【前編】あの日生まれた恋心の話。
こんばんは、サブリナです。
絶賛、模索中です。書くことを。
今日は
青春の1ページみたいな、昔話を。
***
10年前、秋の終わりから春先まで雪に覆われる国に、語学留学に行った。
初めてのパスポート、初めての海外。
1人ぼっちだったら不安もあったかもしれないけれど、同じプログラムで渡航する子たちが何人かいたし、ずっと留学してみたいと思っていたから、なんだか平気だった。
6か月の留学期間にも関わらず、計り方を間違えて、1週間の旅行用にも足りないようなスーツケース1つで旅立った。
私が暮らしていたのは、大学のキャンパス内にある寮だった。現地の大学生も、留学生も、一緒になって住んでいる多国籍な寮。
寮の近くの木に、スラックラインというベルト状のものをくくりつけて、その上でバランスを取って遊んでいる寮生が気になって、声をかけた。
英語がおぼつかない新入りのアジア人に、怪訝な顔をせず、快くスラックラインを体験させてくれたのが彼だった。
彼はちょっと暗めの金髪で、肩くらいまでのサラサラロングヘア。目は明るい茶色をしていて綺麗だった。歯を見せて笑う顔が、THE・外国人という感じ。そこでは私の方が、外国人なのだけど。
かっこいいな〜とは思っていたけれど、取り立てて気にしているわけではないはずだった。でも、ある日キャンパス内で偶然すれ違ったとき、少女漫画みたいに、恋に落ちてしまった。
あ、同じ寮のあの人だ、と思った私は「Hello!」って挨拶をした。
目が合った彼は「Hey!」って言いながら、揃えた二本指をおでこから離すような動作をして、ウインクと共に挨拶を返してくれた。
たったそれだけ。
古典的な気もするけれど、そのワンシーンがなんだか素敵すぎて、トスッと胸に矢が刺さってしまった。まだ、留学してきて1か月かそこら。でもはやくも留学期間の6分の1が終わろうとしているところだった。
どうやって連絡先を聞いたのか、うろ覚えなのだけど、確か、ハロウィンの時期だったと思う。
寮でハロウィンパーティーがあった。ちょっとした仮装をして、写真を撮ったり、みんなでゲームをしたり。結構盛り上がったし、楽しかった。
カボチャのカービングなんかもして、寮のコンテストで、彼は大賞を取っていた。きっと、楽しい雰囲気にかこつけて、それらしい雑談のテーマもあって(大賞すごいね、とか、どうやって彫ったの、とか)話しかけたんだろう。
すっごく緊張しながら聞いて、教えてもらって、なんかもう挙動不審だったんじゃなかろうか。変に思われなかったかな、いや思われたな、なんて思って、ウワーーーってした記憶が、朧げにあるような、ないような…
まぁ、思い出さなくていい。兎にも角にも、連絡先を入手したのだった。
あの頃の連絡手段は、携帯電話のショートメールだった。現地で買ったおもちゃみたいな携帯電話を使って、英語を間違えないように、慎重にメッセージを送る。年齢を聞いてみたり、語学留学生らしく、分からないことを教えてもらうことを口実に連絡をしていた。
彼との心の距離が、やっと近づいたのは、クリスマス前のことだった。
***
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?