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終わりに向かっていく

エレベーターの前でトンボが絶命していた。

きみの季節はこれからじゃないの?と思ったけれど、
9月に少しだけ吹いた秋風に騙されて出てきてしまったのかな。
それにしても早すぎやしないかな。

最近は人間と動物の寿命差についてよく考える。

たとえば、のびた。
猫の8歳は人間に換算すると48歳、なんていうけれど、
表を見ると最初の1年で15歳、2年で24歳、
それ以降は1年に4歳ずつ加算、なんてちょっと乱暴。

身体年齢?精神年齢?
どっちにしたって
たった1年で人間の15年分生きるわけないじゃないか。

平均寿命から逆算して設定しているんだろうけど、
のびたがまだ8年しか生きていないことは事実なわけで、
その8年はやっぱりどう考えたって「8年」だ。

時々、人間は寿命が長すぎる。って思う。

これ以上愛しいものを見送るのは無理だから、
イコが死んだ時、のびたで絶対に最後にすると誓った。

そこからあたしは部屋に花を飾ることをやめた。
アボカドの種や豆苗を育てることもやめた。
終わりに向かっていくものはのびただけで十分だ。

最近、イコの隣に小さな猫のぬいぐるみがやってきた。
名前はキト。女の子。

この子だってもう、あたしの中ではギリギリなんだよ。

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