起きない娘 ⇑くだらないエッセイ⇑
「家庭内のちょっとしたモヤモヤ」も、積もり積もると家庭崩壊の危険がある。そうならないように、日頃から家族へのケアは重要だ。
私には高校生の娘がいる。自宅からは少し遠い学校に通学しているため、妻が5:30頃には起きて弁当を作っている。私だけが寝ていると、いつか妻の不満が爆発するに違いない。危機管理として、とりあえず妻と同じ時間に起きて「夫婦で子育てをやっています感」や「妻に寄り添っている感」を演出している。
当然、起きるだけで何もやっていないわけではない。新聞を取って来るのと、娘を起こすのと、雨の日は最寄り駅まで送迎するのが私の役目だ。ところが、娘、いつもなかなか起きない。最初はやさしく「朝だよ」、そのうち語気が強くなり「遅れるぞ!」、最後には「起きんかい!コラ!」となる。こういうのが積もり積もると、いつか私の不満が爆発するに違いない。これは家庭の崩壊につながるのではないだろうか? 崩壊を防ぐための危機管理として、何か手立てはあるのだろうか? そもそも、私に対するケアは、私以外の妻や娘に考えてほしいと思うのだが、そんな要求をしようものなら、即、家庭の崩壊である。
そこで私は、自分が爆発しないようにセルフケアすることにした。
娘が起きなければ放っておくことにしたのだ。このことで私のストレスはかなり減少した。娘が遅刻して、先生に怒られたり、始業に間に合わなかったりしても、「おいらの知ったこっちゃないぜよ」という構えである。なんと男らしいことか。これぞ、昭和生まれの男の生き様である。
ところが現実はそんなふうにはならない。
「なんで起こしてくれんかったん?」
「何回も起こしたわ!」
「もうええわ、遅刻したらパパのせいやけんね!」
「なんでやねん!!!」
というドラマのワンシーンのようなお決まりの展開になるのだが、この展開には毎回イラっとさせられる。娘のためを思って行っている私の振る舞いに対して、無視をかましておきながら、挙句の果てには私を非難する。これは人としていかがなものか? 育て方を間違ってしまったのか?
さすがに娘も反省したらしく、帰宅して私の顔を見て、申し訳なさそうに、
「明日は頑張って起きるけん、また起こしてな」
娘よ、やっと悔い改めたか、お前の、そのろくでもない行為を。分かってくれたらそれでいいんよ。やっぱり俺の子やなあ。うんうん…。
となったはずなのだが、気が付くと、またドラマのワンシーンが繰り広げられている。今日もそうだった。いつの間にか元に戻っているのが謎だ。私も娘も、なぜ同じことを繰り返すのか?
百歩譲って、娘の起きられない体質はなかなか変わらないので仕方ないとしても、なんで私まで元に戻っているのか? わざわざイラつく展開に持っていっている自覚はない。万が一、私自身が意図的にそんな展開に持ち込んでいるのだとしたら、私は究極のアホだ。