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『なるほどデザイン』から学ぶデザイン思考(その1)

はじめに


『なるほどデザイン』は、2015年にMdNコーポレーションより発売された筒井美希さんの書籍です。Amazonの売れ筋ランキングにおいては、DTP、商業デザインなどの分野において上位に入っています。

今回はこの『なるほどデザイン』から学んだ内容をまとめ、そこから思考を広げ「デザイン」とはなにか、昨今ビジネス界で話題となっている「ビジネス思考」とはなにかについて考えを広げていきます。

本書でまずはじめに語られていることは、
「デザイン」に正解はないという点です。

細かく言うならば、「いいデザイン」という決まったものはないと記されています。

綺麗に整理されたデザインも視点を変えれば、面白みがない・地味といった印象に変わってしまうように、デザインの良し悪しは見る人の視点によって大きく変わっていくため、これをすれば「いいデザイン」です!といった正解はないということです。

そのことを踏まえた上で「よりよいデザイン」を作っていくためにデザイナーは何を考えているのかがいくつかのチャプターやステップに分けて、紹介されていました。

この紹介の中で、「こういうときは…こう考える」と特定の状況における具体例を細かく説明されているため、いまいちよく分からないとレビューされている方々は、そこがあまり気に入らなかったのかなと感じました。

その点こそが、また著者が説明している、「視点が変わればデザインの見方が変わっていく」ことの証明だとも考えられたので、「デザイン」についての知識が浅い自分としては、勉強になる一冊だったと感じています。

ステップ1:「デザイン」に正解はない

先程も「デザインに正解はない」ということについては、軽く触れましたが、実際にデザイナーは「デザイン」を考える際に何を考えているのか。

それは「何のためにデザイン」をするのかということでした。

デザインすることを通して、
・どんな人に伝えたいのか
・何を伝えたいのか
・なぜ伝えたいのか
・いつ、どこで伝えたいのか

といった、デザインをする目的を把握・整理をしていないと、デザインが定まらず、正解のない「デザイン」の世界で迷子になってしまうのです。

つまり、「デザイン」はあくまで、特定の情報を相手に伝えるための手段であり、情報を整理できていなければ本来の目的は達成されない。反対に、伝えたい相手のニーズなどを適切に捉えることができれば、特定の情報を伝えるという目的は達成されるというわけですね。

では、目的を整理するためにはどうするのか、いくつかのステップに分けて紹介されていました。

その1、図解とラフ

頭の中にある情報や目的をラフに書き出して図解化する。

その2、方向性

図解化したものをもとに、目的に適した方向性を探っていく。

その3、骨格

細かい部分は後回し。
直感的なわかりやすさを目指して全体像を組み立てていく。

その4、キャラを立たせる

全体像の中から、各要素(情報)に個性をもたせていく。

その5、足し算と引き算

それぞれの情報に個性をもたせた後に、目的にまで足りない部分があれば、情報を足していく。もし無くなっても目的の達成に影響がないようだったら、その情報を削減して引き算を行う。

その6、ブラッシュアップ

全体を俯瞰する、細部に寄るということを繰り返し、伝えようとした意図が相手に伝わるかどうか、もっと強められる部分はないかと考えていく。

以上の6つのステップで、相手に伝えたい内容を整理し、より正確に情報を届けるための手段(デザイン)を考えていくことで、「デザイン」の質が高まっていくとのことでした。

この6つのステップのように、自身が持っている情報や知識を相手に、より伝わるように工夫を凝らしていくことは、教育の世界でも必要な考え方だと思います。

ステップ1から考える「デザイン思考」


自分が持っている知識を相手に伝えるためには、伝え方はもちろん、相手の状況やニーズを正しく捉える。
これは教育界でいう「生徒観」の部分に相当します。

良い授業を展開するためには、生徒の実情を細部に至るまで把握し、生徒に適した情報量を調整しながら、「知識・技能の習得」という目的の達成を目指していくことが「教育デザイン」なのだと感じました。

他の業界などでも同じことが考えられるでしょう。

・自分たちが所持している製品とお客様のニーズ
・自社の人材と取引先
・自分たちの技量と相手のニーズ

会社やフリーランスなどであっても、相手のニーズを正しく把握し、何を伝えればよいか、どこまでを伝えればよいかという点について、熟考していくことで、特定の層に向けた「デザイン」ができあがっていく。

筆者が述べていたように、「デザイン」は視点によって見え方が変わっていくのであれば、誰に向けてという部分が正しく整理できていなかったり、正しく相手のニーズが把握できていないと、いかに良い物であっても、魅力的なものとして捉えられないという部分は、どの業界にも通ずる部分でしょう。

今現在抱えている問題を解決するには、
「今行っている内容が、目的の達成に向けて正しく進められているのか」と再確認し、修正を重ねていくことが「デザイン思考」なのだと考えられます。

おわりに


相手のニーズを把握し、修正を重ね、よりよいものにブラッシュアップしていくことは、すべての業界に通ずることが、『なるほどデザイン』の一つの章から考えられることができました。

同じことの繰り返しになりますが、最後に振り返りをしておきましょう。

○思考の伝達方法に模範解答はない。(「デザイン」に正解はない)

○よりよい情報・製品・知識を伝えるには、伝えるものを整理する。

○ターゲットが広い場合は届けたい相手をある程度絞っていく必要もある。

○ターゲットが定まっている場合は相手のニーズや実情を詳しく・正しく把握する必要がある。

○相手のニーズや実情を把握できたのならば、目的達成のために必ず必要なものと無くてもよいものとを見分け、情報の選別を行う。

○目的達成に向けて、正しく進められているか、正しくニーズを把握できていたかを、何度も振り返り、修正とさらなる相手の分析をする必要がある。

ざっくり振り返ると以上のようにまとめられます。全く新しいものなどを考える前に今の修正を正しく行うことが、あらゆる分野における成功のカギなのかもしれません。

次回は第二章の内容をまとめ、さらに思考を深めていきたいと思います。

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