邦ロック好きにも知ってほしい、The1975という英バンド
「The1975」とは
「The 1975」はギターボーカルのマシュー・ヒーリー(写真中央)、ギターのアダム・ハン(写真左上)、ベースのロス・マクドナルド(写真右)、ドラムのジョージ・ダニエル(写真左)からなる、イギリスのマンチェスターで結成された4人組のバンドだ。
「The 1975」はこれまで、『The 1975』(2013)『Iike It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』(2016)『A Brief Inquiry into Online Relationships』(2018)の3枚のアルバムを発表しており、どれも国内で1位を記録している。
そんな彼らは、2020年に『Notes on a Conditional Form』をリリースする予定となっている。そこで、邦楽のバンドしか聞かない人や名前を知っているが曲まで詳しくは知らないという方にもこの「The 1975」というバンドを詳しく知ってもらいたい。
彼らの音楽性は?
国内のバンドでもついてまわることだと思うが、「このバンドはどういったジャンルのバンドなのか。」「他のバンドでいうならどのバンドっぽいのか。」という部分で判断されることが多いと思う。
そのため、「ダンスナンバーの多いバンド」、「ライブでは観客がモッシュをして大騒ぎするバンド」、「とにかく頭を振るバンド」など、バンドを紹介するときは、紹介するバンドを他のバンドとの比較やライブでの様子から細かくジャンル分けして相手に伝える。
では彼らをどのように紹介するべきかと考え、この考えに至った。
The 1975は「テーマを映像と楽曲で表現するバンド」である。
これだけでは、ピンとこないと思うので、なぜこのような紹介をしたのか説明していく。
映像と楽曲について
映像の世界、つまり映画にも様々なジャンルがあるが、「テーマ」と「それを伝えるための「ストーリーと演出」があるのはどの映画においても共通していることだろう。
まず「テーマ」を決めて、それを伝えるにはどう「ストーリー」を展開させるか、カメラワークや演技をどのように「演出」するか。監督はもちろん多くの人間が一つの作品を作り上げるために様々な手法を使い、作品を完成に導いていく。
その映画の制作過程において、重要な役割を果たしている部分が「音楽」だと私は考えている。
テーマに基づいて作られたストーリーと演出に合った音楽が流れることで、観客はその映画の世界観により没入していくことができるのだ。
映画に流れる音楽に意識をむけたことがない人に向けていくつか例を紹介してみよう。
北野武監督の『アウトレイジ』にAKBの楽曲
青春恋愛映画に地獄の業火について歌ったメタルの楽曲
上記の例のように、映像の世界観と楽曲の世界観にズレがあると、人は誰しも違和感を感じてしまい、両者が素晴らしいものであったとしても、どちらも台無しになってしまうことがあるのだと思う。
逆のパターンもある。別の作品であっても、共通点があれば違和感を感じないという例だ。これは公式の映像ではないが、ここ数年Twitterにおいてよく見かけるようになった映像を見てもらいたい。
この手の映像は、「シンクロムービー」としてTwitterやyoutubeにおいても多く投稿されている。これは映像の世界観と楽曲の世界観にズレが生まれていないからこそ楽しめるのだと思う。
今では、ピングーの映像にアウトレイジの音声をあわせた映像などもあるが、それらの紹介はここでは割愛する。
以上の通り、作者の描きたい・伝えたいテーマにあわせ映像を作り上げ、その世界観に沿って音楽も作り上げる、または既存の楽曲から選んでくる。これが映画の世界での音楽の用いられ方である。
「The 1975」と「映像」と「音楽」
テーマに合わせた映像や楽曲と「The 1975」はどのような関係があるのか。それは彼らのジャンルレスな音楽性にある。
彼らは自身の楽曲においての主題やストーリー、つまり「歌詞」の部分は、恋愛について歌ったものや、現代の政治、ドラッグに溺れる若者など多岐に渡るが、その内容を伝えるために、多くのジャンルを引用して楽曲を作り上げているバンドなのだ。
時には80年代のポップソングやアート・ロックから、あるときは90年代のインディーロックから、またあるときには00年代のインダストリアルやエレクトロニカ、チャンス・ザ・ラッパーなどのようにゴスペル由来の10年代のR&Bからの引用も見受けられる。
ここにいくつか楽曲を紹介していく。
90年代のインディーロックを彷彿とさせる楽曲と映像
フォートナイトのダンスや顔を貼り付けたCGなどのミームの集合体と、chill out / relax / studyなどのタグ付けがされていそうな楽曲といった、ここ数年でのネット上でのインディー文化の集合体のような世界観
公開当時はツイッター上で「マンソンやん!」と話題になったが、インダストリアルやゴス、ポスト・パンクの要素を詰めた映像と楽曲
以上紹介した楽曲は、今年発売されるアルバムから先行で公開されており、これらの楽曲が一つのアルバムに収録されるのである。
彼らは楽曲のテーマに沿ってジャンルを問わずに、
楽曲と映像でその世界観を示すバンドなのだ。
初期では恋愛模様を、80年代のポップソングやバラード、AORで用いられるギターサウンドなどを引用して表現することが多かったが、徐々にエレクトロニカ由来のアンビエント的なサウンドも増え、2018年のアルバムを世に出してからは、世界で最前線に立つバンドにまで到達した。
最後に
「The 1975」は一つのジャンルに縛られず、そのときの社会情勢や自分たちの感情から生まれる「テーマ」をリスナーに届けるための「演出」としてに「歌詞」「楽曲」そして「映像」を用いて、「ストーリー」を組み立て、表現し続けている。
たとえ「歌詞」がわからなくとも、「楽曲」と「映像」があるため、言語の壁を超え、世界中のリスナーに自分たちの「テーマ」を届けられる。
その「テーマ」は、90年代へのノスタルジック、搾取される若者、電子世界への逃避行など、今の社会の現状を映し、若者の心に届くものが多い。そのため、彼らは今、「若者たちの代弁者」として評価を受け、その評価はこれからも続くだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?