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進級論文の思い出。沖庭神社
大学3年生の夏休みに進級論文という課題がありました。
毎年先生方が対象フィールドを決めてくださるのですが、私たちの時は山形県の南西部、新潟県との県境にある西置賜郡小国町が選ばれました。朝日連峰と飯豊連峰に挟まれた美しいところです。
与えられた大きな対象地域を、地図上で人数分の数km四方の区域に分けて、3年生全員でくじを引いて各人の地質調査担当地域を決めます。そして、山の分校跡やお寺に何人かのグループで泊めてさせていただいて、約1か月間、それぞれ与えられた地域をひたすら歩いて地質図を完成させます。
私が引き当てたエリアは、国道113号線の赤芝峡の北側。北に延びる尾根と南北に流れる荒川に挟まれた地域でした。
今では安全上の配慮から、大学の授業の一環として、学生を一人で山に入れて地質調査をさせることはなかなかできないと思いますが、当時は一人で調査をするのが当たり前の時代でした。
大体下の赤丸が私の担当した調査範囲です。
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私の担当地域はほとんど東斜面で、西に向かって沢を登りながら調査する地域です。沢のとっかかりはしばらく登りやすいのですが、途中から礫岩層が出てくると地形が変わり、急に滝が多くなります。その滝を苦労して越えながら急斜面の沢の源流を登りきると、急に緩やかな尾根に出ます。
そしてうっそうとした木立の中に巨岩の露頭がところどころ顔を出し、そんな巨岩の上に沖庭神社の建物があります。
初めて来たとき、その地形やあたりの雰囲気から、不思議な世界に迷い込んだような感じがしました。
隣の地域を担当する友人と境界部の調査を一緒にしたついでに沖庭神社付近を案内すると、「宇宙人の基地でもあるんじゃないの?」と言われたぐらいです。
とにかく急な沢に苦しめられた進級論文でしたが、いろいろな事件が起こり、忘れられない思い出でとなりました。またいつか、進級論文の思い出は記事にしたいと思います。