切り開き縫ひ閉ぢ洗ひ薔薇医院 小檜山繁子
『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)
かなりの間、放映禁止作品だったが、数年前DVDで発売された今作を中心に、禁止作品について考えてみたい。
まずは今作のあらすじから。
微かに記憶している子守唄に誘われるように、北陸に向かうと自分と瓜二つの金持ちの当主が死んだという記事を見つけると、その死体が生き返ったように見せかけ成りすます。
と、乱歩の「パノラマ島奇譚」を元にしているのだが、「人間椅子」や「屋根裏の散歩者」などが混ざっている。
今作がタブー視されている要因は「映像と設定」ではないだろうか。
あの石井輝男作品なのだから、グロいのは当然、『ムカデ人間』どころの話ではない。しかも、素人手術で様々な人間を創り出している。ここが、この題名となっている所以。
しかもたちの悪いのが、自ら「手指の間に水かきがある」という負い目と差別から、そういった人間を無理やり創り出し、その王国を作ろうというのが目的である部分。
映像がグロいだけなら、彼の作品にはゴロゴロとある。だからこの設定の部分が引っかかったのではないだろうか。
ネットで検索してみると別の理由もあった。
それが「裏日本」。
確かに、この言葉は出てくるのだが、それが理由で例えば嫌な目にあったとか、そういった表現は無い。ただ、この内容と陰鬱な雰囲気が関連付けられる可能性はあるが。
ところで、他の禁止作品だが、『黒蜥蜴』(深作欣二版)『こちら亀有公園前派出所』(77)など、原作者、出演者などからのNG。前回紹介した『怪猫トルコ風呂』のように、NGワードが含まれるもの(題名についているものは難しいか)。
他にも、リメイクする際には、大幅な変更を余儀なくされるものも多いだろう。
不快な思いをする方がいるのは分かってはいるが、表面的なものだけで排除するのはどうだろう。差別を助長する、バカにするといったものは論外ではある。
9月に『MINAMATA――ミナマタ――』が公開される。題名通り水俣病を扱った作品。 様々な意見がでているようだが、とりあえずは観てからの判断ということでいいのではないだろうか。
切り開き縫ひ閉ぢ洗ひ薔薇医院 小檜山繁子
病院での出来事なのだから、手術でもしているのだろう、なにもおかしいことではない。おかしくはないのだが、こう言われると、何やら怪しげな人体実験でもしているのかと思ってしまう。しかも薔薇ときたら尚更妖しさが漂うのである。
『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)
監督:石井輝男
脚本:石井輝男/掛札昌裕
出演:吉田輝雄/土方巽/大木実/由美てる子
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