【語り・長いです】Wシリーズ(森博嗣氏著)について

 タイトルのとおり、少し語りたいことがありましてこちらのnoteに記しているところです。
 今回のテーマは、森博嗣氏のWシリーズとなります。

 Wシリーズは、講談社タイガより発行された全10作品(以下のとおり)となります。


 1 彼女は一人で歩くのか?Does She Walk Alone?
 2 魔法の色を知っているか?What Color is the Magic?
 3 風は青海を渡るのか?The Wind Across Qinghai Lake?
 4 デボラ、眠っているのか?Deborah,Are You Sleeping?
 5 私たちは生きているのか?Are We Under the Biofeedback?
 6 青白く輝く月を見たか?Did the Moon Shed a Pale Light?
 7 ペガサスの解は虚栄か?Did Pegasus Answer the Vanity?
 8 血か、死か、無か?Is It Blood,Death or Null?
 9 天空の矢はどこへ?Where is the Sky Arrow?
 10 人間のように泣いたのか?Did She Cry Humanly?

 大きなテーマとしては、人間・人工知能・ロボット(ウォーカロン)三者の交流だと思います。
 時代としては、現代からすると少し先、しかし、遠からずというところで、近未来と考えてよいと思います(具体的な数字は物語を読んでからのお楽しみに)。

 ここから先は、少し本作の内容に触れることもあります。
 所謂ネタバレ要素を含みますので、その部分を承知の上、目をとおしてください。

 本作では、様々な登場人物がでてきます。正直、覚えきれないくらい出てきますし、それぞれの関係性まで考え始めるとキリがないです。
 ただ、主要としては、以下のとおりかと思います。
 ハギリ:研究者 主人公的な存在
 ウグイ:情報局局員 ハギリのボディガード
 アネバネ・キガタ:情報局局員 ウグイの同僚
 ヴォッシュ:科学者 ハギリのよき友人?
 デボラ:トランスファ
 アミラ・オーロラ・ペガサス:人工知能
 マタガ:天才
 もちろん、各巻によってピックアップされるものは変わりますし、あくまでも個人の思いであることは申し添えます。
 少し前置きが長いところですが…内容について、感想について掘り下げてみましょう。

 先に記述のとおり、時代は近未来。
 人間は、現在とは比べ物にならないくらい永い時間を生きることができ、死という存在が薄れつつあります。それは、人間の中に人工的な細胞等を取り込むことによって、今の私たちが命を落とすであろう原因の多くを排除したことによります。しかし、その弊害として人間は、一部の存在を除いて(ピュアな人間・人工細胞を取り込んでいない人間)子孫を残せなくなってしまいます。
 一方で、技術の発展により人間と瓜二つのウォーカロンと呼ばれるロボットの数が増えています。彼らとは、共生しうまく関係を築いているように思えますが…。

 物語は、ハギリが人間とウォーカロンを区別できる装置を開発するところから始まります。
 三者の交流と冒頭に書きましたが、物語の前半では、主にその中でも人間とウォーカロンに焦点がおかれます。
 人間とウォーカロンは、外見では区別することができません。しかしながら、数個の測定をすることにより、両者を区別する装置ができてしまったのです。
 ハギリの思いは知らず、そのような装置が開発されたことにより、ウォーカロン・メーカに危険人物と見なされ、度重なる攻撃を受けますが、ウグイたちの保護により、事なきを得ます。

 物語が進むと、スーパー・コンピュータ(人工知能)の存在が明らかになり、人間やウォーカロンと接触することによって、急速な成長を遂げます。
 ハギリ自身も、人間・ウォーカロン・人工知能の違いについて、有力な仮説を発見し、それを唱えることとなります。その仮説とは、揺らぎの有無についてでした。
 それを埋めるかもしれない人工知能と出会うこととなり、名はオーロラと呼ばれています。なんといいますか、ゾクゾクしますよね。笑

 物語の後半では、それら三者が交流すること、共生することの難しさや衝突が起こります。
 その多くは人工知能の勢力争いによるものですが、場所は電子空間となります。電子空間では、人工知能たちが自由に活動できる領域を獲得するために、あの手この手、あらゆる場所で戦います。
 実際に、その弊害として、リアルの空間において、ネットワークで操ることができるものが乗っ取られます。そして、実力行使の暴動も発生しますし、案の定、ハギリは狙われます。結局、ウグイたちが助けるんですけどね、はい、かっこいいです。

 結局は…あの天才の掌の上でコロコロなんでしょうね。

 ここからは、私がこのシリーズを読み終えた感想を少し。
 最初は人間とそれ以外を区別することに主眼が置かれていますが…実は差なんて小さなもので、工学的・科学的には解決できちゃうんでは?むしろ、人間とそれ以外って区別する意味ある?と思いました。ただ、結局は倫理的に許されるかというところにたどり着くのだと思います。
 人間が、人間という存在を世界においてピラミッド的に捉えているという意識がなくならない限り、倫理的に認められることはないのかなとも思いました。
 そもそも、ウォーカロンも人工知能も人間が作り出したもので、人間にはなれないという思想が前提にはあると思います。人間になってもらっては困ると考える人もいるのでしょう。
 たしかに、その思想を否定することはできないですし、目の前に急に人間そっくりのロボットが出てきて、人間社会を脅かす存在となればSF映画の再現になるとも思えます。それは怖いし、好ましいことではありませんね。
 しかし、現代の私たちの生活を考えたらわかるように、多くの人工知能やロボット(機械的補助も含む)に助けられて生きていると思います。
 近い将来には、私たちの働き方を大きく変えるほどそれらは台頭することを容易に想像できます。そんな中で、一線を引くことが果たして得策なのか?とは考えてしまいます。
 それに関する答えを私は持ち合わせているわけではないので、的確なことを言えるわけではありませんが、仲良くやりたい、それだけは思います。

 ただ、唯一人間とそれ以外を分ける要素があるとすれば、人間は利害以外でも動くということです。思い返せば、なんでそんなことしちゃったの?と思うことはありませんか?きっと、その説明がつかない行動を起こした動機を感情というのでしょう。
 感情は、人間以外にも抱くものかもしれませんが、多種多様な感情を抱き、それに基づく行動を起こすのは人間だけに思えます。だから、偉い、上位的存在だということではありません。
 時に感情は、合理的な行動の邪魔をすることにもつながり、生産性の低下、エネルギィの無駄遣いも引き起こします。しかし、人間はその行動を無駄とは思えないのです。その矛盾を抱えて生きていき、場合によってはその矛盾を共有し、楽しめるというのも人間なのでしょう。

 なんて偉そうに語っていますが、結局は面白かったのです。読んでいて、知的好奇心もくすぐられ、内容にも感化されるくらい面白い作品だったのです。
 だから、ここで紹介することにより、少しでも興味を持ってもらえたらと思っただけなのです。

 森博嗣氏の作品は、シリーズ単独で楽しむ以外にも、シリーズ間でつながりがあり、そこを楽しむことも醍醐味とされています。
 本シリーズをもっと楽しむためには、S&Mシリーズ・百年シリーズ・四季シリーズに触れていると良いと思いますが…どっちから先に触れても楽しめるとも思います。

 長々と書いてしまいましたが、最後まで目を通してくださった方がいらっしゃいましたら、お時間割いていただきありがとうございました。
 ほんのひとかけらでも、読書欲に繋がったり、本シリーズを手に取るきっかけになれば、最高の幸せです。
 では、また今度。

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