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原発を止めた裁判官、樋口英明さんの講演記録を読む

2024年3月31日に埼玉県鶴ヶ島市で開かれた講演会「巨大地震でも原発は大丈夫?」で講演された、元福井地方裁判所裁判長の樋口英明さんの講演記録を読みました。樋口さんの講演のタイトルは樋口さんご自身の著書のタイトルでもある「私が原発を止めた理由」です。

ウィキペディアによると、樋口さんは、

2014年5月21日、関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を下した。2015年4月14日、福井県と近畿地方の住民ら9人が関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請に対し、住民側の申し立てを認める決定を出した[2]。尚、2015年4月に名古屋家裁に異動だったが、継続審理のために仮処分決定を出した。

とのことです。

この講演の中で樋口さんは、原発を止めるべきだと判断した理由を次のように非常にわかりやすく簡潔に説明されています。もちろん、これは実際の裁判の判決の理由でもあるわけですから、それぞれ大変詳細に根拠を検討した上での判断です。

原発の過酷事故は極めて重大な被害をもたらす。
→ それゆえに原発には高度の安全性が求められる。
→ 地震大国の日本で原発に高度な安全性を求めるということは、原発に高度な耐震性が求められるということにほかならない。
→ しかし調べてみると日本の原発の耐震性は極めて低い。
→ したがって原発の運転は止めざるを得ない。

つまり、日本の原発は日本の地域特性に見合っただけの安全確保が出来ないということです。そして福島第一原発の例のように、被害は人の暮らしに深刻な影響をもたらし、損害も膨大なものになることが分かっています。金額だけ見ても、損得勘定などとうてい当てはまらない規模の損害額が生じるということです。

そして、安保だ、防衛だ、軍拡だ、と威勢のいいことを言っている政府与党ですが、自然災害にもテロにも脆弱な原発を海岸に並べて推進してきたのも今につながる自民党政権です。

樋口さんも講演で引用されていましたが、弁護士の河合弘之さんの「原発は自国に向けられた核兵器だ」という言葉は、日本の安全を真剣に考えるならば、重く受け取らなければならないと思います。

私は地質学を学び、地質学を仕事にする立場から、「日本には原発の適地はない」との立場ですが、少なくとも裁判で争われるだけではなく、地方裁判所の判決とはいえ、裁判で稼働を止められるほどの危険性が合理的に判断されたという事実は、非常に重いと思います。

日本の原発の危険性をあらためて深く認識させられる講演だったと思います。

原発事故が一度起こるとその被害が甚大なものになることを、私たちは福島第一原発で学びました。そして原発自体も、核のゴミの地層処分についても、安全確実と言える場所は世界の中でも有数の変動帯に位置する日本にはありません。

原発利権のしがらみから逃れられず、国民と国土を危険にさらすことは許されません。そこを出発点として、日本のエネルギー問題を真剣に議論し、科学技術と社会システムの両面から必要な政策を打ち出すことができる、原発なしの日本の将来を堂々と語れるような政府にぜひなってほしいと思います。

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