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IEA Wind TCP Task 25 Factsheet(国際エネルギー機関風力技術協力プログラム第25部会 ファクトシート)の日本語翻訳版

再生可能エネルギーの実態について学びたいと思い、いくつかの文献にあたっています。表題の文献は国際エネルギー機関風力技術協力プログラム第25部会 ファクトシートで18か国の共同研究の成果です。この部会は世界中の電力系統の中で経済的に実現可能な形で風力発電のシェアを増加するための情報を提供することを目的としていました。
この部会はその後、風力発電や太陽光発電が電力系統・エネルギーシステムに与える影響を分析・評価するための方法論を更に進展させることに注力しているとのことです。

このファクトシートの日本語訳がNEDO (国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)より公開されています。

ファクトシート No.1からNo.9までが掲載されていて、各ファクトシートは数ページにまとめられていて、世界の常識を垣間見るには非常に有効だと感じます。

風力発電や太陽光発電などの変動制電源を導入する際によく議論になる「再エネの不安定性を調整するためには蓄電池や火力などのバックアップが大量に必要になる」などの定説?を覆すようなシステム構築の道筋が示されています。

各ファクトシートでフォーカスされている内容は以下の通りです。

No.1:  風力・太陽光発電の系統連系
風力・太陽光発電の出力の変動性や不確実性によって、電力系統の信頼度や効率性、需給バランスを維持する能力がどのように影響を受けるかについての懸念事項について。

No.2: 風力・太陽光発電大量導入時の電力系統の需給調整
風力・太陽光発電の導入によって、より多くの不確実性や変動性が電力系統内に発生し、需給調整の必要性が高まる一方、風力発電所や太陽光発電所は、デマンドサイドマネジメントや蓄電池といった選択肢と共に、需給調整能力を提供することも可能。

No.3: 風力・太陽光発電の容量価値 ~風力・太陽光発電は需要ピーク時にどのくらい信頼できるのか?
ピーク需要の状況に対応できるような発電所の容量が十分にあるかどうか、その信頼度を示す評価指標「容量価値」について。

No.4: 電化 (エレクトリフィケーション)
発電技術は主要なゼロエミッション・エネルギー技術。同時に、エネルギーの電化によって、風力発電や太陽光発電の変動を費用対効果の高い方法で管理するための選択肢が増える。

No.5: 風力発電がCO2排出量に与える影響
風力発電が需給調整を必要とすることから電力系統の需給調整のために従来型電源の出力を増減することで効率が低下するのではないかという懸念について。

No.6: 風力・太陽光発電の系統安定度への影響
最新の技術を採用し、適切な計画を立て、妥当なインセンティブを与えれば、風力・太陽光発電所は系統擾乱時にも系統を支援することができる。

No.7: 風力発電と電力貯蔵
風力発電によって、電力系統における需給調整の必要性は増加するが、費用対効果によって電力貯蔵以外の選択肢もありうる。

No.8: 風力発電と系統増強
風力発電の大量導入のためには、通常、送電網への投資が必要。しかし送電網の増強は電力系統全体に便益をもたらす。

No.9: 風力発電大量導入時の変動性と予測可能性
風力発電の変動は、多くの風力発電所が電力系統で集合化されることで平滑化され、また、出力予測精度も向上する。

電力系統の柔軟性向上の方法論として、様々な選択肢が示されていて、よく言われるような「蓄電池やバックアップ電源がどうしても必要」という固定観念に縛られる必要はないことがわかります。


国際エネルギー機関風力技術協力プログラム第25部会 ファクトシートNo.1 図3より


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