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民主的なNYとオープン・レストラン

シアトルも引き続き治安が不安定な状態が続いているようですが、
マンハッタンも地下鉄の治安がかなり問題視されています。
ハンマーで殴られる、ホームから突き落とされるなどの事件が続いており、私も行ったときには地下鉄を避けるようにしています。
そんなわけでマンハッタンに行くと2万歩くらい歩く羽目になるのですが、地域ごとに多様な表情があり、歴史の重層性が感じられるので、
歩いていても全く飽きません。(でも疲れます)

新市長のリカバリー・プランとオープン・レストラン

NYの新市長の経済回復プランに、「オープン・レストラン」
(屋外飲食空間)
のデザインガイドラインをつくるという一文が記されています。(New York City"Rebuild, Renew, Reinvent: A Blueprint for New York City’s Economic Recovery"p.19)

両側に占用空間があって、真ん中が道路です
これもそんな感じ

こういった状況の是非はともあれ、レストランの屋外空間がどうあるべきか、ガイドラインを定めることで、恒久化につなげていこうということです。

民主的に考える:コミュニティ・ボード

ということでオープン・レストランのガイドラインについて議論される
コミュニティ・ボードのミーティングに参加してみました。
コミュニティ・ボードとは以下のような組織で、民主的な手続きとして長年NYのまちづくりにおいて役割を果たしています。

○コミュニティボードは、地域を代表する機関です。市内に59のコミュニティボードがあり、最大50人の無給の委員で構成され、その半数は地区の市議会議員から推薦されます。委員は、各地域でコミュニティ活動に熱心な人々の中から区長によって選出・任命されます。

○コミュニティ委員会には、以下のような様々な責務があります。
土地使用とゾーニングの問題を取り扱います。
・地域住民のニーズを考慮して…市の予算編成への提案を行います。
交通問題から住宅の老朽化まで、地域社会のあらゆる問題は、地域委員会で考慮されます。
※コミュニティ委員会は、自分たちの住む地域を代弁する役割を果たす一方で、市の機関や役人に何らかの任務を遂行するよう命令する権限はない

https://www1.nyc.gov/site/cau/community-boards/about-commmunity-boards.page

コミュニティ・ボードでは
・住宅地と商業地での屋外飲食空間のあり方の違い(騒音とか)
・確保すべき歩道幅
・パンデミック前からオープンテラスとしてあったものをどう考えるか
・アンブレラの高さ
などが熱心に議論されていました。ここから、ガイドライン作成に意見が吸い上げられていくようです。

シェア・サイクルの路上における存在感も相当です

ちなみにニューヨーク市では市議会議員(カウンシル・メンバー)が51人いますが、共和党はそのうち5人。圧倒的に民主党の強い地盤です。
この点シアトルにも類似していると思いますが、
コミュニティ・ボードの存在はNYらしい民主的な手続きのあり方かと思います。

NYでは治安の悪化、人口増加、住宅供給不足など、都市課題としてもシアトルと共有する部分が多いです。
二つの都市の大きな違いは都市規模と産業構造の変化の経緯が空間に与える影響力の強さでしょうか・・・繊維業、アート、金融、ITなど、その時々の主要産業のあり方に従って空間変容のダイナミズムが起きている面白さがあります。(ズーキン先生の一連のスタディがそれを示しています)
グローバル・シティ(サッセン)としての位置づけを考えるとニューヨークは常にグローバルネットワーク内での機能的中心でありながら、それを支える産業の活力を保ってきたように(ジェントリフィケーションが進んだ今でも)見えます。外部からやってくる、グローバルシティへのサービスを支える人たちを受け入れる隙間があるように今のところは見えます。

ただ、コミュニティ・ボードももしかすると人種的偏りも地域によってあるのかな・・・という感じもしたので、手続きの中で市政に影響を与える側の代表性は気になるところです。