アークザラッドの魔族とは?初代~Rのちょこ&魔族関係を掘り下げる
アークザラッドシリーズにおける「魔族」の定義は難しい。作中で魔族とされる者の特徴や関連描写が多種多様で、ひとつの系統にまとめにくいのだ。
加えて、2018年に配信開始されたアークザラッドR(以下、アークR)では、ステータス項目の“相性”としての「魔族」が増えた。あのリーザが「魔族」に分類されたことも、さらなる混乱を招きやすくなった理由だろう。
この記事では、アークザラッドシリーズにおける「魔族」の定義を考えるべく、「魔族と思われる者」の共通点や背景を探りつつ、徹底的に考察する。
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アーク世界の“魔族”の概要
考察の前提として、アークザラッドシリーズに登場した“魔族”をおさらいしよう。2023年9月までに発売・配信されたシリーズ作品(ゲーム)で明確に“魔族”という表現が使われたのは、この6種類だと思う。
ちょこ、セゼクたち「魔界からきた魔族」
アーク2のアクラから見た「今の魔族」
アーク2の「カサドール」
アークRの「相性としての”魔族”」
アークRの「ヘレーネ」
精霊の黄昏の「モンスターが進化した種族」
以下で、ざっくり紹介する。
ちょこ、セゼクたち「魔界からきた魔族」
魔界からきた魔族に該当するのは、おなじみのちょこ(アクラ)と、アクラの父であるセゼクだ。ちょこは初代のアークザラッド(以下、アーク1)で初登場し、ほぼ全てのシリーズ作品に登場するキャラクターである。
以下、ちょことセゼクの関連描写を総合したものだ。特に記載がない情報はアーク2のちょこ覚醒イベントで確認できる内容となる。
ちょこは人間ではなく魔族。本当の名は「アクラ」で、魔王セゼクの娘。
かつて、魔界は美しい世界だった。しかし、愚かなる者達の争いで大地はすさみ、多くの魔族が死に絶えた。やがて秩序は失われ、混沌と憎悪に満ちた世界となった。一族は新しい世界を求め、この地へとやって来た。
魔王セゼクが魔界と呼ばれる異世界よりこの世界へ来たのは、いにしえの時代で、地上の楽園を願い、地下の世界に偽りの大地を作ったとのこと。(※精霊の黄昏のカトレアとべべドアの話を総合すると判明。いにしえの時代がいつ頃かは不明だが、少なくとも古の七勇者の時代より古い可能性がある。(べべドアが人間王に造られた存在のため))
七勇者ノルは、かつて「ちょこと似たような力を持つ魔族」の“ゼゼク”と戦ったことがある。仮にゼゼクとセゼクが同一人物なら、セゼクは古の七勇者時代には地上に来ていたとほぼ確定。(※Rのちょことあそぼー!より。ただしノルは相手の名をうろ覚えっぽく“ゼゼク”と言った点、ノルが出生不明なため、この世界で戦ったか不明な点には要注意。)
美しい地上の世界で暮らす事を夢見ていた一族だが、この世界にも憎しみと争いがあった。魔王セゼクはこの美しい世界を守るために、夢を叶えるために、愚かなる人間を支配しようとしていた。
遺跡ダンジョンにて、魔王セゼクが死亡。
「人の憎しみを力に換える魔剣」に支配され殺戮を繰り返していた剣士ラルゴは、セゼクの屍に泣きつく小さな魔族の娘を見て、魔剣から解放された。ラルゴは「自分の実の娘の記憶」をアクラに移し、「アクラの記憶/闇の力(闇の心)」を封印。「ちょこ」と名付け、人の娘として育てた。
だがアクラの封印は不完全で、おそらく墓石から流れ出した闇の気がモンスターを呼び寄せたと思われる。(※ラルゴの意見)
モンスターは「本来、自分たちの主となる魔族の娘」を探して村を襲い、村人の半分近くは殺された。残った村人がちょこを殺そうとしたが、ちょこをかばったオオカミのシルバが死亡。ちょこが力を解放し、村も村人もモンスターも消えてしまった。
結果、ちょこは大切な者を失い、力を取り戻した。その力で、幻のトココ村を作る。死人の魂をスライムの器に保存し、幻覚で人の姿を与えた。自分の力を恐れたちょこは、その力と忌まわしい記憶を封印した。
ちょこは、記憶と感情に封印をかけてある。精神に苦痛を与える記憶はすぐ忘れるように。悲しみや憎しみに心をとらわれぬように。そうしなければ、今のちょこは人として生きられない。(※ラルゴより)
トココ村は600年前の地図には「南にある島」の中に載っていたが、500年前の地図からは無くなってしまったようであるとのこと。(※アーク2のペイサス図書館の書籍「アララトスで発見された古文書」より)
長い時が流れて封印が解け、ちょこは“悲しい出来事”を思い出す。
解放されたアクラ(の記憶)は「魔王セゼクの娘、魔人アクラ」と名乗る。ちょこに真実を告げてから、遺跡ダンジョンへ向かい、魔王セゼクを復活させる。
セゼクが娘と認めたのは、アクラ(の記憶)ではなく、ちょこ。アクラ(の記憶)はセゼクを殺した後、ちょこに敗北し「記憶石」に変わった。
ゴーゲンいわく、アクラの記憶が実体を持っていたのは、余程強い思いが込められていたからだという。
ちょこは記憶石を吸収。「アクラとしての記憶/闇の力(闇の心)」を取り戻した。(※以後、ちょこは戦闘中「かくせい」等を使用可能になる)
アーク2の1000年後には、別の進化を遂げたと思われる種族の魔族(※後述)が多く登場するが、ちょこは“魔王セゼクの血を引く本物の魔族”として1名だけ別格の扱いを受けている。登場時には自ら「ちょこ、魔界からやってきた しょ~しんんしょ~め~の魔族だよ!」と自己紹介する描写も見られる。(※精霊の黄昏より)
なお、魔王セゼクは遺跡ダンジョン地下50階で「骸骨の姿」で登場し、ちょこ覚醒イベントではアクラ(の記憶)によって1度「復活を遂げた姿」を確認できる。さらに遺跡ダンジョンの地下65階と地下70階では「かつてのアクラと生前のセゼクの姿を模したと思われる像」も見ることが可能だ。
ここで紹介したのはあくまで概要となる。ちょこやセゼクらの背景を詳しく知り、彼らについて考察するなら、特にアーク2での関連イベントはその全てがヒントとなる可能性があるほど、濃い内容といえるだろう。
作中の魔族の中で最もルーツが古いと思われるのが、魔界からやってきた魔族である。彼らを掘り下げることは、魔族の定義を考えるうえでとても重要となってくるはずだ。
アーク2のアクラから見た「今の魔族」
アーク2のアクラ(の記憶)は、遺跡ダンジョン地下71Fにてこう語った。
私はお前のように 人間を信じることはできぬし 今の魔族のやり方が正しいとも思わない
このセリフを前後も含めてストレートに解釈するなら、「アーク2の時代には魔王セゼクやアクラとは別に“今の魔族”が存在する」ということだろう。
この「今の魔族」が具体的に誰を指すかは作中で明言されなかったものの、作中の描写をふまえて、この記事内で後ほど考察する。
アーク2の「カサドール」
アーク1とアーク2のアリバーシャにて、敵として立ちはだかったカサドールには、アーク2で「我々魔族はな…」と発言した。
ちょことアクラとセゼクを除き、アーク1~2で明確に「魔族」を自称したのはカサドールだけである。しかし“我々”と述べるからには、カサドール以外にも魔族がいるということなのだろうか。
以下、アーク1におけるカサドールの主な作中描写を総合したものだ。
アリバーシャは、もともと水と緑の豊かな土地だったが、動力石の採掘が自然をくるわせ、国が砂漠化してしまった。現在は「1000年前にロマリアから来て動力石を採掘し商売を始めた男」の子孫が治めている。
カサドールはアリバーシャ国王の配下の将軍。
水の精霊を護るサリュ族長老いわく、人の命など何とも思わない、モンスターよりもひどい男。作中でも「利用出来るものをとことん利用し、生きる価値もないようなクズを消し去って何が悪い?」など冷酷発言あり。
カサドールは、サリュ族の人々を殺してカギを入手し、水の神殿に入る。
神殿にかけつけたアークたちを倒すべく、カサドールは「ファイアゴーレム」に変化。そのまま倒される。
こちらは、アーク2のカサドールの主な作中描写を総合したものとなる。
バルバラードに来たアークたちを迎えたのは、死んだはずのカサドール。
実はカサドールは死んでおらず、アリバーシャでアークたちが倒したのは影武者のゴーレムだった。
カサドールは「ロマリアの者」だった。バルバラードとアリバーシャに戦争をけしかけるべく、2つの国に入り込んでいたのだ。
カサドールいわく「我々魔族は人間が、世界を血と欲で染め、破壊すればする程、この世界で力を得る事が出来る」とのこと。そのためにロマリアの巨大戦艦も率いて、殺し合いのための道具として使っていた。
再びカサドールの影武者(フレッシュゴーレムたち)と戦ってから、アークたちはようやく、ピラミッドの奥で本体と戦うことに。カサドールは「貴様等の首と引き替えにロマリアの将軍の称号をもらうとするか」と、ブラックナイトの「暗黒騎士カサドール」(闇属性)として襲ってきたが、アークたちに倒される。(※以後、作中には出現していない)
なお「アークザラッドII編・下 オフィシャルカードコレクション」では、カサドール単独のカード(MO-55)で、全身イラストも公開されている。こちらのカードの説明では“策略家”と紹介される点にも注目したい。
カサドールはロマリアの者ということで、ロマリア勢が各地で起こした様々な行動も考察のヒントとなるはずだ。
アークRの「相性としての”魔族”」
アークRには、従来シリーズのような「光、闇、火、水、地、風」という属性が存在しない。そのかわりに、属性として機能する項目が「相性」だ。
これまでの属性:五大精霊などともリンクする6属性
アークRの相性:さまざまな要素を反映した10属性
相性が有利だと「最大1.5倍のダメージ」を与えられるなど、アークRのステータスの中でも戦局に影響する要素の1つといえるだろう。
その組み合わせは複雑で、「攻撃者の育成状況によってもダメージ倍率が変わる」こともあり、しっかり活用して立ち回るにはコツがいる。だが複雑なぶん忠実に世界観が反映されているように見えるため、考察のヒントが多く詰まっているのだ。
相性の1つに「魔族」があり、ちょこたちが分類されている。だが後の面々は物語中で自分が魔族だと名乗っておらず、考察の余地が相当あると思う。
中でも当初違和感を覚えたのがリーザだ。特にアーク2では、彼女が「魔女」と呼ばれる描写こそあったが、「魔族」と呼ばれる場面は記憶にない。
とはいえ、作中の描写を分析していくうちに、徐々にその背景らしきものが浮かび上がってきた。後ほど詳しく考えていこう。
アークRの「ヘレーネ」
アークRでは、ちょこ以外に、現段階でただ1人「魔族」を自称する人物が存在する。それがヘレーネだ。
以下は、アークRでのヘレーネの描写をざっくりまとめたものとなる。
ヘレーネは、機神に精通した知識と技術力を持っており、その腕を買われて、アルディア帝国の「科学造兵廠」で主任として雇われる女性研究者。数千年前に生み出された機神の技術を応用し、強化兵を開発している。
機神を愛するヘレーネは、極秘裏に新たな機神を創り出そうと画策。他人は野望を叶える道具に過ぎず、非人道的な実験を裏で繰り返していた。
ヘレーネの正体は、長い時を最強の機神の創造に費やしてきた魔族。機神を生み出すこと以外に興味を持たないように見えるが、その動機は不明。
キャラクター紹介では「300年 生きる魔女」と紹介されている。
ヘレーネは、ヂークベックを「ヂークベック様」と呼んだうえで「機神の中でトップクラス」「直接お会いできるなんて身に余る光栄」と。さらに「ヂークベック様やグロルガルデ様を超える機神」を作りたいとも話す。
非人道的な実験を繰り返したヘレーネは捕らえられ、1度は研究を中断。
後にヘレーネは改ざん者(根源の神)の一派に加わる。不安定なコアのかわりに瘴気を動力源とし、根源の神の技術を使って、改良型となる次世代の機神を生み出し、ハルトたちの前に立ちふさがった。
ヘレーネはちょこのことを「あの魔王の娘アクラ」「あの伝説の魔族」として認識していた。ただし“聞いていた姿”と少し違う、と話していた。
ヘレーネは“人間”としてアルディア帝国の研究施設で働きつつ、裏で動いていたためか、作中では様々な人物と面識がある様子が伺える描写がある。
そういった描写や、戦闘中の技などもふまえ、後ほど詳しく考察する。
精霊の黄昏の「モンスターが進化した種族」
精霊の黄昏では主人公の1人であるダークをはじめ、種族として「魔族」に分類される者が多く登場するが、大半は“ちょこの時代の魔族”とはルーツが異なる。実は彼らはモンスターが進化して誕生した新たな種族だったのだ。
精霊の黄昏には「魔族」が多く登場し、関連描写も数えきれないほどある。そんな魔族の概要は「真実の洞窟」で判明し、以下は主な内容の要約だ。
いにしえの時代、人間王は邪悪な心で世界を支配し、神に挑もうとした。
モンスターは、人間王が「生きた兵器」として造り出した存在で、相手を攻撃するという目的の為に、人為的に誕生させられた。
精霊が消えたことでモンスターに変化が起きた。人間社会から追いやられていたモンスターの中に「高い知能とより強い魔力」を持つ者が現れた。
地・水・火・風・光という最上位の精霊の力を宿した「大精霊石」の力を得て、一部のモンスターが「魔族」へ進化。やがて魔族は世界を少しずつ切り崩し、その勢力圏を人間と同じ位に広げた。
戦闘目的で造られたモンスターから進化した魔族は、根源的にまず戦おうとする。戦えば、強者と弱者が生まれる。「強者が弱者を支配する」という弱肉強食の考え方が魔族世界の秩序となったのも、当然の帰結だった。
なお作中では、ちょこは「魔界からやってきた正真正銘の魔族」を名乗り、他の魔族と一線を画している。ちょこたち純粋魔族と、黄昏時代のモンスタールーツな魔族は別物と考えてよいだろう。
ただし同じく“魔族”と名乗ることもあってか、検証で共通点も見えてきた。詳しくは後述する。
考察1:魔族と人間とモンスターの関係
アークザラッドでは、シリーズを通して、生命の種類の線引きが、わかりやすく開示されていないとも取れる描写がたまにある。「このキャラはこういう種族だ!」をはっきり断言しにくいケースだ。
例えばリーザの場合、アーク2時点だと、不思議な力を持つ人間の少女という扱いだった。だがアークRでもおそらく人間のままのはずなのに、相性が「魔族」である。この理由の開示は、作中では行われていないはずだ。
そんな背景を考えるうえで、魔族と近い関係にあり、考察のヒントになりやすいと思われる生命が「人間」と「モンスター」だろう。“魔族”に分類される者には、人間やモンスターと何らかの関わりを持つエピソードが確認できる傾向だ。
ちょこ:魔族としての記憶や力を封印され、人間として暮らしていた。トココ村をモンスターが襲った理由は、ちょこを自分達の主にすること。
カサドール:人間として、アリバーシャやバルバラードで暗躍していた。作中でモンスターを使役し、自身もモンスターのような姿に変身。
リーザ:そもそも人間として、人間の村で生まれ育った。獣使いの力を持ち、多くのモンスターと意思を通わせられる。
ヴィオラ:もともと人間の少女だったが、おそらく蜘蛛のモンスターと融合してキメラ化した。
精霊の黄昏の魔族たち:一部のモンスターが精霊の力で進化した種族。
ここでは、作中の描写をもとに、「魔族」「人間」「モンスター」の関係性を掘り下げていこう。
モンスターの起源って、本当に人間王?
そもそも「モンスター」とは何だろうか。アーク2や精霊の黄昏では、モンスターの起源に関する情報を確認できる。
いにしえの時代と人間の王について「人間の王は精霊や神をもしのぐ最高の力(科学力)を手にした。王はすべての世界を手に入れるため、科学と自らの欲の力で生み出したモンスターを使い神に挑戦をした」(アーク2)
真実を語るきらめき「いにしえの時代、邪悪な心で世界を支配し、神にまで挑もうとした『人間王』。彼がその際、『生きた兵器』として造り出したのが、『モンスター』なのです。モンスターは、その種が自ら望んでこの世に生を受けたものではありません。相手を攻撃するという目的の為に、人為的に誕生させられたのです……」(精霊の黄昏)
べべドア「人間王は、すべてのモンスターの生みの親」(精霊の黄昏)
後半2つをストレートに解釈すれば、アーク世界における「モンスターの定義」は「古の時代、人間王が人為的に造り出した『生きた兵器』」だろう。
だが私は、この定義自体は正しいが、この解釈を全てのケースには対応できないと考える。その背景を詳しく掘り下げよう。
古の七勇者の時代(アーク1の3000年ほど前)を描く物語自体は数えるほどだが、その中にモンスターの関連描写は意外と多い。そのため、古の七勇者時代のモンスターをしっかりと考察することができるのだ。
トキワタリノ方舟前日譚1~3幕、二人のノルなどで、古の七勇者の時代の人々の発言を見ていくと、一般的には「獣」と「モンスター」をほぼ同義で使っているように見える。
以下は、特に注目したい発言だ。
ソル「(モンスターと戦ったミズハへ)……驚いたな。随分と戦い慣れしているようだが」(トキワタリ前日譚1幕)
バルダ「兵団が立て直しをする前に叩き潰すつもりか。野生のモンスターの行動とは思えんな」「今の兵団よりも、統率の取れた行動。何者かに指揮されている可能性も高い」(トキワタリ前日譚1幕)
ウルトゥス「死者蘇生の魔法はまだ実験段階です。蘇ったご家族も、人の意識なども無いただのモンスターでしかないかもしれない」(トキワタリ前日譚2幕)
グラナダ「くそ、野良モンスターたちか……こちらの気配に気づいたようだな」(トキワタリ前日譚3幕)
グラナダ「(モンスターと戦ったミズハへ)戦いに慣れているようだが、どこかで訓練でもしていたのか?」「普段からモンスターと戦っているとなると、かなり辺境の地で暮らしていたようだな」(トキワタリ前日譚3幕)
月光「(エイギルたちのことを)あのような者共は、人とは呼べぬ。本能に従い行動する獣と何も変わらん」(メイン6章5幕)
彼らの言動から考えるにモンスターは、
・本能に従って行動し、行動に計略性や統率性が無い傾向。
・辺境に多く生息する(おそらく都会にはあまり出ない)。
ミズハが戦う様子に皆が驚くのを見ると、
・モンスターと戦えないのが普通で、戦うのは基本「訓練」を積んだ者。
また当たり前のようにモンスターの存在を受け入れる様子から、
・獣自体はここ最近現れたものではなく、もともと野生に存在した生物。
と考えるのが自然だろう。
つまり「古の時代の人々が言う『モンスター(獣)』は、種類こそ違うが私たちの世界の一般的な『野生動物』とほぼ同じ意味では?」と解釈できる。
この解釈は「モンスターは人間王が造り出した兵器」との情報と、一見矛盾するようにも思える。
しかしここで、
・諸々の描写から、七勇者と人間王が同時代で戦ったと考えられること。
・モンスターが野生と思えぬ行動を見せ始めたタイミングが前日譚1幕頃。
をふまえると、下記のように矛盾させずに両立する解釈が可能だ。
この頃は、もともと野生の獣を「モンスター」とも呼んでいたのでは?
人間王は、トキワタリ前日譚あたりのタイミングで、「新たに造り出した“生きた兵器”を、野生の獣に混ぜる形」で世界に放ち始めたのでは?
そもそも「“七勇者時代の一般的な人々”が指すモンスター」と「“真実を語るきらめき”が指すモンスター」の対象が違うのでは?(両者にとっての“モンスター”という言葉の定義がそもそも違う可能性がある)
このように同じ単語でも、時代によって、使う人によって、場面によって、意味が変わる可能性がある点には注意が必要だ。
代表的なものが「魔族」という言葉だ。前述したように、アーク2から精霊の黄昏に至る1000年の間に、新たな形の魔族(モンスターが進化した種族)が生まれたことから、「アーク2の時代と、精霊の黄昏の時代では、“魔族”と言った時の一般的な意味が異なる」と言えるだろう。
詳しくは都度後述するが、今回の考察では、
・「モンスター」という言葉の意味
・「魔族」という言葉の意味
を描写ごとに洗い直すだけでも、混乱を防ぎやすくなるはずだ。
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魔族とモンスターと人間の違いは?
「魔族」「モンスター」そして「人間」の違いはどこにあるのだろうか。
古の時代(七勇者の時代)から時代が進めば進むほど、これらの境目が混ざり合っていくような現象がいくつも観測される気がする。
アーク2の頃には、ガルアーノらの手によって、人とモンスターを混ぜ合わせたキメラが大量に生産された。精霊の黄昏の頃には、一部のモンスターが進化し、新たな形の魔族になった。しかも黄昏の主人公の双子たちは、人間と魔族の間に生まれた子供だという。
ここでは、魔族とモンスターと人間の境目が比較的に明確だったかもしれないと思われる古の時代の情報もふまえつつ、「魔族」「モンスター」「人間」の違いを考えていこう。
ここで注目するのは、精霊の黄昏に登場したべべドアだ。古の時代に人間王が作った最強最悪のモンスターであり、コレオプト神殿に封印されていた。
しかもべべドアには「人の感情を読み取る」という特技があり、素直な性格からか、読み取った内容をそのまま口に出してくれる。考察するうえでは、ストレートなヒントを大量に提供してくれる有難い存在といえるだろう。
そんなべべドアは、「人間」「モンスター」「魔族」の境目を意識した言動が非常に目立つ。以下は一例だ。
(特殊能力で操っていた人間が倒れたことに対し)わたしのパペット……こわれちゃった。人間って、こわれやすい。
(モンスターを操る直前に)今度のパペットは、もっと、じょうぶ。
(魔族の父と人間の母を持つダークへ)モンスターとは、ちがう。人間とも、ちがう。モンスターは話さない。人間は話す。でも、あなたは人間じゃない。あなた、ホントに魔族? 魔族って、みんなあなたみたいなの?
(デルマとヴォルクを目の前にして)あなたたち、魔族? 戦いの炎、ココロの底で燃えてる。紅蓮のほむら、蒼白のほのお。あざやかだけど、単純な色。ダークとは、ちがう。ダークのココロだけ、ちがう。なぜ? 不思議。魔族でもない。人間でもない。あなた、誰?
(言い争うデルマとカトレアを見て)真っ赤なイカリ。紫のユウエツカン。ダークじゃない魔族って、ホント……単純。
(デルマを見て)緋色の、シット。ポーレットより濃い色。やっぱり、魔族の方が、あざやか。
さらにプラム渓谷の防衛隊員たちは、このように言った。
魔族はモンスターとちがって言葉を話すし、かなり知能も高いと思います。なにしろ残忍で、ずるがしこいんです……
魔族の魔力は、モンスターのものよりずっと強力です。
これらの情報を総合すると、
・人間は壊れやすく、モンスターは人間より丈夫。
・人間と魔族は話すが、モンスターは話さない。
・魔族は、モンスターより魔力が強力で知能も高い。
・人間よりも、魔族のほうが心が単純。
この言葉はある意味、それぞれの本来の性質を表していると言えるだろう。
人間は、もともと神(創造者)が「星の力の運用者」として造った生命だ。もしかしたら彼らは壊れやすく、1人1人は非力な者が多いからこそ、言葉でのコミュニケーションが発達したのかもしれない。言葉を使って話すことで情報や思考を共有し、柔軟な協力が可能となれば、集団としての生存や繁栄につながりやすい。言葉を通じて知識や文化が蓄積・継承されれば、次世代でさらなる発展が期待できる。しかし時が立ち、文明が発達するにつれ、多くの人間が自然を破壊するようになってしまった。
科学と欲の力で「生きた兵器」として作られたモンスターは、その種が自ら望んでこの世に生を受けたものではない。相手を攻撃するという目的の為に、人間王の手によって人為的に誕生させられた。兵器だからか、科学力の賜物か、総じて体は丈夫。攻撃だけなら会話は不要だからか、話す機能は必要ない。獣のように本能に従って行動する面があるのも、欲によって生まれたからか。だが野生の獣とは違って主に従い、時に統率のとれた行動をするのは、人間王に植え付けられた「兵器としての性分」なのかもしれない。
精霊の黄昏では、ちょこと別に「モンスターの中でも高い知能とより強い魔力を持つ者」が進化した形の魔族が登場した。戦闘目的で造られたモンスターから進化した魔族は、人間のように他者を気遣ったり、駆け引きしたりしようとしない傾向だ。心や感情が単純だからまず戦おうとするのか、まず戦おうとする性質だから心や感情が単純なのか。戦えば強者と弱者が生まれるから「弱肉強食」が魔族世界の秩序となったのも当然の帰結。力を手に入れた強者が弱者を従え支配するという単純な掟のもとに暮らしている。
さらに精霊の黄昏の空中城では、人間王の命令らしきものに操られたべべドアが、ダークたちに襲いかかる場面もあった。べべドアの描写を見る限り、彼女は「人間王が作ったモンスターそのもの」の本質を持っているように見える。仮にそうなら、「人間王の命令には絶対従う」というのもモンスターの本質な可能性がある。
アーク2の四将軍たちは、このままいけば世界が崩壊すると分かっているはずなのに、人間王こと闇黒の支配者の命令に従い計画を進めていた。アンデルに至っては最後の瞬間まで命乞いすらすることなく、主の望む世界を実現すべく全力で動いていた。あれも同じような理由だろうか。
さらにアーク2では、モンスターが「本来、自分たちの主となる魔族の娘」を探して、ちょこがいるトココ村を襲ったと判明した。確かにアクラはモンスターを従えていた。モンスターが従うのは、人間王だけではないようだ。
ならばモンスターは、どういった者に従うのだろうか?
モンスターには以下の描写もある。
・闇の気がモンスターを呼び寄せたんでしょう(アーク2のラルゴ)
・モンスターは精霊力の強い所に集まるのよ(アーク1のククル)
よってモンスターは強い力に集まるという性質がありそうだ。
精霊の黄昏で、人間王は闇の精霊と「いにしえの闇の契約」を結んだとわかるなど、おそらく心から闇に満ちた存在だろう。アクラも強い闇の力を持つことが描写で分かる。モンスターは彼らに従おうとする。
アークも精霊力は高いはずだが、彼にモンスターが従うわけではなく、基本は敵対する描写ばかり。そしてアークが扱う属性は5大精霊に関するものばかりで闇は含まれない。よって「モンスターが人間王やアクラに従うのも、人間王やアクラが強い『闇の力』を持つからでは?」と仮説を立てられる。
精霊の黄昏では、人間の敵は「光に耐性を持ち、闇に弱い者」が大半だ。魔族の耐性は個人差こそあるが「光に弱い者」や「闇に耐性を持つ者」が圧倒的に多い。人間の傾向と、魔族の傾向が真逆というのは、特徴を考えるうえで興味深い事象だろう。
特定の属性に耐性を持つというのは、アーク2の属性法則ならその属性を持っているということでもある。この法則に従えば「精霊の黄昏だと、人間は光属性を持つ傾向にあり、魔族は闇属性を持つ傾向にある」という結論になる。これは精霊の黄昏の魔族も多少なりとも闇の力を持つ可能性を裏付けるのではないだろうか。
魔族は闇の力を持つ傾向にあるとはいえ、反対に「闇の力」を扱えても魔族とは限らない気がする。例えばサニアはアーク2で闇属性だが、アークRでの相性は魔導。諸々の描写からサニアは魔族ではないと思う。サニアにとっての闇は外部的な力として術で扱う範囲にとどまっている気がするのだ。
魔族にとっての闇は、本人に根付いた魂や心の一部もしくは全部で、本人から切り離せない根本に属するもの、本人を作りあげる本質として描かれている傾向にある気がする。
しかし、精霊の黄昏でモンスターが進化した魔族には、モンスターを従えている個体が、ほぼ見当たらなかった気がする。魔族同士で群れている個体(主も従も魔族同士のケース)が基本ではないだろうか。
精霊の黄昏では、魔界から来た魔族(セゼクたち)を、
・今の魔族の比ではなく、いにしえの物語にうたわれた伝説の魔族。
・究極の力(戦いを極めた身体と計り知れぬ魔力?)を持つ。
というように表現していた。魔族の中にも格があり、モンスターを従えるには、圧倒的な闇の力が必要なのかもしれない。
また精霊の黄昏のモンスター進化系の魔族は、あくまでモンスターの延長であり、魔界から来た魔族ほどの力はない、と確認できる要素と見ることもできるだろう。また逆に言えば「モンスターを従えるほど『強い闇の力』を持っていれば、上位の魔族なのでは?」との仮説を立てることもできる。
もともとモンスターは科学力と欲の力で作られた。欲というのは負の感情・エネルギーの一種で、心の闇/闇の一種とも捉えられる。べべドアから以下の台詞もあったことも、負の感情が闇に限りなく近いことの裏付けだろう。
(モンスターから進化した魔族であるデルマを見て)緋色の、シット。真っ赤な、イカリへ。そして、深紅の、ゾウオ。深まる血の色の、ニクシミ。黒い、黒い、闇色の、負の感情。
べべドアによれば、魔族のほうが感情が“濃い色”だと。色の性質で考えると、濃い色のほうが黒(闇)へと変化しやすいはず。また欲が闇の一種なら、欲から生まれたモンスターには、そもそも本質から“闇”が強く根付くことになる。ならば、自分の本質に近い闇に惹かれるのは自然の摂理か?
これは先の耐性の話と合わせて、そんなモンスターから進化した精霊の黄昏の魔族にも本質から“闇”が根付くことの裏付けにもなり得る。マリュスの塔でのダークいわく「オレたち魔族やモンスター」は「強い闘争本能を持ち、争わずにいられない心を持っている」と。これも闇の心に属する本質の部分ではないだろうか。
またモンスターには、アーク1のククルいわく「精霊力の強い所に集まる」という本能に根付いたような性質もある。しかし魔族にはこの傾向は観測できない気がする。これは「魔族は知能が高い」ということと無関係ではないだろう。魔族は力を好む傾向ではあるが、知能が高いからか本能のままに行動するのではなく、ある程度自分で考えて動いているように見える。
ただしモンスターには知能が高い者もいるし、べべドアの例を見る限り、全員が精霊力の強い所に集まろうとするとは限らないのではないだろうか。
そしてダークは、究極の力を得て最強の魔族へと進化し、魔族の王になろうとしていた。力さえあれば王になれる、これも魔族の真実だ。
対してモンスターは、どんなに力を持っていても基本は主に従おうとする。
ならばもしかして「本質的に、魔族は支配者となる素質を持ち、モンスターは従属者(支配される者)となる素質を持つのでは?」との仮説も立てられる。(ただしちょこの例を見るに、例え素質を持っていても、実際に主としてモンスターらを従えたいのかは別物だろうが)
これらの説をふまえて、シリーズ作品(特にアーク2)を振り返ると、興味深いものが見えてくる。詳しくは、この記事の考察3で後述しよう。
べべドアはモンスターだが……
精霊の黄昏で、べべドアの「人間」「モンスター」「魔族」の境目を意識した言動には、べべドア自身の分類に関する言動も多い。以下は主な発言だ。
わたし、魔族じゃない。わたしはモンスター……
(カトレアの「わらわたちの中で、人間に1番近い姿をしてるのはべべドア」という言葉を受けて)わたしはパペット……アヤツリ人形。ヒトのカタチをしたモノ。ヒトのマネをする……ヒトに似たモノ。
(カトレアに「殺されても知らんぞえ」と言われて)そんなの平気。わたしは、闇に、帰るだけ。ただ……それだけ。
(空中城でイービルアイ戦中に)あれは、わたしと同じ。……絶望の影。
(マルに「人間と魔族が争っちゃ、ダメ」と言われて)どうして? わたしたちは戦うために、生み出された。
わたしは、パペット。マスターの思いのまま。
(空中城でべべドアから黒い闇が吹き出すエフェクト)闇が……ああっ! イヤッ、やめて!(このあと、ダークたちをモンスターボックスへ誘う)
(モンスターボックスで、モンスターのアルティマを前に)これは……わたしの、しもべ。人間王さまからの、贈り物。
わたしは、べべドア。世界を滅ぼすため、人間王さまに造られた、モンスター。
わたしは、べべドア。アヤツリ、アヤツラレル存在。生まれし時から、人間王さまの……人形。わたしは、べべドア。すべてのモンスターの、司令塔。内なる力が……人間王さまが、わたしに命じる。ダークを倒せ、と!
またタチアナからは、以下の言葉も聞ける。
パペットマスター、べべドア。
別名、人形使い。いにしえの時代に封印された、ドールマスター系モンスター。
これらの発言を見る限り、べべドアについて以下が推測できる。
・古の時代、人間王に直接造られたモンスターである。
・分類はモンスターで、兵器としての自覚が強い。
・人間王と直接つながっており、直に命令を受けている。
・ヒトの形だが、あくまでヒトに似たモノ。人間ではない。
・モンスターでありながら、モンスターを操る存在。だが魔族ではない。
だがここで矛盾が生じる。べべドアはコレオプト神殿で言った。
モンスターは話さない。人間は話す。
べべドアは自分がモンスターだと度々発言しているが、べべドアは言葉を話している。これは「モンスターは話さない」という自身の発言に矛盾する。だがこれは、たぶん「(普通の)モンスターは話さないが、(限りなくヒトに近いモンスターである)べべドアは話す」ということではないかと思う。
べべドアは自分を「すべてのモンスターの、司令塔」とも言った。また真実の洞窟の話を総合すると「高い知能とより強い魔力を持つモンスターが、大精霊石の力で魔族へ進化した」とのこと。
おそらくべべドアは、高い知能とより強い魔力を持つモンスターである。話すことは高い知能の表れとも解釈できるし、先の仮説(モンスターを従えるには、圧倒的な闇の力が必要)が正しいならモンスターを操れるべべドアは圧倒的な闇の魔力を持っていることになるからだ。ならばべべドアは、魔族への進化要綱を最低限満たしていることになる。
さらに空中城でのべべドア戦後、倒れたはずのべべドアが復活。以下は復活後の台詞の抜粋だ。
わたしは、べべドア。
わたしをアヤツル糸、ぜんぶ、キレちゃった。わたし、いま……誰にもアヤツラレてない……みたい。
わたし、自由に、なる。自由になって、自分のココロ、手に入れる。クルシミも、イタミも、すべて手に入れる。いろんなキモチ、わたしのモノにする。それが、わたしの、ねがい。ただひとつの、ねがい。
カトレアが「人間王の支配を逃れ、自らの意思で動くとは……信じられんヤツじゃの」と話したこと、その後のべべドアは人間王(闇黒の支配者)と直接対峙しても一切支配されることが無かったことから、べべドアが人間王から解放されたことは明らかだろう。
そして、もし先の仮説(本質的に、魔族は支配者となる素質を持ち、モンスターは従属者となる素質を持つのでは?)が成立するとしたら。
モンスターを操り、人間王に操られることから、元々のべべドアはモンスターであり、魔族でもあるとも考えられる。
だが人間王に操られなくなったべべドアには、モンスターを操る能力だけが残ったことになるため、単なる魔族であるとも考えられる。つまり人間王の支配から解放された瞬間、べべドアはモンスターではなくなり、自由な魔族として生きられるようになったのではないだろうか。
個人的には、べべドア以外にも「モンスターであり魔族でもある存在」は少なくないと考えている。
例えば、精霊黄昏のドグザの正体は、ディルズバルド帝国によって人為的に造られた改造魔族であった。記憶も誇りも全てが人工的に与えられたものなのだと。ドグザについてこんな発言があった。
べべドア「鋼色の、冷たい、ヤボウ。計ったように区分けされた、ココロ。整い過ぎて、不自然。……ツマラナイ」「ドグザもパペット。人間にアヤツラレル存在」
ドグザ「オレが人間に協力するのは、最強になるための手段に過ぎん」
ダッカム「今まで造った改造魔族どもは、何も考えず、何も思わず、デク人形同然だった。だが、ドグザはちがう! 我がディルズバルド科学の最高傑作だ!」
べべドアの口ぶりだと、人間王に操られる元々のべべドアと、帝国のダッカムに操られるドグザは同じような存在、つまりモンスターだろう。そしてドグザが最強になる野望のために自ら突き進み、弱い者を平気で攻撃する様子はまさに魔族そのものだ。
ダッカムの言葉から、これまでの改造魔族は意思の無い存在、物も言わず命令に従うだけのモンスター的な存在だと思われる(物語での実際の描写もそんな感じ)。だがドグザは彼らとは違い、自身の“意思”で魔族として考え動いていた。実際は記憶も誇りも与えられた偽物だったが、それでもドグザの本質がモンスターであり魔族だと思われることにかわりはない気がする。
他の「モンスターかつ魔族」と思われる者に関しては、順次考えていく。
魔人とは?
アーク2のちょこ覚醒イベントのトココ村にて、こんなやり取りがあった。
ゴーゲン「おまえは!魔族か?」
アクラ(の記憶)「そう、わたしは魔人アクラ」
アクラの答えに対して、ゴーゲンが全くリアクションしなかったため、
・アーク世界では一般的に、「魔人」は魔族の一種、もしくは別名では?
という可能性を考えることができる。
そもそも一般的に「魔」という字は、
・人の心を迷わせたり、害を与えたりする悪鬼。
・あやしい技、不思議な術。
のような意味を持つ。
魔族以外に、モンスターを「魔」物とも呼ぶが、精霊「魔」法、自然「魔」法のような使い方もあるのを見ると、「魔」の字自体は「強力な魔力」「強力な術」ぐらいの意味だと考えたほうがいいかもしれない。
だが「魔」という字に、特定の用法に限って特定の意味が発生する可能性(魔族と魔物の共通点も考えると、例えば「闇の力」など)もある。例えばアーク2の炎の精霊は以下のように話した。
邪悪なるものにより我は連れ去られ ここで力をうばわれてしまった
(邪悪なる者とは)この国に取り入り、今や支配せんとするロマリア国の大臣アンデルであろう
(アンデルの背後には)さらに、この世界を魔の世界におとしめんとする力がある
後の描写をふまえる、炎の精霊のいう「魔」の意味はかなりの精度で限定できる。だがそれがセゼクたち魔界から来た魔族にも適用できるかは断言するのが難しい。
ジェネレーションでは、冒頭から「魔」に関する描写がある。(※後に『除霊聖典』とタイトルが判明する、除霊師の心得などが書かれた本の記述)
邪霊は 心の闇に生まれる「魔」 滅せず 消せず… 封ずることも かなわぬ ゆえに 人の子よ…心を澄ませ 怯えず 恐れず 揺らがぬ心で…汝の敵なる者の 心を映し… その弱さを 愛せ それが 魔を鎮める力とならん…
ある意味「ちょこ関連描写(特に2のちょこ覚醒イベント)」や「リーザ関連描写(特にラヴィッシュ周りやRの記憶浄化)」などにも通じる記述だ。
ジェネでは、エッダがラスボス戦前に、上記の内容を思い出す描写もある。その直前にこんな言葉があった。
あれが…聖杯… ものすごい悪意を感じる こんなにも沢山の憎悪が うずまいているなんて…(※ラスボスの『聖杯』を見たエッダの台詞)
さらにコレオプト族のスキルセからは、邪霊モンスターに対して以下の言葉もあった。
この世に生を受けたどんな生き物も… 邪悪な存在に なろうと 生まれてきたわけじゃない ただ なにかの拍子に ほんの少し… なにかが ズレてしまった だけなの それだけで 誰もが 邪悪な存在になりうるものなの
近い描写がジェネ作中でいくつも散見されることもあり、
・邪霊は心の闇に生まれる「魔」で邪悪な存在(=凄い悪意や憎悪を持つ)
とも解釈できる。先に紹介したアーク2の炎の精霊の言葉もふまえると、「邪悪」「闇」「魔」に切っても切り離せない関係が見て取れる。
さらに邪霊モンスターは、ビジュアル的にも黒いモヤのようなものに覆われている(ジェネのクラーフ島では「クロモヤ様」とも呼ばれる)。このビジュアルは、Rにて瘴気に蝕まれた人や魔物ら、そしてRの記憶浄化で闇に飲まれそうになったリーザの様子にそっくりだ。作中のさまざまな要素から、Rにおける瘴気は闇と非常に深く関連していると思われることもふまえ、その意味でも「魔」「闇」の関連が伺えるのではないだろうか。
シリーズ内を通して明言が見当たらないことをふまえると、いったんここでは「魔」の意味を保留するほうが良いだろう。
さて、仮に文字通り解釈するなら、
・魔族:「魔」の力を持つ種族
・魔人:「魔」の力を持つ人
となる。魔族と違い、魔人には「人という要素」が明言されているのだ。
では、人とは一体何だろうか。この問題は正直難しい。私たちの世界でも様々な説があるし、答えを出しづらいだろう。
とはいえアークザラッドの世界では、先も紹介したように「人間」「モンスター」「魔族」の違いが話に上がることもあり、これをヒントに考えることができるはずだ。例えば以下の仮説が立てられる。
人間の「形」が定義できる(べべドアは“ヒトのカタチ”のため)。
人間は言葉を喋る。
人間の体は壊れやすく、モンスターの体は人間より丈夫。
この中で魔族におおむね当てはまるのは「1」「2」だろう。「3」はあてはまらず、魔族はどちらかといえばモンスターの丈夫さを持つように見える。
先ほど概要でおさらいした魔族は、基本的に二足歩行で骨格は人間に近い。黄昏の魔族も含め四つ足で歩く魔族は基本おらず「人型」と呼べる範疇だ。またどの魔族も、だいたい当たり前のように言葉を喋る。
このような状況をふまえても、「魔人」(いうなれば「魔」を持つ人)が、魔族の一種、もしくは別名な可能性は十分にあると思う。
考察2:ちょこから考える魔族の特徴
魔界からきた魔族は、作中だと魔王セゼクとちょこ(アクラ)がいる。ちょこ自身も登場時に自ら「ちょこ、魔界からやってきた しょ~しんんしょ~め~の魔族だよ!」と自己紹介する場面がある。
彼らの一族は、精霊の黄昏で「伝説の魔族」として別格扱いされるなど、魔族の純粋な頂点として王道の性質を持つと考えられるだろう。
そのため、特に作中での描写が多い「ちょこ」がどんな性質を持っているか考えることは、魔族全体の性質を考えることにもなるはずだ。
ノルの発言から考えるちょこ
モンスターと違い、古の時代の「魔族」の直接的な描写はほぼ無いと言える。ただし、精霊の黄昏のべべドアやアークRのノルの発言を見る限り、魔族自体は古の七勇者の時代にも存在したと考えられるだろう。
アークRのちょことあそぼー!にて、ノルの魔族関連発言の内容は以下だ。
「(赤の神獣に勝った ちょこに対し)あんた、普通の人間じゃないわよね? ……もしかして魔族?」
「そういえば、昔似たような力を持つ魔族と戦ったことがあったわ。たしか、ゼゼクとか言ったかしら?」「まさか、あなたその血族?」
あわせて二人のノルとノルのキャラクエストから、
・ノルはアークRの3000年ほど前から異空間で眠りについていたこと
が判明するため、ノルが「昔戦った」のは3000年ほど前である確率が高い。
これらの発言から、少なくとも以下がわかる。
3000年前(古の七勇者の時代)には既に魔族が存在した。
ノルは魔族を知っているが、ちょこを見ただけでは魔族と判断できず。実際に戦ったことで「ちょこが魔族である可能性」に思い当たったようだ。(※おそらく、戦闘中に「ちょこの規格外の強さ」を知ったから)
ちょこは“ゼゼク”と似たような力を持っている。
さらに、”魔族”という種族の性質に関し、以下の3つを仮定できる。
魔族には、見た目だけなら人間と変わらない者がいる。
魔族には、普通の人間よりも規格外に強い力を持つ者がいる。
魔族の血族には、似たような力が受け継がれることがある。
少なくとも「1」「2」は、後に魔族を名乗る者の傾向にも共通する傾向のため、おそらく成立すると考えてよさそうである。
「1」は先の仮説(魔人は魔族の別名では?)ともリンクしてくる。実際に作中で、普段の見た目が人間そのままなカサドールやヘレーネが「自分が魔族だ」と宣言しても、誰も「魔族なのに人間の見た目はおかしい」などと主張しないことも裏付けになりそうだ。
「3」についてはサンプル数こそ少ないが、
・デンシモとデルマ(魔族の兄妹で特殊能力が近い)
・イーリアとリーザ(相性“魔族”の母娘で能力が近く、そもそもホルンで代々受け継がれている能力)
という2つの例を見る限り、成立しそうな気がする。
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黄昏時代の魔族と伝説の魔族
精霊の黄昏に多く登場する「モンスターから進化した種族としての魔族」から、「魔界から来た魔族」は別格扱いされているといえるだろう。
ピアンタ族のカトレアは、作中で以下を語った。
わらわたちは、奇跡の石の力により、モンスターから魔族へと進化したそうじゃ。そして、5つの奇跡の石が世界中にちらばっており、そのすべての力を使った者は……無限の力を得て、最強の魔族になれると言われておるのじゃ。
この世に生きとし生ける者の中で、最も強い者……魔族の名にふさわしい、最強の力を得られるそうじゃ。その力は、今の魔族の比ではなく、いにしえの物語にうたわれた伝説の魔族……魔王セゼクやその一族のごとき、最強の力を手に入れられると言われておりまする。
戦いをきわめし、その身体。はかり知れぬ、その魔力。その伝説の魔族に匹敵する力を持つ、最強の魔族への進化。5大精霊石の無限の力を使えば、最強の魔族への道が開けるのじゃ。
精霊の黄昏のメインシナリオでは、ダークやダッカムたちが「奇跡の石」こと、5大精霊ともリンクする「大精霊石」を奪い合っていた。
しかし魔界から来た魔族は、大精霊石が5つ揃うと手に入る“最強の力”と同等の力を最初から持つという……ダークたちとは明らかに格が違い過ぎる。
だが実際、作中で大精霊石が5つ揃った時に開いたのは、最強の魔族への道ではなかった。
物語上で5つの大精霊石が揃った時、ダッカムが得たのは復活した空中城と解放された“大いなる力”だった。ダッカム亡き後には人間王が、5大精霊石の力と世界を覆う負のエネルギーを利用して聖柩の封印を解き、闇黒の支配者として復活を遂げた。人間王は闇の精霊との契約にもとづいて「わが究極の力」を取り戻したという。
では魔界から来た魔族の力と、闇黒の支配者の力は、どう違うのだろうか。
アーク2で闇黒の支配者は闇属性で、使う特殊能力は「モラル崩壊」はじめ全て闇属性。アーク3での属性は確認できないが、「暗黒の閃光」「混沌の衝動」のように説明から闇に属するらしい能力を使い、他の属性らしき攻撃は確認できない。精霊の黄昏でも物語の描写から完全なる闇の者と考えられる。闇黒の支配者の力は、純粋なる「闇の力」以外に考えられない。
魔界から来た魔族も、闇の力を持つことは間違いなさそうだ。セゼクについては詳細不明だが、少なくともアーク2のちょこ覚醒イベントでは、トココ村の墓石に「我、古の記憶と闇の力 アクラ・エルヴァスをここに封じ~」との記載あり。アクラ戦後にはゴーゲンが「(記憶石に)かつてのお主の中にあった闇の心が封じられている」と発言した。他にも闇に関する描写がいくつもあるため、ちょこもアクラも闇の力を持つと確定できるのである。
しかし、ちょこ覚醒イベントで戦うアクラ(の記憶)は風属性魔法の「ウィンドスラッシャー」も使う。ちょこ自身は作品にもよるが、アーク2なら6属性全ての魔法を習得可能だ。
ちょこやアクラと闇黒の支配者の決定的な力の違いはここにある。ちょこもアクラも様々な属性の力を使うのに対し、原則、属性付きの力だと闇黒の支配者は闇の力のみを使うようなのだ。
さらに精霊の黄昏には以下の台詞がある。やや抽象的だが、「セゼクやちょこたち魔界から来た魔族」と「闇」との関係性を言い表す表現だろう。
べべドア「(セゼクたち魔界から来た魔族のことを)黒に染まれぬ、黒。闇に帰れぬ、闇。それが……かつての魔族」(精霊の黄昏)
闇の精霊といにしえの闇の契約を結んだという闇そのものな闇黒の支配者を色で表すなら、おそらく“純粋な黒”だ。
これもまた魔界から来た魔族と闇黒の支配者の力の違いといえる気がする。
ちょこに見る魔族と闇との関係
先ほど「魔族には闇が根付いているのでは?」との仮説を立てたが、少なくとも、ちょこと「闇」は非常に関係が深いことは確定だ。
アーク2のちょこはユニットとして無属性であり、闇を含む全6属性の独自魔法をすべて習得可能だった(追加習得含む)。
だが“かくせい”することにより、強力な闇魔法のヴァニッシュを使えるようになるが、かわりにヴァニッシュと追加特殊能力以外が使えなくなってしまう。ちょこは覚醒後、普段と違って技が「闇」寄りになるのだ。
また、アーク2のペイサス図書館の書籍「アララトスで発見された古文書」の記述から、ちょこは少なくとも500年以上生きていることが判明。さらに精霊の黄昏でも元気に登場することから、シリーズを通して1500年以上は生きていそうな描写がある。魔族のヘレーネも300年生きているとのこと。相性が魔族のグエルは“自分は死ねない”と話していた。
ある意味、ちょこは不死の存在であるといえる。アークザラッドでは、シリーズを通して不死と闇との関係があることから、これらも「『魔族』が不死に近い性質を持つことは、魔族の根幹に『闇』があることの裏付けにもなるのでは?」とも考えられる。
アークRの戦闘の相性だと「魔族」は「不死」に有利だ。仮にどちらも闇に関連するとしても、魔族のほうが上位種である可能性も考えられるだろう。
なお、自然と精霊(自然が破壊されると力が弱まる存在)によりバランスが保たれるアーク世界では、前提として「五大精霊≒正義」だと思われる。
よって「アーク世界にとっての悪」とは「自然に感謝することなく自然を破壊する存在」がひとつの答えとなる。五大精霊がそう主張しているからだ。
そして自然を破壊する者は、総じて「闇の力」に染まりやすい傾向にある気がすることから、「悪≒闇なのかも?」との仮説を立てることができる。
では、闇に近いと思われる「魔族」も、“悪”に近い存在なのだろうか?
アーク2のちょこ覚醒イベントで出会うアクラ(の記憶)は一歩間違えば“世界の敵”となるところだった。魔界から来た魔王セゼクは「この美しい世界を守るために、我らが夢を叶えるために愚かなる人間を支配しようとしていた」とのことで、彼女はその意思を継ごうとしたのだ。
五大精霊の話を聞く限りでは、アーク世界だと「助け合う」ことが正しく、「支配する」ことも悪であるというように思える。その基準が合っているなら、アクラ(の記憶)は悪ということになるだろう。
さらにアクラ(の記憶)は、ちょこへ「私はお前の様に人間を信じることは出来ぬし、今の魔族のやり方が正しいとも思わない」とも語る。物語の描写をふまえると、「ちょこは人間を信じている」ということになり、ある意味では、本来の五大精霊(闇を除く)の理想に近い考え方とも思える。
作中の描写でも、明確に「アクラの記憶は闇を強く持つ存在」だと分かる。
アーク2のトココ村で、ちょこの“父”であるラルゴは、「私はまだ息のあった娘の記憶を記憶石に転写して、それを魔族の娘だったあの娘に移し変えたのが今のちょこです」「私はちょこを人間として育てる為に、あの娘の中の闇の力を取り出して石(墓石)に封じました」「あの墓石から流れ出した闇の気がモンスターを呼び寄せたんでしょう」と語った。
アクラ(の記憶)戦後、ちょこは記憶石を手に入れた。ゴーゲンによれば「この石の中には、かつてのお主の中にあった闇の心が封じられている。今のお主はアクラの中にあったほんの僅かな光の心なのじゃ」と。さらにちょこが記憶石を吸収後、ゴーゲンは「お主は立派に成長していた様じゃのう。闇の心に負けぬ程に」とちょこに言った。
この会話から、以下が分かる。
・本来のアクラは、闇の心を強く持ち、僅かに光の心も持っていた。
・本来のアクラは、闇の力も強く持っていた。
・分裂後のちょこは、アクラの中に僅かにあった光の心。
・アクラの記憶は、アクラの中にあった闇の心も持つ。
・分裂段階では、記憶側に含まれていた闇が、光よりも強かった。
・ちょこ(光の心)は分裂後、闇の心に負けないほど成長した。
またアクラの記憶石(闇の心を含む)をちょこが取り込んだが、ちょこの芯の部分は変わらなかったことから「覚醒イベントを経て、ちょこは光と闇の心の両方を持つ存在になったのでは?」と考えることができる。
そしてアーク2のちょこ覚醒イベントで蘇ったセゼクが「アクラ」と呼んだのは、闇の心や力を含むアクラの記憶ではなく、闇を含まないと思われるちょこのほうだった。
さらにセゼクは、アクラ(の記憶)へ「お前はアクラではない。お前は、ただの記憶の集合。成長する事も、新しい物を生み出す事も出来ぬ」といった。裏を返せばセゼクは「アクラ本体(魔族であるちょこ)は、成長したり新しい物を生み出す事が出来る」と主張しているのだろう。
諸々の描写を見るに
・本来のアクラは闇に近い存在ではあるが、闇そのものではない
・覚醒イベント後のちょこは、光を成長させ、闇と共存させたタイプの魔族
だと推測することができる。
さらに言えば、精霊の黄昏では、さまざまな魔族が出てくる。だが大半は、モンスターが進化した派生形の魔族だ。ちょこは精霊の黄昏で「本物の魔族」として唯一別格扱いされ、「ちょこの性質が魔族のスタンダードに近い」と思われる。
よって魔族自体の性質としても
・本来の魔族は闇に近い存在ではある
・だが必ずしも闇に飲まれているとは限らない
と考えられるのだ。
考察3:アーク2の“今の魔族”とは?
アーク2で見られる一連の「ちょこ覚醒イベント」では、アクラ(の記憶)から、魔族に関する様々な情報を聞くことができる。中でも気になるのが、先ほども紹介した以下の発言だ。
私はお前のように 人間を信じることはできぬし 今の魔族のやり方が正しいとも思わない
アクラ(の記憶)はそれ以上語らないし、他で補足もないため断言はできないが、おそらく下記のように解釈するのがベストではないかと考えている。
人間を信じる:ちょこは人間を信じるからこそ、アークたちと共に戦う。
今の魔族のやり方が正しいとも思わない:アクラは今の魔族に属さない。
今の魔族:ロマリアを操縦し、人間同士を争わせ世界を破滅に導く者達。
これなら「アクラ(の記憶)はアーク側にもロマリア側にも属さない第三勢力」との見方ができるため、世界情勢をふまえると最もしっくりくる。
アーク2時点のロマリアの支配体系は、
・表向きは「ガイデル」が統治。(野望は自分が世界の王になること)
・裏で「闇黒の支配者」が支配。闇黒に直接仕える「四将軍」が、ガイデルを操りつつ世界各地を統治。(真の目的は闇黒の支配者を復活させること)
という状況である。
諸々総合的に判断し、“今の魔族”の主な候補は以下な気がする。基本的にはロマリアに属しながら、世界を破壊しようと暗躍している者たちだ。
暗黒騎士カサドール
“新しき人類”たち
魔物に成り果てた古の人間たち
パレンシアタワーを任されるネクロマンサー
闇黒の支配者(人間の王)
私は、この大半が“今の魔族”に該当すると考える。詳しく見ていこう。
今回の“今の魔族”考察の方向性
ここまでの考察1と2を総合すると、「人間」「魔族」「モンスター」には以下の特徴があるとの仮説が立てられる。
仮説/人間の特徴
①ヒトの形を定義できる(おそらく二足歩行ベースの体型)
②言葉を話す
※モンスターより体が壊れやすい傾向。
仮説/魔族の特徴
①言葉を話す
②本質的に闇が根付く
③支配者となる素質を持つ
※モンスターに比べると魔力が強く知能も高い傾向(黄昏の魔族)。
※ヒトに近い「魔人」や、見た目がヒトと変わらない魔族もいる。
※黄昏のモンスター進化魔族はベースが兵器のため、強い闘争本能(争わずにいられない心)を持つ。他の魔族に闘争本能があるかは未確認のため個体によるかも。
仮説/モンスター(人間王が造った『生きた兵器』)の特徴
①言葉を話さない(べべドアなど例外あり、知能が高い上位種は喋る?)
②従属者となる素質を持つ(基本は人間王に従う)
③強い闘争本能を持つ
※人間より体が丈夫な傾向。
※アーク1で「精霊力の強い所に集まる」と言われているが、べべドアの例を見るに全ての個体に当てはまるわけではなさそう。
今回の考察では、それぞれを「上記の特徴(仮説)に照らし合わせ、どれぐらい当てはまるか」でも、その者の分類を考えていく。
候補1:暗黒騎士カサドール
“今の魔族”の最有力候補は、やはり自ら「魔族」と名乗ったカサドールだ。
彼には影武者も多いが、影武者戦はモンスター(ファイアゴーレムとフレッシュゴーレム、カサドールいわく“木偶のゴーレム”)とのものになる。ピラミッド戦では普段の人間姿から変身し「暗黒騎士カサドール」という名を確認できるため、おそらく本人だろう。
アーク1のカサドールにも、ただの人間らしからぬ描写はあった。ただしアーク1の彼は影武者(ゴーレム)だったのだが、アーク2も見る限り、あの言動は実際のカサドールの非道さそっくりそのままだったような気がする。
「人の命など何とも思わない、モンスターよりもひどい男」と言われる。
戦闘時にファイアゴーレムに変化する。
アーク2では、以下の台詞があった。
「我々魔族はな…お前らバカな人間が、世界を血と欲でそめ、破壊すればするほど…この世界で力を得る事ができるのだ」「貴様等のぜいたくが我々の血となり、貴様等の争いが我々の肉となるのだ」
「我がロマリアの巨大戦艦の雄姿だ」→「お前ら人間が造り上げた 殺し合いのための道具の最高けっさくだぞ」
あわせてアーク2のカサドールには、
・実際に魔物を使役する。
・自身も暗黒騎士の姿に変身する。
など、普通の人間としては有り得ない描写が見られる。
この一連より、カサドールは
・ロマリアに所属している。
・人間を下に見ている。
・自分は人間に含まれず、人間と別物の“魔族”であると主張している。
・少なくとも既に人間ではない。
と考えることができる。
またカサドールは、エルクたちと戦う際に「貴様等の首と引き替えに ロマリアの将軍のしょう号をもらうとするか」と話している。実際にロマリアの巨大戦艦を自在に動かしている描写もあるあたり、
・ロマリア内でも相当の地位に登っている(ただし四将軍より下)。
と思ってよいだろう。
アーク2時点のロマリア上層部は、四将軍はじめ“人ならざる者”がほとんど。そんな中で潰されることなく出世し、実際にアリバーシャとバルバラードの戦況を狙い通り悪化させるほどの実力派な“策略家”であるカサドール。もしピラミッドでの作戦が成功していれば、彼も案外、ロマリアの将軍になっていたかもしれない。
カサドールを、先に挙げた魔族の特徴(仮説)にあてはめると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇 本人が闇属性で、闇属性の特殊能力「デス」を使える。しかも闇黒騎士を名乗るモンスターに変身しているあたり、本質的に闇が根付いていそう。
③支配者となる素質を持つ:〇 多くのモンスターを従え、さらに今の地位で満足することなくロマリアで将軍に成り上がろうとしている。
3つとも当てはまるあたり、本人の言う“魔族”が自称ではない確率が高い。
候補2:“新しき人類”たち
アーク2の序盤、インディゴスに登場するグルナグは、こう自分を称した。
モンスターの力をこの身にやどした、新しき人類の一人
この言葉だけでは曖昧ではあるものの、
・グルナグが、ガルアーノの手の者である。
・ガルアーノが、人間を改造し、モンスターと人間の「合成」をしている。
などの情報を総合すると、
・グルナグは、ガルアーノにモンスター改造手術を受けキメラ化した人間
だと思われる。
よって私は、グルナグの言う“新しい人類”も、アクラの言う“今の魔族”に含まれると思う。つまり「元は人間だったが、ガルアーノによってモンスター改造手術され、手術が成功したキメラ」のことである。
以下は、アーク2での主な該当者だ。(この他にも多数存在する)
アルフレッド:シャンテの弟。ガルアーノの実験でキメラ化。2回目の戦いでは、モンスターのジャイアントバットを召喚して操っている。アルフレッドは無属性だが、操るジャイアントバットは闇属性。
グルナグ:ガルアーノの配下。闇属性。自分を「モンスターの力をこの身にやどした、新しき人類の一人」と称し、モンスターの強盗を従える。
ジーン:切り裂きジーンと呼ばれる手配モンスター。闇属性。実はエルクとともに白い家に収監されていた少年で、ガルアーノに改造された。1回目はメイジとオーク、2回目はホブゴブリンを従えて襲ってくる。
ガルアーノ:ロマリア四将軍の一人。様々な人物をキメラ化し、自身もキメラとなった。1戦目は偽物、2戦目は変身した本物相手で、共に闇属性。戦闘時はもちろん、物語上もモンスターの配下を多く従えている。
ザルバド:ロマリア四将軍の一人で、闇属性。オフィシャルカード情報では、ロマリアの軍人一家に育ったサラブレッドで、愛国心ゆえに、モンスター軍団を率いる者にふさわしい力を得るためキメラ化手術を受けたと。
この5名の“新しき人類”を、先の仮説/魔族の特徴と照らし合わせると、
①言葉を話す:〇 5名のほか、元は人間だったキメラ化手術(人間とモンスターの合成手術)の成功者らしき存在はだいたい喋れる。
②本質的に闇が根付く:〇 4名は闇属性。アルフレッド自身は無属性だが闇属性のジャイアントバットを従えている。またそもそもガルアーノらが開発した人工モンスターには闇属性のイービルアイのDNAが活用されていることから、キメラ化手術を受けた者全員の本質に闇が根付くと思われる。
③支配者となる素質を持つ:〇 モンスターを従える描写を5名に確認可。特にガルアーノとザルバドは多くのモンスターを配下に持っている。
中でも高確率で“今の魔族”に含まれそうなのが、ザルバドとガルアーノだ。彼らはロマリア四将軍として、ロマリア内でも裏から世界を支配する立場にある。その体は既に人間ではなく、どちらかといえばモンスターに分類できる類だろう。
そして「貴様等の首と引き替えに ロマリアの将軍のしょう号をもらうとするか」との発言より、カサドールは、ロマリア内で四将軍よりも下の地位にいることだけは確定できそうだ。
仮に、先の仮説(本質的に魔族は支配者となる素質を持ち、モンスターは支配される者となる素質を持つのでは?)が成立し、自称魔族のカサドールが本当に魔族だとしよう。もし四将軍のザルバドらが単純なモンスターに分類できるなら、魔族のカサドールよりも上位の支配階級となり矛盾する。
諸々の描写をふまえても、ロマリア内でカサドールより立場が上で、他者を駒として動かす支配階級の者は、魔族の確率が高そうだ。
ただし全員というわけではない。少なくともロマリア王ガイデルは、あえて手術をせずに人間のまま残され、その野心と性格を闇黒の支配者復活のために利用されたと思われるなど例外はいる。
また手術の対象者全員を確認できたわけでないこともあり、一概にキメラ化されたから魔族だとは考えにくい。少なくとも手術が失敗した者が物言わぬモンスターになっていそうなケースも作中の描写にある。あくまでガルアーノのキメラ化手術が成功した者の中に、“今の魔族”に含まれる者がいそうな気がするという形だ。
例えば、アークRのエルク記憶浄化で描かれた過去の白い家には、ガルアーノから「出来損ないのキメラ」と呼ばれる存在がいた。物語内では「モンスター」と称され、言葉を喋ることもない。これは魔族とはいえないだろう。
こういう作中描写より、仮に「人間とモンスターの合成に成功すると、広義の魔族になる」とするなら「ガルアーノによるキメラ化手術が成功すると、基本は魔族になり、失敗すると基本はモンスターになる」とも考えられる。
もしそうなら「シリーズを通した魔族とモンスターの違い」をふまえても、アーク2でのガルアーノの行動を分析できる。
ガルアーノの行うキメラ研究
ここでは仮に、前項で考えた仮説(ガルアーノによるキメラ化手術が成功すると基本は魔族になり、失敗すると基本はモンスターになる)が成立するとして、詳細をもう少し掘り下げてみよう。
そもそもガルアーノの最終目的は、闇黒の支配者の復活と世界の支配(破滅)だ。しかし四将軍同士の会話を見るに、ガルアーノはその過程で「自分が手柄を立てる」ことにこだわる節が見られる。さらに以下の会話がある。
闇黒の支配者「『空中城』を動かす為には人間どもの負のエネルギーが必要なのだ」「そのための準備はどうなっている」
ガルアーノ「アークの邪魔により白い家はつぶされたものの キメラの研究は大変な成果を上げております」「すでに、スメリア、ミルマーナには 兵士として配備をすませております」
これは殉教者計画(世界を負の感情で満たす計画)につながる会話で、そのための兵力としてもガルアーノが生み出したキメラが活用されていた。またガルアーノ自身の他の仕事(邪魔者を倒すなど)など、ロマリアではキメラやモンスターを労働力としてフル活用している節がある。
ガルアーノ自身も「ロマリアは私の造ったキメラのおかげで最強の力を手に入れたのだぞ!」というあたり、ガルアーノの研究自体は、ロマリアの増強のためのものでもあるといえる。手柄を立てるには、より強い“駒”を兵士として生み出すほうが結果を出しやすいだろう。
そしてガルアーノは、世界各地から「特別な力を持った子供たち」を連れてきては、研究施設に集めて実験を行っていた。実際の施設の様子から、研究内容は施設によっても異なっているように見える。
ではなぜ、白い家では特別な力を持つ子供を素体に選んだのだろうか。
子供を選んだ理由のひとつに「教育やコントロールのしやすさ」はあるだろう。エルク記憶浄化では、研究員に対し「(村から連れてこられたばかりのエルクを)白い家に送りコントロールできるよう教育しろ」と指示していた。実際には子供の記憶を消し、様々な“教育”を行っていたわけだが、これが大人なら子供ほど簡単にコントロールできないはずだ。
そして精霊の黄昏では、魔族へ進化したのは「高い知能とより強い魔力を持つ一部のモンスター」と判明した。人間は言葉を喋るし、そもそも高い知能を持った生物だ。さらに特別な力を持つことは強い魔力を持つことでもあるだろう。実際にエルクは生まれつき炎の魔法を使えた。もしかしたら「潜在的に特別な力を持つ人間」は魔族への進化要綱である「高い知能と強い魔力」を満たしているから、人工的に広義で魔族のようなキメラを作る素体として適していたのではないだろうか。
となるとリーザに対し「魔女になってもらう」と言っていた際の「魔女」は本当に「広義での魔族の女」という意味にもとれる。
なお本編では研究対象の“数値”を計る描写が多々見られた。何の数値かは詳しく語られなかったが、上記をふまえると、案外シンプルに「魔力」なのかもしれない。
またオフィシャルカードでは以下の記載が確認できる。
イービルアイの説明「ガルアーノやアンデルが開発したあらゆる種類の人工モンスターには、このイービルアイから採取されたDNAが雛型として活用されている」
マンティコアの説明「獅子の身体、コウモリの翼、ドラゴンの尾を持った合成生物」「ガルアーノが初期の段階で製造した人工モンスター」
スタンゴーレムの説明「研究推進のためにガルアーノが何度も捕獲を試みていた」
SA-100の説明「捕獲されたスタンゴーレムから解析されたノウハウをもとにロマリアで開発された戦闘用量産型ロボットの初期ロット」
グレートドラゴンの説明「このドラゴン種は非人型モンスターの原種としてガルアーノも喜んで登用しており」
ワイバーンの説明「基本的性質は外見に似合わず温厚だが、ガルアーノの薬物洗脳によって凶暴化した個体が人間を襲うようになっていた」
ガルアーノは強力な手駒を増やすべく、人間とモンスターの合成や人工モンスターの作成だけではなく、各地で研究用モンスターの捕獲や解析、戦闘用ロボットの開発、捕獲したモンスターの洗脳による手駒化など幅広く行っていたようだ。
本編の他の描写を見ても、ガルアーノは時期によって少しずつ研究内容を変えているようだ。仮にもし最初から「強力な手駒を作るための正解」を知っていたら、こんなに色々手を出さない気がする。
様々なサンプルを使ってパターンを変えながら試行錯誤し研究を行う中で、「特別な力を持つ子供がキメラの素体として最適」という結果を得たからこそ、ガルアーノは白い家を作ったのだろう。
アーク2のジーンによれば、幼いエルクが白い家から脱出した後、残された子供たちは次々に改造されたとのこと。そしてガルアーノは「用済みになった者」をすぐにキメラの素体として改造しようとする節がある。
エルクが脱出したのも施設の子供が改造されたのを見たことがきっかけだった。もしかしたらこの時点で既に、白い家の子供に対する目ぼしい研究はほぼ終わっており、あとはキメラの素体にするぐらいしか使い道が無かったのかもしれない。
例外はサンプルMことミリルで、人間の体のまま洗脳される形にてそのまま残されていた。ミリルだけはガルアーノにとって有用だったからこそ、改造することなく残していたと考えられる。改造せずに運用するほうが有用だったのか、それとも研究したい事項が残っていたのか。いずれにせよ、白い家をエルクやアークたちが襲撃した際、彼女は“廃棄”されてしまったのだが。
ただしミリルについて、ガルアーノは「かわりのサンプルなど、いくらでもいる!」と迷いなく断言する場面があった。ガルアーノのキメラ研究においてミリルはあくまで通過点に必要なサンプルに過ぎなかったのだ。
ガルアーノのキメラの完成形こそ、おそらく自分自身だ。彼は飽くなき力の追求の果てに自らの肉体をも改造してキメラ化。作中でこう言った。
「(異形に変身した状態で)これが、最も強く、そして最も美しい究極のキメラだ!」
「私は何も面白がったり、ロマリアの侵略のためだけにキメラ研究をしていたわけではない」「人々にこの、より強く、より美しい姿を与える神の仕事を代行していたのだ…」
ガルアーノ本人は、本心からこれらの言葉を発しているようだった。だが、オフィシャルカードの説明ではこう書かれている。
その歯止めの効かない欲望を体現するごとく様々なモンスターの要素が取り込まれており、一個体生物としては著しくバランスを欠く構造となってしまった。
見るからに醜悪なその姿は、ガルアーノの心の中を映し出した造形といえるのかもしれない。
美しいどころか公式の紹介で“醜悪”と言われるあたりどんだけ……元からガルアーノの美的センスが壊滅的なのか、それとも力を追い求める中で「強い者こそ美しい」と思い込むようになってしまったのかは分からない。だがこの時点での他の敵に比べると、強いボスなことだけは確かだ。
仮にガルアーノの生み出す“新しき人類”が魔族なら、本人いわく「究極のキメラ」と言うあたり、ガルアーノ本人こそがこの時代の人造魔族の完成形なのだろう。
精霊の黄昏で、ダークはじめ「魔族たちの中でも野心が強い者」たちはとにかく力を求めていた。膨大な研究を進めて究極のキメラを加勢させようとしたガルアーノと重なる部分があるような気がする。
候補3:魔物に成り果てた古の人間たち
アーク2ラストダンジョンとなる空中城では、1人1人が単独で挑まねばならない試練が存在する。短いながら、どれも各々の「闇」や「過去」などを描く濃い内容となっているだろう。
ここで注目したいのはヂークベックの試練だ。モンスター(ウォーロック)が扮した男とヂークが喋る形で進行するこの試練内で、以下の描写がある。
モンスターが扮した男いわく、ヂークを作ったのは「古の人間」で、人間に力を貸すヂークが「今戦っている相手」。
ヂークいわく、「古の人間達」は人間の欲望に同調して復活した。魔物に成り果てた彼らは世界を破壊し、自らの欲望の世界を築こうとしている。
ヂークいわく、「我を作った人間が求めたのは同調と共存だ」「お前達に仕えるなどとんでもないわ」
さらにアーク2のペイサス図書館の書籍「いにしえの時代と人間の王について」では、以下の記述がある。
人間の王は精霊や神をもしのぐ最高の力(科学力)を手にした。
そして王はすべての世界を手に入れるため、科学と自らの欲の力で生み出したモンスターを使い神に挑戦をした。
そのことを憂いだ精霊達は、自分達が選んだ人間に聖柩を託し、世界が崩壊する前に人間王の意志である闇の力を封印するように命じた。
精霊に選ばれた七人の勇者は使命を果たした。
そしてアーク2のアミーグの神の塔で、ヂークベックは言った。
(機神兵は)はるか古の時代、七勇者を抹殺するために造られた戦闘兵器
我は敵の機神兵から七勇者を護るために造られた
アークRのヂークベックのキャラ紹介をふまえ、ヂークが作られたのは古の七勇者の時代で間違いないはず。人間の王がモンスターを作ったのも同じ時代のため、上記の情報を総合して考えることができるだろう。
これら及び他のアーク2の描写から、以下を推測することができる。
・古の人間の中には、同調と共存を求める者(ヂークの製作者ら/七勇者)と、世界を破壊し自らの欲望の世界を築こうとする者(人間王ら)がいる。
・アーク2時点でアークたちが対峙しているロマリアの者の中には、現代の人間と、魔物に成り果てた古の人間がいる。
魔物に成り果てた古の人間にも、現在のロマリアを裏から操る“今の魔族”に含まれる者がいると考える。
アーク2の時点で、「魔物に成り果てた古の人間」が誰かを具体的に挙げるのは難しい。なぜなら、“もともと自分は古の人間だった”と公言する者が見当たらないからだ。
だが、ガルアーノによる改造を経ておらず、先に挙げた魔族の特徴(仮説)を満たすと思われる者なら2名存在する。
ヤグン:ロマリア四将軍の一人で、ミルマーナ首都の軍本部に派遣されている。闇属性。オフィシャルカードによれば、正体は「闇黒の支配者がこの世界に遣わした猿の化身の魔物」で「意思表示はもっぱら太った禿げ男の形をした操り人形を介していた」とのこと。
アンデル:ロマリア四将軍の一人で、スメリアの中枢に入り込んでいる。闇属性。オフィシャルカードによれば、正体は「もともとは肉体を持たない闇の思念体」。人間に憑りつき、その肉体を40年以上支配し続け、アンデルという名は憑りついた青年の名をそのまま使っているとのこと。
猿の魔物のヤグン本体がもともと古の人間だったかは不明だが、古の人間王由来の魔物だということだけは確定だろう。
先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わせてみると、
①言葉を話す:〇 海底油田では人間体ヤグン無しで喋り、アークに「その声…ヤグンか!?」と言われるあたり、間違いなく猿がずっと話している。
②本質的に闇が根付く:〇 闇属性で、闇の特殊能力「ペトロウィンド」を使う。完全に闇に染まった闇黒の支配者が直々に遣わしたあたり、闇に縁がある存在といえるだろう。
③支配者となる素質を持つ:〇 物語上ではミルマーナの事実上トップとして、多くのモンスターを従えているほか、自身も戦闘で実際にモンスターを操る様子を確認できる。
アンデルは人間に40年以上前から憑りつく闇の思念体だという。オフィシャルカード情報でガルアーノは48才とのことで、キメラの研究を40年以上前からやっていたとは思えない。他にも諸々をふまえ、アンデルはガルアーノに改造されていないと思われる。
またアンデルは、北極の塔での死亡直前、「今度は我々の世界を復活させるのだ」との発言があった。ガルアーノたち現代の人間ベースのキメラからは“我々の世界”という表現は出てこなかったように思う。
先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇 闇属性で、闇の特殊能力「デス」を使う。そもそも闇の思念体のため、むしろ闇そのものだといえる。聖柩に蓄えられた負のエネルギーでパワーアップするという闇の性質も確認可能だ。
③支配者となる素質を持つ:〇 物語ではスメリアの事実上トップとして、多くのモンスターを従えているほか、自身も戦闘で実際にモンスターを操る様子を確認できる。
他にガルアーノによる改造を経ておらず、古の時代に縁があるモンスター(先に挙げた魔族の特徴を満たしているかは個体による)に、以下もいる。
イービルアイ:オフィシャルカードに「闇黒の支配者がこの世界に送り込んだ比較的低級の“遣い魔”」「この“遣い魔”が人間に憑依することで、俗にいわれるキメラの最初の原形が誕生した」との記述あり。
スタンゴーレム:オフィシャルカードに「古の戦乱において大破した装甲騎兵が悪霊の力を借りて復活した姿」との記述あり。
封印の守護者:ヤゴス島の遺跡でヂークベックの封印を守っており、グロルガルデの配下。機神の戦いのあった時代を考え、古の存在だと思う。
ガーゴイル:オフィシャルカードに「魔界から現世に出現した遣い魔」「古の時代からその姿は頻繁に目撃されており」との記述あり。ヤゴス島では上記の封印の守護者とともにエルクたちを襲ってきた。
アークデーモン:スメリアのシオン山に封印されていたモンスター。アーク1 のククルいわく「シオンの炎」が3000年も燃え続けているとのことなので、間違いなく古の時代に縁があるだろう。
グロルガルデ:古の時代に造られた機神。モンスターといえるかは不明だが、古に造られた人形のべべドアがモンスター扱いされている以上、モンスターの一種ともいえるだろう。
大精霊石での進化を経ていないと思われる古のモンスターであるべべドアが、精霊の黄昏で、ある意味“魔族の一員”として扱われている(カトレアの言葉より)のを見ると、ここに挙げた中に「モンスターであり魔族でもある者」が含まれる可能性は十分にあるはずだ。
候補4:パレンシアタワーを任されるネクロマンサー
アーク2における「ネクロマンサー」というモンスター自体は、割と序盤でも出会えるし、仮にラヴィッシュで仲間にしてもメイジ系の最下位でしかなく、クラスチェンジを3回もできる。
しかし物語で出てきたこのネクロマンサーは、アンデルからパレンシアタワーという要所を任されているうえ、モンジを復活させてトッシュを揺さぶり、アークの母ポルタを人質にアークたちと対峙し、脱出しようとしたところの足止めに一役買って結果的にヨシュアを道連れにするなど、ロマリア内でもかなりのポジションを担当する実力者といえるのではないだろうか。
以下は、パレンシアを見渡す丘で、モンジを墓から復活させた際の、このネクロマンサーの発言を抜粋したものだ。
魔界の王よ、今こそ再び、この男に命を吹き込みたまえ
(自分は)魔界の王に仕える者
(モンジへ)力を自ら封じたまま、哀れにこの世を去ったのでは、その魔性の血が騒がぬか?
さて、どこまで自分の、心の暗黒にあらがえるかな?
さあ、ゾンビとして復活し、今度こそ、思いの限りその技を試すがいい
魔界の王と聞いて、まず浮かぶのは魔界から来た魔族の1人である魔王セゼクだろう。だがセゼクはとっくにこの世を去っていることから、別に“魔界の王”がいる確率が高い。だが現在の“魔界の王”が誰であっても、このネクロマンサーも“今の魔族”に含まれる可能性がある。もっと詳しく見ていこう。
以下は、このネクロマンサーによって復活したモンジの発言の一部だ。
わしの体は、邪悪な術に支配されている
(この術を破る方法は)わしの体に流れ込む暗黒の力を断つこと…
奴等は、わしが心の底に押さえつけていた強さへのしゅう着心を利用し わしを操っていた
全ての人間の持つ「負」の感情につけ込み、モンスター化させるのが奴等のやり方…
さらにオフィシャルカードでの、一般的なネクロマンサーの紹介がこちら。
属性/闇
生前に高度な魔術と俗世間への煩悩の双方を併せ持ったために、死後に浄化されずに変化した姿
メイジなどと同一視されがちだが、潜在的に持つ能力は桁違いである
杖には本物の人間の曝首が仕込まれており、この首の主の魔力が強ければ強いほど、ネクロマンサーも大きな力を得るといわれている
先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わせると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇 ネクロマンサーは闇属性。物語上でモンジを蘇生させ支配する“邪悪な術”や“暗黒の力”を扱うなど、どう見ても闇の者。
③支配者となる素質を持つ:〇 実際に蘇らせたモンジを支配したほか、パレンシア兵(実際は既にモンスターかも)や多くのモンスターも配下に従えていた。ただしアンデルに対し敬語を使うあたり、ロマリアにおける階級は四将軍アンデルより下だろう。
そもそも、このネクロマンサーは死んだはずのモンジを蘇生している。
アーク2の3000年ほど前を描くトキワタリノ方舟 前日譚2幕では、死者復活の魔法は、当時のオルサスでも禁忌とされる太古の術なのだという。ゴーゲンの普段の言動を見る限り、魔法にまつわる禁忌は3000年前も現代もそう大差ないはずだ。となると禁術であるはずの死者蘇生魔法を使うネクロマンサーは、倫理的に相当やばい部類と考えられる。
またウルトゥスは、もともとゴーゲンの弟子であり、ゴーゲンいわく「すばらしい資質」があり「ゆくゆくはこのワシをも超える魔導士となる」といわれる凄い術士だ。
魔導の才あふれるウルトゥスでも、太古の禁術である死者蘇生の魔法をすぐに復活し完成させられず、不完全な実験(死者をゾンビとして中途半端に蘇生している)を繰り返している描写を確認できる。
なのにアーク2のネクロマンサーは、ほぼ生前に等しいといえる姿でモンジを復活させた。なぜ「あのウルトゥスでさえ苦労した死者蘇生魔法」を扱えるのだろうか?
本編で理由は語られないが、例えば、以下のような可能性を推測できる。
ネクロマンサーがもともと生前から太古の術の使い手だった:ウルトゥスが復活させようとしている死者蘇生魔法は、禁じられた太古の術。一般的なネクロマンサーは「死後に浄化されずに変化した姿」ということで、生前は人間王やウルトゥスよりさらに古い存在だった可能性もある。
ウルトゥスの時代から3000年も経つと死者蘇生魔法が復活した:3000年の間に研究がすすめられ、死者蘇生魔法の扱い方が確立された。ただアーク世界の状況を見るに、仮に確立されたとしても秘密裏の技術だろう。
魔界の王が力を貸し、本来なら不可能な死者蘇生を可能にした:「魔界の王よ、今こそ再び、この男に命を吹き込みたまえ」と言って術を発動したし、正直これが最も現実的な気がする。シリーズで死者蘇生を実現したのは「Rの改ざん者(自称・根源の神、七勇者らを蘇生)」や「2のアクラ(セゼクを蘇生)」ぐらい。アンデルよりも階級が下と思われるあのネクロマンサー単体で実現できると思えない。
いずれにせよ、オフィシャルカードでも「高度な魔術を持つ」「メイジとは潜在的に持つ能力が桁違い」などと書かれているし、モンジを蘇生したあのネクロマンサーが只者ではないことだけは確かだろう。
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候補5:闇黒の支配者(人間の王)
アークザラッドではシリーズを通して黒幕として立ちふさがる作品が多い闇黒の支配者も、“今の魔族”に含まれる可能性があると思う。
そもそもアーク2では、明らかにセゼク以外をさすと思われる「魔王」という言葉が使われている場面がいくつもある。以下は抜粋だ。
ククル「これは、この世界の将来をかけた人とモンスターの、そして、神と魔王の戦いなの」(トウヴィルにて)
ヨシュア「力を得たその剣が魔王の封印となる」(空中城にて)
アーク「(闇黒の支配者へ向かって)魔王よ」(空中城にて)
私が探した限りでは、セゼク以外の「魔王」という呼称は、どう解釈しても「闇黒の支配者」のことを指すものばかりだった。
また先に挙げた候補4のネクロマンサーが「魔界の王に仕える者」を自称していた。彼はロマリアの手の者であることから、ほぼ間違いなくここでいう“魔界の王”も闇黒の支配者のことだろう。
さらに魔族の特徴(仮説)に照らし合わせると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇 闇黒の支配者の名の通り、むしろ闇そのもの。
③支配者となる素質を持つ:〇 闇黒の支配者の名の通り、支配する側。
考察4:アークRの相性“魔族”とは?
続いて注目するのは、アークRの属性要素にあたる項目「相性」で“魔族”に分類される者たちだ。↓の画像はプレイアブルキャラのみの一覧であり、物語の戦闘ではさらに多くの敵の相性が“魔族”であることが判明している。
だがアークRの作中で「魔族」を名乗るのは、ちょことヘレーネの2人だけ。相性「魔族」への分類基準は明かされていないし、少なくともアーク2から登場しているリーザはこれまで魔族という描写はなかったはずだ。
ここではアークRで「相性が“魔族”な者」と「実際に魔族に分類される者」との共通項を探っていこう。具体的には、ここでも先に挙げた仮説の魔族の特徴(↓)に照らし合わせて考えていく。
①言葉を話す
②本質的に闇が根付く
③支配者となる素質を持つ
※モンスターに比べると魔力が強く知能も高い傾向(黄昏の魔族)。
※ヒトに近い「魔人」や、見た目がヒトと変わらない魔族もいる。
※黄昏のモンスター進化魔族はベースが兵器のため、強い闘争本能(争わずにいられない心)を持つ。他の魔族に闘争本能があるかは未確認のため個体によるかも。
ヘレーネ
アークRの物語で「魔族」と判明するヘレーネは、キャラ紹介で「300年生きる魔女」と紹介されている。だがヘレーネの相性は、魔族ではなく「魔導」となっているのも見落とせないポイントだろう。
プレイアブル登場時には、キャラ説明を意図的に隠された画像で紹介されるなど、とても意味ありげな演出がおこなわれたのも印象的だった。
長生きしてるという意味では、だいぶ新参者ながらちょこと共通だし、魔女と呼ばれるあたりはリーザに通じるものもある。さらに本編で覚醒ちょこに出会ったヘレーネは、ずいぶん興奮しているようだった。彼女が機神に心酔しているのも、もしかしたら“魔族”であることに関係するかもしれない。
描写も数多いことから、魔族の内面についての考察も進められるはずだ。
白い追憶 Part.7にて、ヘレーネは「(魔族だから)人の心なんてどうでもいい」と語る。ロストレガシー Part3で人間のアレクと“魔族”のヴィオラは、人の言葉で分かりあうことができなかった。ただしこのあたりは個人差が多いこともあり、あくまで推測がベースになってしまうが。
ヘレーネを、先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇
③支配者となる素質を持つ:〇 作中で自作の機神などを従えている。
特にヘレーネは、闇に関する描写がとにかく多い。
・プレイアブル時に闇っぽいスキルを使う。
・★3~4ホームボイスで「世界がこのまま闇に堕ちれば良いのに」。
・★4→★5の進化ボイスが「闇の真髄を見せてあげる」。
・ガチャの★5登場ボイスが「宵闇の中で、会いましょう」。
・覚醒ホームボイスで「闇が好き」と話す。
・6章では改ざん者側につき、瘴気動力源にザムザ改良型を作ったと判明。
などから、心の底から闇が好きで闇の力を使っていそうな雰囲気だ。さすがは自分で魔族だと称するだけあるだろう。
ヴィオラ
ロストレガシー Part2.5でも語られた通り、ヴィオラはもともと人間だったが、ロマリアで“大崩壊”に巻き込まれ、後に発生した瘴気の影響でキメラ化したのだという。
物語の描写から、ヴィオラは、
・“蜘蛛さん”と融合しキメラ化した可能性
が考えられる。
アークRでは瘴気で人がモンスターに変わる描写は数多いが、ヴィオラのように相性が「魔族」になるとは限らず、むしろ他の相性になった例のほうが多数派だ。つまり相性が「魔族」になったヴィオラは特殊なケースだろう。
さらにヴィオラが話した“蜘蛛さん”は、相性が魔族だったとは限らない。むしろ他の相性だった確率のほうが高いと考える。
なぜならロストレガシー Part2.5の戦闘(高難度)では、“蜘蛛さん”と同じ見た目のモンスターであるアラクネが登場するのだが、その相性が「技芸」だからだ。ちなみにこの見た目の蜘蛛は、1章5幕8話(奈落の従者)、凶敵襲来(アラーネア)にも登場し、そのどちらも相性が「自然」となっている。
ヴィオラがもともと普通の人間だったらしいことをふまえると、「瘴気の影響で蜘蛛と融合しキメラ化する過程で、何らかの原理により相性が『魔族』に変化したのでは?」考えるのが自然だろう。
先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇
③支配者となる素質を持つ:〇 ロストレガシー Part3ではヴィオラが歌でモンスターを操っていると語られるほか、超級の戦闘でも実際にモンスターたちを率いる様子を確認可能。
ヴィオラに闇が根付くと思う理由は2つある。
まずはアヴィスとの類似点が多いこと。アヴィスは、トキワタリノ方舟で、ウルトゥスが死んだ肉体を復活させて作ったゾンビの1体である。
以下は、アヴィスとヴィオラの似ている点だ。
・攻撃エフェクト(アヴィスの通常攻撃、ヴィオラのマリスベル)
・スキルの効果(猛毒付与、敵攻撃力低下などの状態異常に関わるもの)
・体の色合い(黒とピンク)
相性こそ異なるが、体の色合いも似ているなど類似点が多いことから、ヴィオラとアヴィスは「体の構成」「技の原理の一部」が近い可能性がある。
作中ではウルトゥスがアヴィスを作った際に(不完全だが)「闇」の魔術を使ったようだ。さらにアヴィスは、オートスキルで「闇の力」を持つことからも、アヴィスは闇に近い存在だと考えられるだろう。となれば「技のエフェクトが近いヴィオラも、闇に近いエネルギーを使っているのでは?」と考えられる。
さらにヴィオラは、瘴気によってキメラ化したと。私は「瘴気が闇を含む性質を持つ物質」だと考えるため、この点でも闇と縁がある存在だと思う。
ダーラ
アークRの物語だとダーラは“人間の姿”しか登場していないが、プレイアブルキャラのダーラは物語中とは似ても似つかない“異形の姿”となっている。
キャラ図鑑の★4と★5の内容を総合すると、復讐心と自身の欲の暴走によって次第に肉体と精神をキメラに乗っ取られた結果、人間の尊厳を捨て、異形、つまり邪悪な魔人へと変わったらしい。
先の「魔人とは?」で考えたとおり、「アーク世界では一般的に、「魔人」は魔族の一種、もしくは別名」という可能性は十分にありうると思う。
先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇
③支配者となる素質を持つ:〇 もともとブラキアの首長の一人で、アルディア帝国と組んでさらなる権力を手に入れようとするとする野心を持つ。
ダーラは、復讐心と欲の暴走でキメラに乗っ取られ、邪悪な魔人へ変わったのだという。アーク2で「闇黒の支配者の力は、憎悪や怨念、強欲やねたみといった負の感情を取り込んだもの」という話があった。これはダーラの魔人化の原動力そのものであり、こういった負の感情が「闇の力」を呼び寄せるのはアーク世界で自然の摂理ともいえる。
ダーラ覚醒時のスキル発動ボイスで、
・「この呪いで貴様は永遠に苦しむ事になるのだ」
・「瘴気に押し潰されるがいい」
と言うことから、
・呪いを発動すること
・瘴気を使うこと
も確定だ。
そういう意味でも闇に近い存在だろう。
月光
トキワタリノ方舟 前日譚3幕の描写から、のちに七勇者となるグラナダの弟でミナルディアの王子だった「シン」という男が、王位継承を巡るクーデターに失敗して追放され「月光」を名乗り始めたらしいと推測できる。
プレイアブルキャラとしては「月光」という名で実装され、後に実装された特定衣装に変更することで「シン」としての姿を確認することができる。
プレイアブルキャラとしては珍しく、月光は衣装変更によって相性とタイプも変わる。物語の描写から、これは実際の彼に起きた変化と紐づけて考えることができるだろう。
3000年前のシンとしての姿の時の相性は「武勇」で、明らかに人間だった。
それが王位継承にまつわる一連で国を追い出され、月光を名乗り始めた結果、《異端者》というタイプがつき、相性は「魔族」へと変化した。相性変化後も一見すると人型っぽいが「ちょこのように人型の魔族」も存在するし、彼の肉体の本質が大きく変わっている可能性も否めない。
なお現状タイプとして《異端者》を持つのは月光とウルトゥスの2人のみ。
・ウルトゥスは、あの闇黒の支配者に関わる者であることがほぼ確定。
・トキワタリノ方舟関連描写より、月光とウルトゥスが古の七勇者の時代の世界崩壊の一端を担う重要人物と思われる。
・月光は、兄グラナダへ対し、“負”に分類できる感情を抱いている。
・現代の月光は「神の手」の一員として、改ざん者の作戦に加わっている。描写からおそらく瘴気も体内に取り込んでいると思われる。
などの点も見逃せない。
仮に、月光の瘴気が相性“魔族”への変化に関係するなら、ヴィオラの“魔族”化との共通点になりうるだろう。
ヴィオラ・ダーラという2名の例から考えるに『アークRの相性では「魔族」に「人から異形へ変わるタイプの魔人」も含まれるのでは?』という仮説が立てられる。
仮にこの仮説が成立するなら、月光も相性が“武勇”から“魔族”に変化したことから、見た目は人間でも中身が異形に変わっている可能性も考えられる。
もしかしたらアーク2のカサドールも、ダーラたちと同じように、人が異形へ変わった魔人っぽい魔族なのかもしれない。もともと人の自然進化系魔族なら、純粋モンスターやガルアーノ産キメラとはまた少し立ち位置が異なる可能性もある。
月光を先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:〇 瘴気(私は闇に関係する物質だと思う)を取り込んでいる。
③支配者となる素質を持つ:△ 兄のグラナダを倒し、自身がミナルディアの王になろうとしていた。だが月光と名乗るようになってからは他の魔族と違い、自身がモンスターを従える様子は確認できず、自分のやりたいこと以外に興味すら持っていないようにも見える。
6章での改ざん者(自称・根源の神)とのやり取りを見ても、『神の手』の中でも少々例外的な立ち位置にいるのかもしれない。
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グエル
キャラ図鑑によれば、グエルは血を浴びて力を蓄える特殊体質により不死、
つまり死ねない体質である。だがキャラクエストによれば、グエルの母は帝国に殺されたらしい。つまり母はグエルと違って“不死”ではないのだ。
同キャラクエの話をふまえると、おそらくグエルの能力は、改造ではなく自然に備わったものだろう。そして彼の相性は「不死」ではなく、「魔族」に分類されている。“魔族とは?”を考えるうえで興味深い分類事例だろう。
グエルを、先の魔族の特徴(仮説)に照らし合わると、
①言葉を話す:〇
②本質的に闇が根付く:△ 闇を持つと思われる者との共通点は非常に多いが、グエル自身に闇の力があると断言できる要素が見当たらない。
③支配者となる素質を持つ:△ 少なくとも作中で、何らかを従える様子はない。だが誰かに従う様子もない。
グエルのボイスには、「身体が獲物を欲している」「時々理性を失いそうになる」「血が俺を呼んでいる」「戦いの中でしか生きられない」など、闘争本能の高さを思わせる台詞が多い。これは黄昏のモンスター進化系魔族との共通点となるだろう。
また「体質により不死」というあたりは、ちょこやヘレーネたち若いまま生き続ける魔族を思わせる。
リーザ
グエルと似たような境遇ではないかと考えられるのがリーザだ。能力に目を付けられ狙われたという意味でも、グエルとリーザは共通である。
ただしリーザはエルクに助けられたが、グエルは実際に囚われ過酷な実験を受けることとなった、という点では異なるといえるだろう。
先ほど、ちょこと闇の関係性をふまえて考えた仮説(魔族は闇に近いが、闇に飲まれているとは限らない)を補足する存在がリーザだと思う。
リーザはアーク2で属性が「地」であった。アークRのリーザの技も、ラヴィッシュ(2の説明では、愛する心がすべての悪意を奪い去る地属性技)含め「アーク2で地 or 無属性だった技、もしくはその延長にあると思われる技」ばかり。闇に近い要素が表立ってはいない。
だがアークRのリーザの相性は「魔族」である。つまりリーザは、ちょこと同様に「闇に飲まれていない魔族」の性質を持つ可能性が考えられるのだ。
特にアークRでは、ちょことリーザの能力を重ねるような描写が多い。もっとも顕著なのが魔物との心の通わせ方だろう。関連描写はいくつもあるが、リーザのキャラクエスト、ちょことあそぼー!が分かりやすいはずだ。
リーザの最も特徴的な能力は、ラヴィッシュをはじめとするホルンの民の力であり、モンスターと話ができるのもそのためだと思われる。アークRの親愛なる人へでは、リーザの持つホルンの民の力が「人を操る」のではなく「相手の心を理解する能力」との言及もされていた。
さらにアーク2のトココ村では、以下の会話があった。
ラルゴ「確かに、あの娘は人間ではありませんが あの娘は人間と同じ心を持っています」「リーザさん、あなたなら分かるでしょう」
リーザ「彼らの心の中にもわずかですが 優しい心があります」「ただ彼らにとってそれは 生き抜くためには 邪魔になってしまう・・・」
ちょこは魔族である。だが“人間と同じ心”を持つ。
そんなこと、普通の人間にわかるだろうか。「相手の心を理解する能力」という特別な力を持つリーザだから理解できたのではないだろうか。
ところで、リーザの持つホルンの民の力が、アークRで「相手の心を理解する能力」と明かされた際に気になったことがある。
べべドアの能力、リーザの能力に妙に似てないか?
精霊の黄昏に登場するべべドアの主な能力は以下だった。
・アヤツリ:相手を強制的に操れる。
・感情の読み取り:相手の感情を読み取って色に例える。
リーザは「獣使い」とも呼ばれ「対峙していたはずのユニットを味方につけることができる」という点ではべべドアと共通だ。アーク世界を見る限り、この手の能力は非常にレアであることも分かるだろう。
さらにべべドアは作中では共に同行する魔族の感情を勝手に読み取っては、たびたび気持ち悪がられている。ある意味でこれも、普通の人間から見たホルンの力への反応と近いかもしれない。
先ほど考察した通り、べべドアは限りなく闇に近い存在だ。ならばリーザも闇に近いといえるのだろうか?
ここで注目するのは、リーザの持つホルンの民の力について、アークRでヨーゼフ(リーザの祖父)が語った内容だ。
ホルンの魔女が恐れられているのは人の心を操るためと思われているがそうではない。お前の中に眠る能力は相手の心を理解する能力なのじゃ。
負の感情を鎮め心を通わせる。それこそがホルンの民の真の力なのじゃ。
べべドアは相手を強制的に操ったり、相手の感情を読み取っては素直に口に出してぶつけたりするのが基本。
対してリーザは無理やり操るなどせず、相手の心に寄り添って意思を通わせようとする。そもそもラヴィッシュはアーク2の特殊能力の説明で「愛する心がすべての悪意を奪い去る技」とされていた。感情に関わる能力であるという点はべべドアとの共通事項になるが、向き合い方が全く違うのだ。
リーザの相性が“魔族”ということもあり、モンスター(魔族?)であるべべドアと能力の根本は近いかもしれないが、現状の方向性は異なると考えてよい気がする。(とはいえ精霊の黄昏では、べべドアが人間のマルに心を開くことで揺れ動くエピソードも描かれていたし、彼女の力の使い方の方向性が大きく変わる可能性もありうるだろう)
もちろんリーザに闇の素養が無いと断言するわけではなく、表立って見えないだけだろう。浄化編で描かれたように、リーザの心にも闇はある。彼女には「一歩間違えば闇に染まる寸前」のような描写がいくつも存在した。
特にリーザ浄化編 第5話のガルアーノ(リーザの心が生んだ存在)とのやり取りは、彼女の心の闇を丁寧に紐解く内容である。物語の中でも実際にその一連を「私の心が生み出した闇」とリーザが認め立ち向かう描写があった。
リーザが闇に飲まれた姿に近いのがリーザ浄化編のイーリアだろう。
彼女はリーザの母だが、闇に飲まれ変わり果てた姿(“ホルンの魔女”化?)として登場した。
物語の描写に加え、敵登場時の相性やロールやスキルがリーザに近いことから、そもそも「イーリアは、リーザと限りなく能力が近い」と考えられる。そのためリーザの“魔族”としての性質を考える参考になるはずだ。
イーリアの描写で注目すべきは、主に以下である。
・言動が憎しみに染まりきっている。
・モンスターを“操る”能力はそのまま持っている(ポリィが従っている)。
・ラヴィッシュが、ダメージを与える技に変化。
・相性が「魔族」。
言動が憎しみに染まっているあたり、浄化編でリーザが「心が生み出した闇(ガルアーノ)」に言われたままの状況である。闇が憎しみなど負のエネルギーを好むこと、憎しみに染まったダーラが魔人化したこともふまえ、“魔族”としての闇堕ちを思わせる。
闇堕ちしたイーリアもホルンの民の力は持っているようだが、リーザとは方向性が違いそうだ。憎しみに染まった状態で従えているからか、ポリィまでイーリアと同じ目つきになっている(闇に染まっている?)。あわせて本来は愛の技であるはずのラヴィッシュが攻撃技に変わっている。
おそらくリーザもイーリアのように、闇堕ちする可能性を十分に持っており、それが「心が生み出した闇」として浄化編で明確に描かれたものと思われる。だがリーザは闇に飲まれることなく打ち勝った。
アーク2のちょこ覚醒時ではゴーゲンが「お主(ちょこ)は立派に成長していた様じゃのう。闇の心に負けぬ程に」といった。物語の描写を見るに、リーザも成長したからこそ、この結果をつかみ取ることができたのだろう。
考察5:アークザラッドにおける“魔族”とは?
ここまでの議論を総括すると、アークザラッドにおける魔族には、いくつかの定義があるように思える。
主な狭義の魔族として以下がある。
・魔界から来た特定種族(セゼク、ちょこたち)
・モンスターが上位進化した特定種族(ドゥラゴ族、オルコ族など)
ここまでは作中の描写で確定だ。
そして広義の魔族は、
・強い闇の心(闇の力)が本質に根付く知的生命体
ではないかと私は考えている。
この仮説が成立するなら、モンスターは闇の力が本質に根付くが知性を持つとはいえず、基本は魔族に含まれない。だが、強い魔力と高い知能を持つべべドアのような例外(モンスターでも魔族でもある)もいるようだ。
魔族は強い闇の心(闇の力)を持つからこそ、結果として闇の性質である破壊衝動や支配欲を持つ者が多い。だが、ちょこはじめ光の心と共存させる例外もいるため、魔族全員が支配欲を持つとは限らないのではないだろうか。
前提として、アークザラッドではシリーズを通し「心の闇に打ち勝つ描写」が多く描かれている。個人差はあるが、闇は誰の心にも巣食うものであり、それは“魔族”に限ったことではない。
しかし
・闇の心に染まりきった者(ヘレーネ、カサドールなど)
・一歩間違えば闇の心に飲まれそうな者(ちょこ、リーザなど)
に関しては魔族に多い印象だ。
巨大な闇が根付くからこそ常人より闇に飲まれやすいのか、実際に魔族化する過程で闇に飲まれたらしき者(ダーラなど)もいる。
対して、ちょこやリーザのように、生まれながらにその力を持つ“魔族”の中には「闇に飲まれることなく光と共存させた者」も見られるようだ。
サニアが魔族化していないと思われる背景
そういう意味では、アーク2にて闇属性なサニアも、一歩間違えばダーラのように魔族化していた可能性があったかもしれない。
サニアが身につけた“闇”は生まれつきのものではない。サニア記憶編での描写のとおり、元々は恨みとは無縁の光輝く存在だった。それが両親を殺され、国を追われたことで復讐に燃え、闇の呪術に手を出したと考えられる。
いわば呪術は、人を呪う負の技だ。キャラ図鑑によればダーラは復讐心と自身の欲の暴走で魔人化しており、戦闘中に使うスキルは、彼女自身の発言から呪いの技だと思われる。
だが、王女の誇りも捨て、人の幸せもあきらめて、ヤグンへの復讐を果たしたサニアの周りには仲間がいたからこそ、生きる目的ができたのだという。
復讐心はいわば負の感情の一種で、アーク2の描写をふまえても闇に近いエネルギーであるのは確定だ。サニアは結果として「仲間のおかげで闇に染まることがなかった」つまり「魔族化にはいたらなかった」のかもしれない。
現にアークRでサニアと同じ《復讐者》というタイプを持っているヴァリオは、瘴気をまとう描写もあるなど、かなり危ういところまで足を踏み込んでいた。案外、アークRのタイプ《復讐者》は魔族の闇に近いエネルギーを心の奥底に持っている人々なのかもしれない。
またダーラは、復讐心に加えて欲が強かった。サニアにも祖国を取り戻すなどの目標はあるが、“自分のため”以上に“他人のため”という部分が強く見られることもあり、ダーラの欲とは方向性が大きく異なるように見える。
アークRでは、記憶浄化にてアーク2以前のサニアの物語が描かれたほか、サニアのプレイアブルキャラが2バージョン実装された。
高潔なる王女 サニア:ミルマーナを追われた直後の姿と思われる。槍を使い、どう見ても闇ではない(むしろ光属性っぽい)魔術を扱う。ロールがタンク(黄色いアイコン)であることも光っぽさを感じさせる。
サニア(通常):★3がアーク2の姿(ミルマーナを追われてから呪術を学んだ後の姿)、★4が中間で、★5がアークRの姿(アーク2から10年後)である。闇の呪術を扱い、攻撃には藁人形やカードなどを使う。ロールがデバッファー(紫のアイコン)で敵の能力を下げるあたりはまさに闇。
闇の呪術の習得による攻撃スタイルの変化を伺うことができるはずだ。
精霊の黄昏に登場するミルマーナのマルは、サニアの子孫と思われる。
彼もサニアと同じく特殊能力の「シャッフルショット」を習得するのだが、なんと属性が正反対である。
アーク2のサニア:シャッフルショットが闇属性
精霊の黄昏のマル:シャッフルショットが光属性
これにより、
・ミルマーナに伝わる占いの能力が光由来である可能性
・サニアは呪術によってそれを闇属性に上書きして使っている可能性
などが考えられるだろう。
もしかしたらサニアが完全に闇に染まらなかったのは、サニアが強い意志と良い仲間を持っていたことに加え、アルフレッドと同じくサニアがもともと光属性の適性を持つ可能性も背景にあるのかもしれない。
アーク2でも、闇黒の支配者の闇の力を1人で抑え込んでいたのは、精霊の力を借りた光属性のククルだった。戦闘中の相性をふまえても、光と闇は対極であることが明らかだ。
また恵みの精霊は、後の七勇者であるグラナダが治める精霊国ミナルディアを守護していた。それが3000年ほど後のアーク1や2ではミルマーナにあるということは、ミルマーナの王族であるサニアも精霊と非常に縁が深く、強い力を持つ存在の可能性が考えられるだろう。
考察6:まさか“あの人”も……?
――さぁ、大変だ!!
ここまで名前が上がっていない人物の中に、なんと、
ウルトゥスのように死体を動かし操る術を使い、
ちょこのように魂を“対象”に定着させようとし、
リーザのようにモンスターと心を通わせ、
魔族とゆかりが深いと思われる「闇」属性持ちで、
どう見てもモンスターっぽい姿
な者がいるのである!!!
さらに、その者は、
ぺイサス図書館の本で「その姿を見た者は一瞬にしてその命をたたれる」とまで言われるちょこの姿をはっきりと知っている
という可能性まで考えられ……
……そう、
ピエール・ベロニカである。
初登場はアーク2。以下のギルド仕事4つで姿を確認可能だ。インディゴスのギルド仕事3つの元凶であり、後にバルバラードで姿を見ることができる。
『地下から怪しげな歌声が…』:地下の下水道にて、ネクロマンサーとして、死体を術でスケルトンへと変えて襲い掛かってくる。エルクたちに敗北し、ドールマスターらしき姿に変身。「死体はもういじくらん」と約束したうえで「人形ならよかろう?」と去っていく。
『廃屋の人形師』:廃屋にドールマスターとして居着く。「優秀なドールマスターは優秀なネクロマンサーでもある」と浮遊霊を人形に憑依させようとして失敗。助けてくれたエルクたちの言葉で反省し「僧侶にでもなって世のため人のために生きるとするか…」と去る。ピエール・ベロニカがつくったらしい人形の中にちょこによく似た人形(ギミック付)が存在。
『廃墟の謎の集団』:世のため人のために神の教えを説いてまわるつもりが誰にも耳を貸してもらえず。結果、破戒僧として「我々のすることは、全て神の名によってゆるされる」と怪しげな集団に犯罪を助長するような行動をとっていた。エルクたちに倒され、「これからは人には関わらず魔導の研究にいそしむとしよう」とメイジらしき姿に変身して去っていく。
『面接試験あり、山賊お断り』:テュケの洞窟で、メイジらしき姿で静かに研究。そのかたわらで、傷だらけになって海岸に倒れていたドラゴンを「生き物の命の重さに、人間もドラゴンもないからの」と看病している。
さらにアークRでは、エルクのキャラクエストにて姿を確認可能だ。
『闇の胎動』:モンスターばかりの坑道跡に居を構え、人形を作って愛でつつ、「人形を作るのには金がかかる」とあちこちの悪党に情報を売っては小銭を稼ぐ。ドールマスターっぽい姿に戻っている。エルクいわく「ただの三下の悪党だが、いろいろと情報を知ってる奴」で「ちょっとおかしな奴であまり人前に出たがらねぇ」と。エルクに“黒騎士”の情報を提供。
魔族に関する定義を考察したあとで改めて振り返ると、ピエール・ベロニカという存在、あまりにも情報密度が濃すぎやしないだろうか?
先ほど考察5でお話した通り、広義の魔族は、
・強い闇の心(闇の力)が本質に根付く知的生命体
ではないかと私は考えている。
仮にこの仮説が成立するなら、ピエール・ベロニカは広義で魔族、もしくは限りなく魔族に近い存在の可能性がある。理由は以下だ。
アーク2で闇属性である:3回遭遇する戦闘すべてで闇属性と確認可能。
そもそもビジュアルが人型モンスター系:アーク2での4形態+アークRでの1形態のすべてが人型モンスターそのもの。基本のモンスターは人間王(闇黒の支配者)が生んだ「闇が根付く存在」との仮説が成立するなら、ピエール・ベロニカにも闇が根付く可能性がある。
ネクロマンサーとして死体を操る術を使う:アーク2では他にモンジを復活させるネクロマンサー(魔界の王に仕える者)が存在し、その術はトキワタリノ方舟でウルトゥスが使った禁術の完成形に近い。偉大なネクロマンサーになろうと、似た死霊術(しかもエフェクトまでモンジ復活時と近い)を使うピエール・ベロニカも、魔界に縁を持つ存在の可能性がある。
優秀なドールマスターは優秀なネクロマンサーでもあると、浮遊霊を人形に憑依させようとした:物語では失敗して浮遊霊(デスフレイム×4)にピエール自身が襲われかけたが、そのへんにいる浮遊霊を呼び出すところまでは成功。普通の人間が浮遊霊を呼び出すなんてできるわけない。
ちょこの姿を知っているかもしれない:ぺイサス図書館の本で「その姿を見た者は一瞬にしてその命をたたれる」「実際見た者がいない」とまで言われる純粋魔族のちょこと同じ姿の人形を作っている。単に偶然が重なっただけかもしれないが、もしかしたら「自身が魔族に近い存在だからちょこの姿を知っていた」という可能性も捨てきれない。
何かとすぐ“闇堕ち”しかける:アーク2『廃墟の謎の集団』では、もともと世のため人のために神の教えを説いていたが、結果、悪人相手に犯罪を助長していた。エルクに言われるまで自分の落ち度に気づかない場合、たとえ気づいていても変われない場合(人形を作るには金がかかる等の理由から)などを見るに、無自覚に常時“闇”に引っ張られている節がある。少なくとも「“日の当たる場所”では生きづらい男」なのは確実っぽい。
闇から足を洗えない:最初に出会った時は偉大なネクロマンサーになろうとの野心(欲の一種)から研究に勤しみ、闇の術に手を染めていた。ドールマスターとしてもネクロマンサーとしての死霊術を捨てきれないし、破戒僧として悪人っぽい男たちとつるみ、姿が変われど常に闇属性だった。アーク2では最終的に1人で魔導の研究をしていたが、アークRではドールマスターっぽい姿に戻ってしまった。モンスター(闇と関係が深い)だらけの坑道跡に住み、悪党相手に商売をするあたり、本人に闇が根付いているからこそ、どうしても“生きやすい道”に戻ってきてしまう証拠かも?
モンスターを使役する:普通の人間は、基本的にモンスターを忌み嫌う。だがピエール・ベロニカはネクロマンサーやドールマスターとしてモンスター(スケルトン、浮遊霊(デスフレイム))を使役する。さらにはもっともらしいことを言って悪人たちを先導しているあたり、一歩間違えばロマリアを裏で操る四将軍たちとやってることは変わらないともいえる。
人でも、モンスターでも分け隔てなく接する:さらにバルバラードでは「生き物の命の重さに、人間もドラゴンもない」と傷ついたドラゴンを看病し、ドラゴンからも存在を受け入れられている。この彼の姿勢はリーザにも通じるだろう。ドラゴンはモンスターの一種であり、普通の人間ではありえない考え方だといえる。
少なくとも、死霊術という高難度かつ強い魔力が必要と思われる闇魔術(モンジを復活させたネクロマンサーやウルトゥスの描写より)を扱うあたり、ピエール・ベロニカが高い知能と強い魔力を持つことだけは確定だ。
またアークRのピエール・ベロニカは、エルクたちでさえ知らなかった情報(黒騎士という存在や、黒騎士が各地で起こした事件に関する情報)をいち早く入手していた。「黒騎士」と聞いた瞬間に反応したあたり、その尋常じゃない恐ろしさまであの時点で把握していたようでもある。
あの時点で黒騎士は世界を暗躍しているにすぎず、一般人なら存在の片鱗すら気づいていなかっただろう。なのに“世界を救った英雄”で有名ハンターとなったエルクより早くその精度まで情報を収集できるなんて、ピエール・ベロニカが只者じゃないのは確か。エルクが頼りにする(?)はずだ。
また彼の入手する情報は、あちこちの悪党に売って小銭を稼げるレベルらしい。エルクいわく「その内容と手に入れ方がいろいろ問題」と言わせるほどなので、おそらく正規ルートではなく、闇ルートで入手しているのだろう。しかも「金がかかる」という人形作りの費用まで捻出できているあたり、きっちりと商売を軌道に乗せていると思われる。
仮にピエール・ベロニカが広義での魔族だったとしても、アーク2では正直ただの小物にすぎなかった。それから10年経ったアークRでのピエール・ベロニカは、小物ではあるものの、ある意味では自分の持つ能力が輝く生き方や居場所を見つけ大成したとの見方もできるはずだ。
ではそもそも、ピエールはなぜネクロマンサーになろうと思ったのか?
アーク2時点の一般市民なら、よっぽどのことがなけりゃそんな闇の禁術に手を出さないし、そもそも難しすぎて手を出せないと思う。
だいたい普通の人は「ドールマスターが人形をどうやって操るか」という原理なんて知るどころか興味すら持たないはず。なんで知ってるんだよ、ピエール・ベロニカ……アーク2時点で既に情報屋の片鱗はあったということか?
可能性はいくつも考えられるが、有力なのは以下の3つだと思う。
ピエール・ベロニカは「広義で魔族に分類できる力」を生まれながらに備え、もともと闇に親和性があったから、闇の術に興味を持った:アークRのリーザやグエルのように相性として“魔族”に分類できる能力を持っていたから、という説。もしかしたら代々ネクロマンサーとしての力を受け継いでいるかもしれない。諸々の状況をふまえ個人的には最も推したい。
ピエール・ベロニカはガルアーノに改造されキメラ化した“新しき人類”の1人だったから、闇の術に興味を持った:もしそうなら、モンスターと合成されたからこそ闇魔術を扱える力を持っているし、すぐに闇堕ちしかける節があることになる。少なくともインディゴスのリーランドは「ガルアーノに改造されたが、特にガルアーノに従うでもなく独自行動する者」だと思う。ただしエルクに説教されたらすぐ反省するし、破壊衝動にも駆られていないあたり、仮にキメラ化されているとしたらピエール・ベロニカの精神力が常人離れしたツワモノすぎるうえ、モンスター合成手術の恐ろしさも軽減されてしまうため、世界観として有り得ない気がする。
ピエール・ベロニカは魔導や人形が大好きで努力家な変わり者おじさんなだけ:普通の人だけどたまたま魔導に触れる機会があって、ものすごく頑張って勉強して術を使えるようになった変なおじさんという説。ただもともと描かれていた死霊術って、あのウルトゥス(ゴーゲンに「とても才能豊か」と言わせるほどの魔導士)が苦戦するぐらいの高難度魔術やぞ……それをそこらの普通のおじさんが使えてたまるか。それに普通のおじさんなら、アーク2での4回の衣装チェンジはどういうこと? うち2回はエルクの目の前で変身したぞ?? 他にああいうエフェクト付き瞬間変身するのは自称魔族なカサドールとか人間に化けてるモンスターとかぐらいで、キメラ研究所に潜入してたアークは普通に変装解いてたし……まさかそういう変身魔術が存在するのか? で、エルクたちの前でくるくる回りながら光に包まれてコスチューム早着替えチェンジしたん? 魔法少女か???
なお、ピエール・ベロニカが作る人形は、アーク2を見る限り限りなく人間に近い形体らしい。
と聞いて思い出すのは、精霊の黄昏に登場したべべドアではないだろうか。彼女は人間王(闇黒の支配者)が作った最強最悪のモンスターなのだが、限りなく人間に近い見た目だ。実際に人間の街のユーベルに単独潜入した際も街の者は誰一人べべドアの正体に気づかず、べべドアに対し人間の子供として接していた。またべべドア本人も「パペット」「アヤツリ人形」「ヒトのカタチをしたモノ」などを自称している。そしてただの人形ではなく、自ら動き考えて喋る存在だ。
ピエール・ベロニカも人形を作るのみならず、ドールマスターの技を使って人形を動かし操ろうとした。この技術が発展すれば人間王がべべドアに対して行ったことに近いものとなる可能性は十分にある。
どちらもヒトに似せた人形を作ったピエール・ベロニカと人間王。彼らの共通点に、程度の差こそあれ「闇に親和性がある者」という点はあるはずだ。
もしかして闇を従える者の中には、人形を作りたがる思考回路を持つ者がいるのか?
人間王は自らの兵力として、世界を我が物にすることを目的に、べべドアをはじめとするモンスターを作ったと確定してよいだろう。
ピエール・ベロニカの目的は不明だが、最初は偉大なネクロマンサーとして名を轟かせる予定だったようだ。ドールマスターにしても、いじるものが死体から人形に変わっただけで、やることはあまり変わらない気がする。その後は神の教えの布教と魔導の研究を経て、アークR時点では再び人形作りへと戻ってきたあたり、よっぽど人形作りが性に合っていたのかもしれない。
さらに精霊の黄昏で登場する、ディルズバルド帝国の皇帝ダッカムも同類のように思える。
べべドアは改造魔族のドグザに対し「ドグザもパペット」と称していたほか、皇帝ダッカムがドグザを「我がディルズバルド科学の最高傑作」と称していたことなどから、彼が作っていた改造魔族も人間王の作るモンスターに近いものだった可能性が考えられる。
皇帝ダッカムは、自身が作った改造魔族ドグザが魔族をも騙せるほどの出来だったことに対し「まさに造物主の快感!」「創造主のみが味わいうる至福の時!」とテンション高く語っていた。心なしか嬉々として人形を作るピエール・ベロニカとどこかかぶるような気がするのだが……。
もしかしたら、エルクがアーク2でピエール・ベロニカを止めていなかったら、彼はネクロマンサーとして研究を続けていたかもしれない。ドールマスターとして浮遊霊を操り続けたり、悪人に教えを説き続けたりしていた可能性だってあっただろう。
ピエール・ベロニカのことだ。誰かに止められなければひたすら打ち込み、それぞれの道をそれなりに切り開いていたと思う。
仮にその過程で、“とんでもない何か”を呼び起こしていたとしたら?
アーク世界には人間王や七勇者たちの時代よりももっと昔から歴史が紡がれてきた。その中には“決して起こしてはならない禁断の存在”が数えきれないほどいるはずだ。べべドア、ラリュウキ、グロルガルデ、闇黒の支配者など封印された存在は数多く、作中で描かれた以外にも色々いるほうが自然だ。
さらにピエール・ベロニカは努力家で行動的で、そこそこ死霊術を扱うほどの才能を持ち、やればある程度色々なことをモノにできる。『廃墟の謎の集団』を見る限り、悪人どもを先導してヤバい組織を作り上げる才能すらありそうだ。
加えて偶然に偶然が重なれば、ピエール・ベロニカ本人や彼が率いる組織が、アーク3のアカデミーや機神復活のMMMのように“とんでもない存在”を引き当てる可能性は十分に考え得るわけで……。
もしかしたらアーク2のエルクたちは、ピエール・ベロニカの暴走を初期段階で食い止めたことでも、人知れず世界崩壊を防いでいたのかもしれない。
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まとめ(余談多め)
今回は、アークザラッドのシリーズを通して解明されていない謎の1つともいえる魔族の定義について考察した。
何を隠そう、私が「魔族の定義を考察してみよう」と思ったきっかけこそ、ピエール・ベロニカである。
トキワタリノ方舟で「死者蘇生は禁術」的な話があったのだが、それを見た瞬間、私は「じゃあ普通に死体に操る魔法を使ってるピエール・ベロニカっていったい?」と疑問を持った。
さらにこの考察のためにアーク2を頭からやり直した結果、かつてちょこがトココ村でスライムに村人の魂を定着させたのを見て、「ピエール・ベロニカがやろうとしてた術の凄いヤツじゃん……優秀なドールマスターは優秀なネクロマンサーでもあるってわけか」と息を呑んだ。
そして調べれば調べるほど、各シリーズで“魔族”に分類される者たちと、ピエール・ベロニカとの間に共通点がどんどん増えていくもんだから、私は頭を抱えてしまった……
……気軽に調べ始めたらとんでもないヤマ引き当てた気分。
ほんと何なんだよ、このおっさん。
そういやアークRでも、リアルタイムで似たような気分を味わった。
エルクのキャラクエストでピエール・ベロニカは、情報屋として“黒騎士の情報”を初めてエルクに知らせていた。最初見た時の私は「すご!そんな大役任されるとか出世したなピエール!」と喜んでいた。
しかしだんだん物語の続きが公開され、伏線が回収されるにつれて、黒騎士の人知を超えた力が際立っていく。“黒騎士の恐ろしさ”を知れば知るほど「そんなヤバい相手の情報どこでどうやって掴んだんだよ……」とピエール・ベロニカの底力を見せられた気分になったものだ。
まだまだ色々考察の可能性がありそうだぞ、ピエール・ベロニカ。
今回のメインテーマである“魔族”についても正直もっと広げられると思う。
シリーズを通して魔族の関連描写は数えきれない。説明されない“細やかなこだわりや物語”が多数あるし、基本は「誰でも闇を持っている」的な方向性でもあるから、私が気づいていないヒントも存在するような気がしている。
遊んでいるうちに面白いヒントを見つけたら、また考えてみたい。
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