20180609_営業こそ最強

営業こそ最強

 今更ではあるがピーター・ティール氏の"ZERO to ONE"を読んで非常に感銘を受けた。題名の通り、ゼロからイチを作り出すということでもっと起業的目線を想像していたが、営業に関して一章を割いていた。今回は、そんな著書の概要に触れつつ、私の営業に関する考えを記載する。ちなみに、AIが人間の仕事を奪うと言われる昨今ではあるが、私は営業という職はなくならないと考えている。

1. 商社にとっての営業

 本の内容に触れる前に商社における営業に関して記載する。商社は周知の通りモノがない。つまり商社という業界にいる限り、営業または非営業に属することになる。商社においてプロダクトの価値という概念はなく、サプライヤーより購入するプロダクトをどのように売るか、この1点に限られる。もちろんプロダクトのメリットを客先に説明する機会はあるが、それは商社の価値ではなく、メーカーの価値であることを勘違いしてはいけない。
 これから商社を目指す就活生、商社で働き始めたばかりの営業の方が読んでくれているならば、商社における営業とは?ということを常に突き詰めていかなければならない。商社不要論は数十年前からあるが、ただプロダクトを販売するような商社は本当に不要である。商社が介在する理由を営業という観点より価値を生み出していかなければならない。プロダクトを売るだけは問屋であり、商社ではない。

2. 営業とは

 著書の中では営業の内訳を大きく広告とセールスに分けている。アメリカにおける広告、セールスの規模は以下の通りである。

・広告  :1,500億ドル/年の売上で、60万人の従事者
・セールス:4,500億ドル/年の売上で、320万人の従事者

 比較対象がないと判断できない部分はもちろんあるが、市場規模としては決して小さいものではなく、その重要性が数字の面でもわかる。また著書内では、広告、セールスの仕事を以下のように説明していた。

・広告:すぐにモノを買わせるためにあるわけではなく、後に売り上げに繋がるように巧妙な印象を刷り込むもの
・セールス:本質を変えずに見栄えを変えるための組織的なキャンペーン

 私は上記のセールスにあたる営業だが、本質を変えずに見栄えを変えるという点には非常に共感をする。営業は相手を説得する仕事だと思われがちであるが、実はそうではない。営業はお客様のイエスまたはノーを引き出す仕事である。モノを相手に提案をし、買いますか?買いませんか?という問いかけをする。もちろん「買いません」という答えを入手しても営業の仕事であることに変わりはない。ただ、どのように見せるかでお客様の選択が変化するのもまた事実である。ピーター氏の述べる「本質を変えずに」という点に着目すべきである。見栄えは変えるが決して嘘はつかないという誠実をひしひしと感じる。嘘は違和感を生み、違和感は営業を相手に感じさせる。売り込んでいるという様相を呈さず、相手にプロダクトの必要性を感じてもらえたらイエスの引き出しはすぐそこである。

3. 一流の営業

 ピーター氏は一流の営業を「売り込みだとわからない営業」と位置付けている。もし仮に一流の営業に出会ったことがない人がいるならば、本当に出会っていないか、売り込みだと気づいていないどちらかである。
 売り込みだとわからない営業をしている一流の営業は、営業をくだらないものだと考えている人達から見れば、きっと何もしていないように映るだろう。しかし、何もしていないように、営業というものをそこまで簡単なものに見せることは並大抵の技術ではない。
 著書内でビジネスの格言として以下が紹介されている。

「最高のプロダクトが勝つとは限らない」

 上記の格言はまさにビジネスの真髄である。最高のプロダクトができたとしても雑に言ってしまえば人々に認知されなければ全く売れないのである。反対に大したことのないプロダクトでも営業と販売が優れていれば、その業界で独占を築くことも大いに可能だ。
 商社で働いていても「この商品は美味しいから売れる」「これは面白いから売れる」といった内容の言葉を耳にすることがある。このようなプロダクトアウトの考え方は非常に危険である。いい商品が売れるのではなく、売れた商品がいい商品であることをしっかり認識しないとならない。

4. まとめ

 ピーター氏は著書内でシリコンバレー付近にはいいプロダクトを作りさえすれば魔法のように売れていくと思っている人間がたくさんいると揶揄している。確かにエンジニアのような技術者の人には営業の重要性は感じづらいのかも知れない。
 私が出会った経営者の方はこう言っていた。「営業が最強、モノさえ売れれば会社は潰れない」とても腑に落ちる言葉だった。仮にとてつもなくどうしようもないプロダクトであったとしても営業がそのプロダクトを大量に売りさばいたら、きっとその会社は大儲けするであろう。

5. 最後に

 今回の記事の参考にした"ZERO to ONE"だが、同書内では営業に関し、もう少し細分化した詳細が述べられている。2014年に発行された本ではあるが全く色あせることなく、現在も書店では平積みされている光景をよく目にする。営業以外に関しても当然記載しており、どれも内容は刺激的で面白い。読んでいない人にはぜひ読んで欲しい。



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