他人事、夢現。
橙、赤、橙、赤、橙、赤――
捲れる度に大きくなる響動めき。
緊張が走る。
どう転ぶか分からないまま、最後のひとつ。
世間的に無名な状態で、M-1グランプリ2022敗者復活戦2位。
あの面白さに衝撃を受けたのを覚えている。
その1年後、M-1グランプリ2023。
ストレートで決勝へ。
不利と言われ続けてきたトップバッター。
初の決勝、そして一番手と思えないほどの胆の据わり方。
暫定ボックスに最後まで残り続け、最終決戦進出。
彼らは、再びトップバッター。
つかみで大きな拍手笑いをとっていた時点で、
"優勝"という2文字はかなりちらついていた。
7人の審査員による投票結果が捲れていく。
ヤーレンズ
令和ロマン
ヤーレンズ
令和ロマン
ヤーレンズ
令和ロマン
さあ、最後の一票――。
それが見えた時、
ファン歴たった1年の私は、
握り締めていたブランケットを放り投げて叫んだというのに。
涙だって出たというのに。
芸歴6年目の彼は、まるで "他人事" のように笑って手を叩いていた。
「M-1グランプリ2023、優勝は、令和ロマン!」
だが、沢山の歓声と紙吹雪を浴びる2人の表情は、
どこかその喜びを噛みしめているようにも見えた。
本人でもないのに、友人から「おめでとう」と祝われている最中も、
翌日朝から情報番組に出突っ張りな2人を観ても、
ネクストデイを観ても、
このnoteを書いている優勝5日後の今も、
令和ロマンが19代目王者だなんて実感がない。
私が優勝したわけではないから、そりゃそうなのだが。
実感がない、というより、
受け止めきれない、の方が正しいのかもしれない。
本当は思うことを全て書き綴りたいけれど、
かなり生意気な話になるし、
本人たちに届かなくとも失礼な話になるから、
胸の内にしまっておくことにする。
でも、誰よりもM-1を愛する令和ロマンが
M-1に愛されていて嬉しかった。
おめでとう、令和ロマンくん。
ありがとう、令和ロマンくん。
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