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アラブの洋上で日本の歴史小説を読む

アラビア湾の石油掘削リグに乗っている間、忙しい時間の合間や天候待機の時間に読む日本語の小説は私にしばしの安らぎを与えてくれました。

基本的に会社の単身寮に置いてあった小説を手当たり次第に借りて読んでいたのですが、特に日本の歴史小説などを読むと、知らない時代の日本のことなのになぜか郷愁を感じたり、普段はあまり意識もしない日本文化や日本的?精神になんだか帰属意識を感じたり、なんだか涙を流したり、なんだかがんばろうと思ったり励まされたりしていました。

読み始めてすっかりはまった小説のひとつに、山本周五郎さんの「樅ノ木は残った」があります。これはNHKの大河ドラマをはじめ、いくつかドラマや映画にもなったそうなのでご存じの方も多いと思います。

江戸時代に大名家で起こった御家騒動のことは伊達騒動や加賀騒動などの言葉で聞いた記憶がありましたが、この話が有名な伊達騒動を題材にした話だとも知らず、また、主人公である仙台藩の重臣 原田甲斐がそれまで悪役と言われることが多かったということも知らないで、先入観のないまま読んで、すっかりここで描かれた原田甲斐の生きざまに、リグの上でひとり涙していました。

もう一冊、やはりなんだかちょっと「樅ノ木は残った」とも似たような雰囲気を感じる司馬遼太郎さんの「峠」。こちらは幕末、長岡藩の家老 河井継之助が本人の思惑とは別にどんどん武士として藩の家臣として追い詰められていってしまう様子と悲壮な覚悟が、リグの上でひとり追い詰められながら?仕事をしていた私の心に響きました。

冷静に考えてみると合理的でもドライとも言えない小説の中の二人の生きざまに、なんだか涙して共感してしまう自分に、作家の山本周五郎さんや司馬遼太郎さんの思惑にすっかりはまってしまう私は日本人なのだなと思ったりもしました。リグの上で日本人ただ一人孤軍奮闘しなければいけない自分の境遇と重なるものがあったのかもしれません。

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