思いのほか、ビザンツ出版社でした
中公新書から『ビザンツ帝国 千年の興亡と皇帝たち』が刊行されました。ものすごくそのものズバリなタイトル、とっくに同じタイトルの本が出ていたのではないかと思ってしまうほどストレートです。しかし、どうやら中公新書ではお初のようです。
著者は中谷功治氏。あたしの勤務先でも『ビザンツ 驚くべき中世帝国』(残念ながら現在品切れ)の訳者に名を連ねています。つまり、あたしの勤務先でもビザンツ帝国に関する書籍を刊行しているということです。
いえ、「刊行している」なんて他人事のような書き方は正確ではありません。むしろ日本の出版社の中ではビザンツ帝国に関する書籍の刊行が多い方に入るのではないでしょうか? その証拠に本書巻末の参考文献に、あたしの勤務先の刊行物が多数掲載されています。主に文庫クセジュですが、在庫のあるものでタイトルを挙げてみますと以下のようなものがあります。
コンスタンティヌス その生涯と治世
ベルトラン・ランソン 著/大清水 裕 訳
キリスト教を認め、自ら信徒となった初のローマ皇帝。キリスト教信仰が前面に出る傾向があるが、新都創建につながる多くの建設事業を手掛けるなど皇帝としての施策の評価も記述。
ディオクレティアヌスと四帝統治
ベルナール・レミィ 著/大清水 裕 訳
紀元後3世紀、危機的状況にあったローマ帝国を立て直し、さらに数百年間存続させることを可能にした改革事業と、四帝統治体制の成立から結末までを、近年の研究に基づいて解説。
古代末期 ローマ世界の変容
ベルトラン・ランソン 著/大清水 裕、瀧本 みわ 訳
3~6世紀の地中海世界(末期ローマ帝国)を衰退期とみなすのではなく、新たな社会が生まれた時代としてとらえている。古代から中世への変遷を行政、宗教、芸術面など多角的に叙述。
ヨーロッパとゲルマン部族国家
マガリ・クメール、ブリューノ・デュメジル 著/大月 康弘、小澤 雄太郎 訳
ローマと蛮族の接触によって、西欧社会はどう変容したのか。最新の研究成果を盛り込み、ゲルマン人諸部族の動勢に的確な展望を与える。
皇帝ユスティニアヌス
ピエール・マラヴァル 著/大月 康弘 訳
かつての地中海世界を取り戻そうとした、6世紀のビザンツ皇帝――ユスティニアヌスは、西欧法体系の礎『ローマ法大全』を完成させた。その多彩な事績を示す、信頼のおける歴史書。
なお、参考文献で挙がっている『歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品』はまもなく刊行予定ですので、しばしお待ちください。
歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品
井上 浩一 著
歴史が男の学問とされていた時代に、ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を記した、皇女の生涯をたどり作品を分析する。
また参考文献には挙がっていませんが、やはり文庫クセジュの最新刊『ローマ帝国の衰退』もビザンツ帝国に関連する記述に溢れています。
ローマ帝国の衰退
ジョエル・シュミット 著/西村 昌洋 訳
文明は「歴史の苦難や破局を乗り越えて存続するもの」という見地から、いまもヨーロッパに刻印を残し続ける「ローマ」を描き出す。
http://www.rockfield.net/wp/?p=359