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劇場版 鬼滅の刃無限列車編の感想(ネタバレあり)

映画本編だけじゃなく原作18巻くらいまでネタバレしています。

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。

早く観たかったので初週の土曜に観たけどまあ混んでた。

観終わった直後に前を歩く小学生位の男の子が興奮気味に妹に「すごいなんてもんじゃない、すごすぎた!」という感想を話していてなんか良かった。

原作はジャンプで最終回まで全部読んだし、コミックスもKindleで全巻購入している位好き。
ただTVアニメはどちらかというと微妙だと思っていて、音楽や演出の感動推しが過剰であんまり好みじゃなかったり、漫画版で巧みに使われているナレーションが無くなっていたり、主人公炭治郎のあまりに善人故にそれが裏返る程ブチ切れてしまった時の狂気感など原作が持つ歪さみたいなものが、少なくなっているのが作品の持つ魅力を損なっている気がしてちょっと勿体ない気がしていた。

もちろんアニメとしてのクオリティが段違いに高くアクション描写のケレン味、そして当然漫画とは違いカラーになっている事による豊かな色彩の高揚感など良い所もあるし、個人的には欠点に感じた原作の歪さみたいなものを無くしているのも「子供も大人も楽しめるアニメ」にしたい為の選択に感じるし狙い通りなのだろうとは思う。そしてそれが大成功しているのだからまあ凄いよね、、、

映画にする意義

正直に言うと映画化と聞いた時、「オリジナルストーリーじゃないんだ、、、」という所に実はちょっとガッカリした。

同じジャンプ映画だとこないだの「僕のヒーローアカデミアヒーローズライジング」が原作とは別ルートの最終回を見事に描ききった作品だっただけに、鬼滅もやるなら原作の深みを増すような映画オリジナルのエピソードが観たいという気持ちが強かった。(わがまますぎるけど、、、)

ただ映画を観終わってみると、この「無限列車編」というのがとても映画に向いた話なのだと気づいてこれはこれで全然良かった。

まず列車のみの限定された空間で起こるワンエピソードのみなので単体として面白いしエピソードの長さも2時間ピッタリ位で無理が無い。
そしてキャラクターそれぞれが見たい夢と悪夢を提示する事で場面としても飽きが来ないし、全く初めて観た人でもわかる様に夢そのものがこのキャラクターはこういう性格でこういう過去がありますよ、という紹介にもなっている。

何より今回の主役と言っても良い煉獄杏寿郎という男の魅力を映画一発で刻みこもうとしている狙いにある意味一本で完結している映画という手段がバッチリハマっていたと思う。
30分アニメの流れの中のワンエピソードだと他にもキャラクターがいる中で流してしまいそうになるけど「キャラクターを心に刻み込む」という2時間の中で集中させる狙いに合っていると思う。


何気に見事だと思ったのは映画冒頭に原作にはない産屋敷のお墓参りシーンを追加していた事。
映画ラストが彼のシーンで終わるので一本の映画として完結している感じがするし、何より煉獄さんと同じく志を繋いで死んでいった仲間が他にも居る事に感動が増していた。

煉獄さんが最高

原作の話をすると、ここでの煉獄さんの犠牲というのは物語的にとても重要な意味があって、この作品のテーマである「人間賛歌」を体現する様な人物だと思う。

鬼滅の刃は色々な漫画のオマージュや影響をあまり隠さない漫画だと思っているのだけど、特に影響が強いのは「ジョジョの奇妙な冒険」だと思う。不老不死の存在に対して一つの命から一つの命へと脈々と想いを伝えていく事の尊さと美しさ、とてもジョジョっぽい。

この先原作では彼が死に際に炭治郎にかける「心を燃やせ」という言葉が強敵が登場するたび繰り返されるのだけど、そのどのシーンにも「死んだけど煉獄さんがちゃんといる」という感じがして泣いてしまう。

ここから語られる物語の中でもとても重要なキャラクター。

そして最大の見せ場である猗窩座戦だけど、漫画では表現できないコマとコマの間のアクションを素晴らしいアニメーションで表現していてとても熱い。
少しずつ煉獄さんが傷つき押されていく描写が丁寧で見入ってしまうし、ラストの母親との回想で抱きしめられた子供時代の目が潤んだ演出からの、再び刀を握り攻撃の繰り出す時の音楽の盛り上げ方など、どうしたってそりゃ感動してしまう。

ちなみに僕は鬼滅の刃の全キャラクターの中で猗窩座が一番好きなのだけど、改めて煉獄さんと真逆のキャラクターなのだというのがよく分かった。

最後の最後まで母親の言いつけ通り「弱き人を助ける」という生き方を全うした煉獄さんに対して、彼は本当に守りたかった身近な人さえ守る事が出来ない挫折の中で鬼になってしまった人な訳で、炭治郎の言う「逃げるな!卑怯者!」というのは闘いに逃げてきた彼自身が一番言われたくない言葉なんだよな、と改めて後の展開とか考えると本当に重要なエピソードなんだなぁ、、、。

まだまだ先になるだろうけど再び猗窩座と炭治郎が対峙する所も映画で観たい。

しかし個人的にコロナで家にいる間は本当に少年ジャンプのお世話になっていて、電子書籍版の定期購読で色んな漫画をずっと読んでいた。
ちょっと前まで長期連載漫画ばかりだったイメージだったけど、鬼滅も含め人気のある漫画が相応しいエピソード数でちゃんと最終回を迎えていくし、新連載で始まる漫画も面白いものばかりでずっと読んでいられる。何度目かの黄金期が来ていると思う。

ディズニーが映画館を見捨て、大型大作映画が延期を繰り返している中で、こうやって記録的に盛り上がるのはジャンプファンとしても映画ファンとして嬉しいな。映画観に行けない間も楽しませてもらったのに、映画でも楽しませてもらってありがたかった。

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