津波の予測について理解する。
津波警報や注意報をできるだけ正確にいち早く発表するためには、実際の海面変動の様子を広域でリアルタイムに観測できれば良いのですが、現在の技術ではそれはできません。
したがって、津波の発生やその規模、到達時刻などを推定するためには、津波の原因となる地震などによって起こる海底の地殻変動のタイプや方向、規模などを把握し、それによって生じる海面変動とその後の波の伝播を予想しなければいけません。
気象庁では以下の方法を用いて海面の変動を推測しています。
地震が津波を発生させるかどうかは震源の深さが重要になりますが、海域で発生した地震震源の深さの精度は、地震観測網から遠くなるほど低下します。また、巨大地震の断層の位置、ずれる方向及び地震の規模(マグニチュード)などは2~3分では求められません。
そのため気象庁では、震源が深く求まるような海域では震源を浅く仮定し、発生する断層は津波をもっとも発生させやすい傾斜角45度、すべり角90度の逆断層を仮定しています。また、断層の走向は海溝軸に沿う方向とし、付近に海溝軸がない場合は海岸線に沿った方向を設定するなど、津波を小さく予測しないように、考えうる様々な断層による津波の予測値の中から最大のものを津波警報・注意報に用いています。
実際に地震が発生し、その観測データを受け取ってから上記のような仮定に基づいてシミュレーション (計算) を行い津波警報や注意報を発表するのでは津波の到達に間に合わないため、現在気象庁では、あらかじめ、津波を発生させる可能性のある断層を設定して津波の数値シミュレーションを行い、その結果を津波予報データベースとして蓄積しています。
実際に地震が発生した時は、このデータベースから、発生した地震の位置や規模などに対応する予測結果を即座に検索することで、沿岸に対する津波警報・注意報の迅速な発表を実現しています。いちいち毎回計算することなく、蓄積したデータベースからもっとも近い前提による予測結果を取り出しているということですね。
実際に津波が陸地に押し寄せる際には海底地形や海岸地形、波の干渉などさまざまな要素がかかわってきます、下記の気象庁のページでは津波を予測するしくみについて解説されています。
[気象庁ホームページ 知識・解説 > 津波を予測するしくみ]
私たちはこのような津波警報・注意報のしくみや限界を理解し、津波警報や注意報が発令された場合、これはあくまでもシミュレーションから求められた予想で、その規模や到達時間は大きくなったり早くなったりする可能性を考慮しておく必要があります。気象庁もなるべく過小評価にならないように考慮した予測になるように努力しているようですが、情報を受け取る私たちも、津波予測の不確実性を理解し、早めの警戒、避難を心がけるべきだと思います。
今日10月9日も各地に津波注意報が発表され、携帯アプリから発せられるアラームの音で目が覚めました。津波はいつどこで発生するかわかりません。発生源が日本近海であるとも限りません。津波のしくみや危険を認識して、津波の情報が発表されたときには適切に行動できるように心がけたいです。
海岸、河口付近にお住まいの方や付近にいらっしゃる方々に被害が無いことをお祈りしています。
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