よく切れる鋏、ちょきん
【本種子鋏】
刃物はよく切れるものがよい。
包丁や鋏など、日常的に使うものはなおさら良いものを買い求めることがよいと思う。
これは刃物に限ったことではないけれど。
鋏の最高峰は鹿児島県は種子島で作られている“本種子鋏”だろうと思う。
本種子鋏の特徴は「ねり」とよばれる刃の独特のくねりにある。切るときに刃と刃がすり合わされることによって抜群の切れ味になり、その作用は「切るたびに磨く(研ぐ)」とも表現される。
たしかに鋏を閉じていくと、刃と刃のすり寄りが一点に集中してくるような、他の鋏にはない感覚がある。
「シュキ、シュキ」という胸のすくような切れ味。
刃先から刃元までどこでもよく切れ、先が細く小振りなので細かい作業にも最適。
中央に支点のあるこの鋏は、鉄砲が伝来したときに、種子島に漂着した明国船に乗っていた中国の鍛冶師から教わったという。
豊富な砂鉄があり、「たたらの島」ともいわれる種子島には、はるか昔から製鉄技術が存在し、高い技術をもった鍛冶職人がいたからこそ、鉄砲の国産化も可能だったのだろう。
このたった4寸ほどのこの本種子鋏には、種子島の自然風土、歴史、そして刀鍛冶・鉄砲鍛冶の伝統がつまっているような気がするのだ。
いつも身近におき、長くつきあっていきたい道具である。