なんじょる

「心が見える物語を紡ぐ」をテーマに、こころ模様や人々の生き様をきめ細かく描いていく。"Fukushima Documentary"では、3.11後に生きる人々の想いや事実に焦点を当て発信。秋田出身、早稲田大学卒業。現在は福島県浪江町に在住。

なんじょる

「心が見える物語を紡ぐ」をテーマに、こころ模様や人々の生き様をきめ細かく描いていく。"Fukushima Documentary"では、3.11後に生きる人々の想いや事実に焦点を当て発信。秋田出身、早稲田大学卒業。現在は福島県浪江町に在住。

マガジン

  • ふくしまドキュメンタリー

    • 25本

    その日は突然訪れた。地震の多い日本でも過去に経験したことのない大きな揺れ、最大40mの津波、さらに原発事故による放射線物質の放出。 誰も住めなくなってしまったまち。劣化していく家屋や建物。当初設定された帰還困難区域の92%は未だ帰還困難区域のままという現実がそこにはありました。 ほぼ報道されていない事実がそこにはありました。 苦しい、辛い過去を抱きながら、それでも何とか自分たちの使命に生きる人たちに出逢い、感銘を受けました。 人間の強さや優しさ、そして社会の現実を映し出し、私たちに希望と元気を与えてくれるヒューマン・ドキュメンタリーを記事としてまとめています。 動画配信は6月から進めていく予定です。

  • 心模様

    − もし心に色が見えたら、きっと何色も入り混じり、さまざまな色彩に変化していくだろう。人間の心はそれくらい、複雑で面白いのだから。- このマガジンでは、活動をしていく上での出来事や、紹介したい好きなものやニュースなど、ざっくばらんに執筆していきます。心の揺れ動きが主です。

  • 【福島県浪江町】顔の見えるまちで息をする

    息をするだけで幸せになれるような、そんな感覚があったー。 2024年3月に福島県浪江町へ移住。メディアから見える世界が全てではなかった。ふんわりと湧き起こる感情、わたしの目で見たことを形にするために、ここに記録していきます。 Yuka Nanjo / 南條佑佳

最近の記事

強く、優しく、命が燃え尽きるまで:手話歌パフォーマー もとみちさん

「自分が生きている限り、誰かのためにどう命を使っていくのか。命を燃やし続けることで、命に意味を見つけたい。そう思っています」 SNSを中心に手話歌パフォーマー、そして俳優としても活躍するもとみちさん。彼の口から出てきた言葉は力強く、しかし、その一つ一つに込められた優しさが心に染み渡った。 ガラスのように透き通るもとみちさんの瞳には、何も隠すことなく全てを純粋に映しているように見えた。 もとみちさんの目に表現や手話というものは、どのように映っているのだろうか。命を燃やし続け

    • 『The Days After 3.11』 より距離の近い、存在へ。震災が導いた音楽とご縁。:牛来美佳さん#4

      群馬県太田市に住み始めたのは、震災から2ヶ月後、2011年5月末。 牛来さんは5歳の娘をもつ母子家庭だった。 両親のこともあり、福島からあまり離れていないところを探す中、片道2時間の距離にある太田市の話を知り合いからきいて決めたそうだ。地元のことを聞くと、温かく応援してくれたり、プライベートでも支えてくれたりと、もう第二のふるさとのようだと話す。 「ここで出会った方やいまお繋がりがある方って、 音楽をしていなければ確実に出会えてない人がほとんどです。そういう風に思うと、音楽

      • わたしのことが大嫌いの感情でいっぱいだったわたしに、愛情を込めて料理をしよう

        すべてが嫌になる日。 仙台から、浪江へ終電で帰る。 喉の奥には、自分の悲しみがこびりついているような感覚が広がった。 こみ上げてくる感情を押し殺そうとしたけれど、ついに涙がこぼれ落ちる。 昨日は大学時代の友人と再会し、なんと素晴らしい時間を過ごしたのに。思わず、あれは果たして幻だったのだろうかと思う。 昨夜はほぼ不眠に近く、体はまるで山を登りきったかのように重い。 どっと疲れが押し寄せる。 今日の朝一はカフェ探しから始まった。駅周辺は、相変わらずマック、スタバは人で溢れ

        • 『The Days After 3.11』 頭と心がバラバラで抜け殻のような生活の中で :牛来美佳さん#3

          牛来さんのアパートと実家は海から離れていたため、津波で家族の命を落とすことはなかった。 しかし、浪江町の沿岸部では、津波によるい甚大な被害があった。 「救助隊も入れず手付かずのままで放置されたあの異様な光景は、すごくリアルな映画撮影セットみたいでした。」という言葉が印象的だ。 大きな揺れによって、傾いたり倒壊した建物もありますし、道も凸凹でアスファルトがおもちゃのようにうねって割れてたり。 道路が落ちていることもあったそうだ。 震災直後は抜け殻のような状態。 現実と心がバ

        • 強く、優しく、命が燃え尽きるまで:手話歌パフォーマー もとみちさん

        • 『The Days After 3.11』 より距離の近い、存在へ。震災が導いた音楽とご縁。:牛来美佳さん#4

        • わたしのことが大嫌いの感情でいっぱいだったわたしに、愛情を込めて料理をしよう

        • 『The Days After 3.11』 頭と心がバラバラで抜け殻のような生活の中で :牛来美佳さん#3

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        • 【福島県浪江町】顔の見えるまちで息をする
          7本

        記事

          歴史は誰の視点で語るのかについて | ふくしま移住記録 #7

          歴史は受験のために覚えるものだと思っており、記憶力の悪いわたしにとってはしんどい時間だった。ひとりの物語が何も見えない、ただの暗記科目として捉えていたなぁ。 勉強しておけば将来や実生活に役に立つだろう。昔は、そんな気持ちで授業を受けていた。しかし大人になるにつれ、教科書だけではない世界を知り、そして先日も新しい学びがあった。 *** 先日、アメリカ生まれの詩人アーサー・ビナートさんのイベント「ここは広い世界の入り口だ」に参加してきた。(福島県南相馬にある、俺たちの伝承館で

          歴史は誰の視点で語るのかについて | ふくしま移住記録 #7

          『The Days After 3.11』 誰かを想い、苦しみを分かち合ったり和ませたりする:コトメン#1

          心に焼き付いている記憶は、どんなことや風景なのだろうか。ある人は眩しいほどに輝いている思い出、もしくは夜の闇のように深くて暗い思い出かもしれない ──。 今回の主人公は、福島県双葉町出身の大川義秋(おおかわ よしあき)さんだ。琴演奏者の〝コトメン“として活動しており、全国大会での優勝経験があるほどの腕前である。 人々を魅了するキュートでやさしい笑顔。 音楽や自身をとおした、豊かな表現。 好奇心でいっぱいの少年のような、純粋な心。 演奏のみならず、彼のパーソナリティに魅了

          『The Days After 3.11』 誰かを想い、苦しみを分かち合ったり和ませたりする:コトメン#1

          『The Days After 3.11』 復興で、地元が馴染みのない場所に :牛来美佳さん#2

          福島県浪江町は、原発事故により一夜として廃墟と化した。 住民ゼロなので、そこはまるでゴーストタウンとなってしまった。 6年という長い年月を経て避難解除され、移住者を含め約2,000人がまちで暮らし(2024年現在)、少しずつではあるが活気を取り戻してきている。 その一方で、震災前のもとの姿に戻ることは難しく、どちらかと言えば全く新しいまちになっている。 「いつかまた浪江の空をの歌詞の中に、“元の未来探すけどどこにあるの”とあるけど、"元の未来"という言葉自体、この一言だけ

          『The Days After 3.11』 復興で、地元が馴染みのない場所に :牛来美佳さん#2

          ふくしま移住記録#6 |ざわつきと、思い通りにならない

          部屋の明かりを消したとき、静寂と暗闇の中で寝ることが久しぶりだったことに気づく。ベットは朝起きたままの形で、布団がめくれ上がっている。 そろりと入り、目をつぶると、心臓の存在をこれでもかというくらいに感じる。鼓動が聞こえるわけでもなく、締め付けられるわけでもなく、ただ守ってあげたくなるように、心臓がそこにあった。次第にみぞおちまで冷たくなっていく。空腹で寝ることが、ひどく寂しく感じる。 いつもはすぐ寝てしまうから、5分10分寝つけないだけで心配になる。 段々と、森の中に1

          ふくしま移住記録#6 |ざわつきと、思い通りにならない

          『The Days After 3.11』 当たり前の日常の大切さを、歌で届けたい :牛来美佳さん#1

          “歌で伝え続けていく” そう心に誓い、一歩踏み出したのは、あの日があったお陰でもある。 一人ひとりの魂を揺さぶり、心に届ける歌を届けるシンガーソングライター・牛来美佳さんのものがたり。 「震災を通して当たり前の日常や生活がどんなに愛おしくて、どんなに尊いものだったのかをものすごく気づかされました。 それが私が歌を始めるきっかけにもなりましたから。当たり前の日常に感謝して、愛をもって生きていきたいです。」 聞き手を優しく包み込むような言葉を表現する牛来さん。 シンガーソング

          『The Days After 3.11』 当たり前の日常の大切さを、歌で届けたい :牛来美佳さん#1

          『The Days After 3.11』 初めての未来チケット:栃本あゆみさん#6

          最終回は、おむすび専門店えんで未来チケットをお届けしたほっこりエピソードです。 *** 11月のある日のこと。 クラウドファンディング(以下、クラファン)で”応援チケット(えんで使えるお食事券)”を持ってきたご夫婦がやってきました。 そのご夫婦は、 「このチケットを使う代わりに、浪江にゆかりのある子供たちに食べさせて上げてほしい。」 そうわたしに話して、現金2,000円を渡してくださいました。 わたし自身いつかやりたいと思っていた「みらいチケット」が思わぬところで、機

          『The Days After 3.11』 初めての未来チケット:栃本あゆみさん#6

          素直な心の叫びを歌に。"愛"がこの世にあるのなら。 | The Days after 3.11

          誰かに全てをわかってもらうなんて、 到底無理だと思っている。 けれども、どうしようもなく自分を 受け入れて欲しいと願う瞬間はある。 シンガーソングライターの牛来美佳さんの曲は、そんな素直な心の叫び声を受けとめてくれるようだった。 ただただ美しくて、うっかりすると、 涙が溢れ出てしまう。 先日、「連合群馬ふれあいフェスティバルinおおた」に参加し、牛来さんのステージを見に行った。 もうね、とっても素敵だった。 ほかほかの気持ちを抱えて帰り、 少し時間がたった今だからこそ、

          素直な心の叫びを歌に。"愛"がこの世にあるのなら。 | The Days after 3.11

          ふくしま移住記録#5|誰かの言葉を借りない。分からなさに向き合うこと。

          目を覚ますと、窓からうっすらと光が差し込んでいた。なんならカーテンの隙間からも、朝日が眠りの世界を妨げるかのように差し込んでくる。隣では、名取からきた友人がすやすやと気持ちよさそうに眠っている。わたしもいつまでも布団にくるまっていたい気持ち。 しかし今日はレンタカーを借りるため、8時40分には家をでないといけない。時計の針は、既に8時を過ぎていたので、まるで幽体離脱から戻ってきたかのように、のっそりのっそり起き上がる。 今日はあちこち出かけるプランで、まずは浪江から北上し

          ふくしま移住記録#5|誰かの言葉を借りない。分からなさに向き合うこと。

          ちっちゃいことでも、ありがとう! 『The Days After 3.11』 栃本あゆみさん#5

          さまざまな挑戦をされている栃本さん。 周りの人から遠い地から励ましてくれる人まで、沢山の人に支えられてきたからこそ、いつも感謝の気持ちを大切にしているそうだ。 「人への感謝の気持ち、ありがとうは絶対に忘れないように。 ちっちゃいことでも、ありがとう、ありがとうって。 もう口癖かって言われるぐらいに伝えよう、大事にしようって思っています。」 取材中も栃本さんは、感謝の言葉を何度も伝えてくれた。 「ありがとう」は、伝える人も伝えられた人もお互いが幸せになれる素敵な言葉だ。 ま

          ちっちゃいことでも、ありがとう! 『The Days After 3.11』 栃本あゆみさん#5

          『The Days After 3.11』 避難町民にただいまのきっかけを作る挑戦:栃本あゆみさん#4

          「誰もが”ただいま”と戻ってきたくなるような、あたたかい場所にしたい」という想いを持つ栃本さん。そんな中、全国に散り散りになった元住民に向けたクラウドファンディングを行ったそうだ。(2023年6月に終了) 「避難町民にただいまのきっかけを作ろうということで、初めて挑戦しました。私1人だったら絶対にやれていなかったんですけど、私の思いとかを聞いてくださって、こういうのやりませんかと声をかけてくださった会社さんがいらっしゃって。 その会社さんと一緒に、散り散りになった町民の方

          『The Days After 3.11』 避難町民にただいまのきっかけを作る挑戦:栃本あゆみさん#4

          『The Days After 3.11』 震災のイメージがついてしまった地域で自分ができること:栃本あゆみさん#3

          高校卒業まで浪江町に住んでいた栃本さん。現在は約2,000人弱だが、震災前は元々は2.1万人が住み、すごく活気のある街だったそう。お祭りで賑わっていたり、子供がきゃっきゃしながら走り回ってる、そんな日常風景にある街だったと振り返る。 また、人口に対する飲食店の数が日本トップレベルで多い町だったこともあり、道ゆく人の明るい顔が印象的だったそうだ。 「原発事故の影響で避難指示が出て、6年間は住民ゼロになりました。元々あったお店やお家が全部取り壊しになってしまい、以前と比べると町

          『The Days After 3.11』 震災のイメージがついてしまった地域で自分ができること:栃本あゆみさん#3

          『The Days After 3.11』 おむすびがつくりだす、至福の空間:栃本あゆみさん#2

          えんの魅力といえば、おむすびが寿司下駄に乗って提供されるカウンタースタイル。 まるでお寿司屋さんにきたかのような気持ちになり、 子どものようにわくわくしてしまう。 一人で来店する常連さんも多いという。 「カウンターだとお客様の反応が直に分かるんです。美味しかったよとか、 浪江でお店を開いてくれてありがとうって 声に出して言ってくださる方も結構いらっしゃっいます。 そういうお声が本当に1番嬉しいですし、頑張ろうと思います。何よりお客様とお話しするのも楽しみのひとつです。」

          『The Days After 3.11』 おむすびがつくりだす、至福の空間:栃本あゆみさん#2