『誰でも何かを持っている』が嫌い
これは巷によくある、副業の話です。
副業というと、アフィリエイトや投資、物販などいろいろありますが、ここでいうのは主に「コンテンツビジネス」についてです。
コンテンツビジネスとは?
一応説明すると、「コンテンツビジネス」とは自分で商品(コンテンツ)を作って、それを売るだけのシンプルなものです。私はやったことはありません。
商品といっても、スーパーやホームセンターで売っているような触れるものではなく、パソコン上で見られるようなデジタルなものです。テキストや動画、音楽などです。ネットの広告で見かけた人もいると思いますが、「ビジネスをする方法を教えます」みたいなものは殆どコンテンツビジネスの一環です。「ビジネスをする方法」という商品(コンテンツ)の宣伝をしているわけです。なんらかのノウハウをまとめて、商品化したものを情報商材とよく言います。
こういった情報商材は、ものにもよりますが数万円はします。ノウハウの書かれたテキストがPDFで数枚か数十枚で普通にこれくらいはします。購入者しか入れないホームページで動画として提供しているものもあります。また、コミュニティやサポート、コンサルティングが加わると値段は数十万円と跳ね上がります。要するに高額塾と呼ばれるものです。対面式とかマンツーマンのコンサル付きで百万円を超えるのも見たことがあります。
大まかな例としては、アフィリエイト商材なら3万円や5万円で買ったことがあります。別のアフィエイト商材では、コミュニティ、サポート、ツールなどが付随している高額塾で、入会で25万円かかりました。FXの高額塾では30万円、さらに物販の高額塾は50万円したものもありました。
稼げなかった理由
それで結局「私」は稼ぐことができたのか? 簡単な話です。できませんでした。これからその理由を述べます。
多くの情報商材でまず先に出てくる情報は「マインドセット」です。マインドセットというのは、ものの考え方や行動指針のようなものです。精神的な話なので、本題のノウハウとは直接は関係ない要素です。しかしこれが最も重要で、だからこそ一番最初に教えられるのです。
それぞれの商材で多少ニュアンスが異なったりしますが、突き詰めると2点に集約されます。「継続の大切さ」と「継続をする工夫」です。当たり前の話です。なにかを成し遂げるには一朝一夕にはいきません。毎日、コツコツと作業できた者のみが成功できるのです。実際、1日1~2時間以上の作業を推奨する商材が多いです。
つまるところ、私には継続ができませんでした。いろいろなノウハウで口酸っぱく「継続しろ」と言われていたのにです。
私は考え続けました。なぜ継続できないのか、どうすれば継続できるのか、考えることだけは継続できているという皮肉。答えが出るまであまり時間はかかりませんでした。
継続ができないというのは様々な理由があったりするのですが、最も大きくぶつかりやすいのが、「不安」と「疑問」の壁でしょう。
やる気がないわけではない
私の実体験を例にあげます。以前、私はアフィリエイトをやっていました。アフィリエイトも種類はいろいろありますが、今回の例ではPPCアフィリエイトです。この方法で稼ぐという商材を買いました。
しかし、これはどんなサイトでもいいというわけではなくて、それなりに読者に役に立つ必要があり、そこそこ面倒です。一定の基準をクリアしなければならず、そのためのアフィリエイト案件を探す必要がありました。ただ、これがなかなか見つからない。
その商材では、複数の案件の比較をする1ページだけの簡易なサイト(ペラサイト)で報酬を狙うのですが、「似たようなサービス」で「比較できる要素がある」案件を「3つ以上」見つけなければならず、これを探すのがまあ大変。仮に見つけても、ライバルが多かったりして、よほど工夫しないとおそらく稼げません。
私自身、しっかり真面目に1日1時間以上やっていたわけではないので、もしかしたら、それ程問題ではないのかもしれません。しかし、私は思ってしまいました。
「これで本当に稼げるのだろうか?」
条件を満たすサイトを作るのが難しく、作ってもライバルは多い、クリックしてくれても報酬に繋げるのがまた難しく、広告料だけがかかっていく……、「結局、自分程度では稼ぐことはできないのでは?」となってしまいました。
コミュニティもありましたが、ネガティブな質問って当たり前ですが歓迎されません。大抵返ってくる言葉は、おおよそ2パターン。
何回もやる気持ちが出せないから聞いているわけで、マニュアルを読んでも解決できなさそうな問題だから、コミュニティで勇気だして質問してるんです。
もうこれは自分だけの問題なんだなって結論が出てからは、めっきりやらなくなり、そのままフェードアウトしました。
継続できない人間は「やる気がない」のではなく、「できる気がしない」のです。
私の場合、「この厳しい条件のサイト作りで稼げるのか」という疑問と、「本当に私でも稼ぐことができるのか」という不安が致命的な足枷となったのです。
商材と、そして自分を信じ続けられなければ継続はできません。
それでも繰り返す愚考と愚行
いくら自分への信用と裏切りを繰り返しても、副業で自由になりたい欲求は捨て切れません。
商材費や諸経費に関しては「勉強料だと思えば」と割り切ることで、かけたコストへの弔いをしてきました。
この考えは非常に良くありません。一度や二度ならポジティブで良いのですが、何度もこれをすると「本気だった(はずの)自分の気持ちを、本番までの繋ぎ程度の価値に下げてしまう」のです。そのうち、希望を持って買ったはずの商材もなんとなくで諦めてしまい、「勉強になったな」で次の商材を探すことになるのです。きっと私は学習性無力感に陥ってしまったのでしょう。
商材で稼ぐなら、商材を買った時の気持ちを忘れてはいけません。その瞬間だけは希望に満ち溢れていたはずだから――。
稼ぐのに必要なもの
ここまでで、私に足りなかったものは一言でいうと「信じ続ける胆力」ということになりますが、これはある程度の根拠があって初めて備わるものです。その根拠とは「心の余裕」で、それを得るには「お金」と「知識・経験・スキル」が必要なのです。
お金がないから稼ぎたいんだけど、というのはごもっともですが、残念ながらお金をかけない程、必要な時間と難易度は上がっていきます。実際、情報商材を買わなければサッパリどうしたらいいかわかりませんし、無料で出回っている情報だけでは素人には厳しすぎる上に、自力では軌道修正が難しいです。有料のツールを使わないというのも、余計な手間や時間を増やすだけのことが多いです。
「知識・経験・スキル」というのは、ライバルとの差別化にほぼ必須な要素です。自分の持つこれらの情報や技術を駆使して、独自性をアピールするわけです。当然、どのように差別化するかは考えなければなりませんが、積み重ねたものが多いほど、可能性が広がるのは明らかでしょう。しかしながら、完全に本人の素養の問題なのですぐに得られるものではありません。
RPGで例えるなら、キャラのジョブやレベルが「知識・経験・スキル」で、「お金」はそのまま所持金ってところです。
所持金だけ多くもっていて一通り装備やアイテムを整えていても、弱いジョブや低レベルでは強い敵に勝つのは難しいでしょう。また、ジョブやレベルが強くても、装備やアイテムなしではこれまた苦戦を強いられるでしょう。
どちらが欠けても「心の余裕」を失います。「お金」が欠ければ商材に対する「不安」を、「経験・スキル・知識」が欠ければ自分の能力に対する「疑問」を呼びます。そして直に信じ続けることが難しくなり、挫折してしまうのです。
RPGで例えましたが、現実には生活費も必要です。実は私が副業を始めた時は、既に収入がゼロの状態でした。貯金はありましたが、このままでは時間の問題という状況です。時間の問題、ということは悠長に作業なんてできません。どうしても焦りが出てしまうのです。「これをやっていて本当に稼げるのか?間に合うのか?」という不安に駆られてくるのです。そんな精神状態で継続なんてできるわけがありません。そして、他の商材がすぐに稼げそうなものに見えてきて、いつかは誘惑に負けてしまうのです。
RPGではモンスターを倒したりすると経験値が入り、一定量獲得するとレベルが上がりますよね。しかし現実には経験値は目に見えませんし、レベルが上がっているのかも実感が難しいものです。
これは、当たり前なことですが、商材の紹介ページ(LP:ランディングページ)には普通、商材の内容に関してネガティブなことは書きません。例えば、「お金がかかります」とか「かなり難しいです」とか、安直ですがこんなことを書いていると「やっぱりやめておこう」と逃げられるからです。
しかし、蓋を開けてみれば「やっぱりやめればよかった」というくらい面倒な作業であったり、コストがかかったりすることがあります。特に、作業面の話をすれば、なかなかに高度なセンスを要求されることもあります。
「回数をこなせば慣れてきて大体わかってきます」のような文言はどの商材でも見かけますが、実際にそのレベルまで行くのは困難でしょう。その前に「この調子で本当に自分でも稼ぐことができるのか?」という疑問を投げかけてしまうのです。自分にはできなさそうだと考えてしまうと、途端に作業が苦痛になり、そのうち考えるのも嫌になってくるのです。そして、簡単にできそうな商材が目にチラつき手を出してしまうでしょう。それも決して楽なものではないとも知らずに。
私の嫌いなもの
私は『誰でも何かを持っている』というのが嫌いです。
最初にコンテンツビジネスの話をしましたね。実はそこから大きく脱線していたことに気付いたでしょうか。
コンテンツビジネス――というよりは、起業すること全般にいえることですが、はっきりいうと、なにも持っていない人間にはビジネスはできません。当然、そこからの成功はあり得ません。
「なにも持っていない」というのは、前項で挙げた「知識・経験・スキル」のことです。以前は私でも「お金」だけはありました。今は「お金」すらありません。風前の灯火、吹けば飛ぶ塵です。
それはいいとして、商材を販売したり、コンサルをするような人は皆こぞって言うのです。
「自分の得意なことや、興味のある分野で良いですよ」
そういう、特に関心があって、好きであって、優位性がとれる部分がある前提で彼らは言ってくるのです。私はそれを聞くととてつもなく不愉快になります。こんな無責任なことを言えるのは成功者だからです。自分が何かを持っていたから、持っていない人間の気持ちがわからないのです。基本的に、そういう武器になりそうな何かがあることが大前提で話が始まるので、何もない人間はスタートラインにすら立てません。商材を買った後で、そんな現実を突きつけるのです。おまけに、これは本人の領分になるのでコンサルは明確な答えを持ちません。できるのは当たり障りのないアドバイスだけです。自分で考えるしかないのです。
とはいえ、こんな何度もお金をドブに捨てて、それでも希望を捨て切れずに商材に手を出してまた火傷して、借金までして火傷どころか火の車のただのオタクが今更「なにも持っていないから」で諦められるはずがないのもまた事実です。
時には親のせいだと考えたこともありました。自分の好きなもの、得意なことを見つけ、夢を見て、積み重ねることが将来にどれだけ影響するか――夢は叶えられなくとも、大きな武器になり、人間としての魅力にもなる、人生を潤してくれる糧になることを、私は最近まで知らなかったのですから。
しかし、他の人のせいにしても現状が改善するわけでも自分が天才になるわけでもありません。そんなことをしても意味がありません。これは自分で撒いた種。我ながら殊勝な人間だと思います。それでも、時々無性に自然に積み重ねてきた人が、ただひたすらに羨ましく、疎ましくなるのです。そんな自分が惨めで醜くて可愛いのだと思います。
私はこれからも何度でも同じ過ちを繰り返すのでしょう。そんな気がするのです。
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