ポートランド(3)20分で必要なサービスに到達できるまちづくり
車に頼らないまちづくり
ポートランドは公共交通が充実した歩きやすいまちづくりで有名です。こういった生活しやすい都市づくりの概念として、近年15-minute neighborhood(15分ネイバーフッド:15分で生活に必要なサービスに到達する地域づくり)という言葉がよく用いられます。ポートランドの場合は20-minute neighborhood、つまり20分で生活に必要なサービスに到達する地域づくりを計画に含めています。
「コンプリート・ネイバーフッド」を目指して
ここでの15分か20分かの数字は大きな問題では無く、ともかく車に頼らないで歩いて生活できることを重視した考えです。
そして、「20分ネイバーフッド」の評価基準を満たした地域をポートランドでは「コンプリート・ネイバーフッド(目標を満たした地域)」としています。このような地域に住む人の割合を増やしていくのがポートランドの計画です。
日本で言えばコンパクトシティの考え方がこのような計画に類似していると思いますが、ポートランドの計画の特徴として食料へのアクセスという項目があります。これは上述したように「食料品店の0.8km以内に住む人の割合」という評価基準がありますが、コンプリート・ネイバーフッド(目標を満たした地域)では、食料品店だけでなく、ファーマーズ・マーケットやコミュニティ・ガーデンへの近接性も謳われています。
食料へのアクセスのためのゾーニングとローカリティ
ポートランドの計画は基準も明快で、公平な社会を目指すことを明確に示した計画になっていると思います(実にポートランドらしいです)が、今のところは、目標を満たした地域はやはり中心部に偏っているようです。
また、食料へのアクセスの項目は特徴的で、食料入手を距離的にも値段的にもアクセスしやすくするためにポートランドは「The Urban Food Zoning Code(都市での食料のためのゾーニング)」を全体にかけています。
このゾーニングはコミュニティガーデンやファーマーズ・マーケットを都市内で可能にするものです。
ファーマーズ・マーケットではいわゆる「ローカル」なものが売られていますが、値段は特に安くはありません。ですので、ファーマーズ・マーケットは直接的に低所得層への食料のアクセス向上に役に立っているようにはみえませんでした。このゾーニングについて疑問を持ったため、ポートランドのような食料アクセスを向上するためのゾーニングへの考え方について、ワシントン大学・アーバンプランニング学科の先生に聞いてみました。
とのことでした。特に2021年のインフレ下(40年ぶりのインフレ・レベル)では、食料費の削減効果は大きいと考えられます。
また、こうしたゾーニングは金銭面だけでなくアイデンティティやローカリティの点からも役割を果たしていると言えそうです。そういえば昔ポートランドに住む意識の高い人たちを(半ば)揶揄したような「ポートランディア」というドラマがありましたが、そこでもポートランド在住の意識高めの主人公は正統に「ローカル」なチキンを求めてニワトリをファームに確認しに行くシーンがあったように記憶しています。
「20分ネイバーフッド」のような計画における近隣に必要なサービスは都市によって異なりますが、「食料へのアクセス」という視点は、ローカリティの正統性を意識する上でもポートランドに必要な要素なのだろうと思いました。