一時帰国中・移動中に読んだ本(2024年7月)
2週間半の一時帰国の中で、シェムリアップから神奈川の自宅までのほぼまる1日かかった長〜い移動中・滞在中に、主にkindleで本を読んでいました。
ベトナム戦争・クメールルージュ関連
地雷を踏んだらサヨウナラ
カンボジア在住なのに「よく聞くけど、実は映画も見てないし本も読んでいない」と言うことでカンボジアからのフライトで読みました。
想像していたよりも一ノ瀬泰造さんはお若く(この頃25歳くらい)フリーカメラマンとして単身でカンボジアに入っていました。当時戦場となっていたアンコールワットに近づきたい一心でかなり無茶をしています。
このタイトルの元となった手紙の原文では
と、半分おちゃらけたような書き方なのですが、現地のあまりの凄惨さに感覚がおかしくなっているような印象もありました。
最近になって一ノ瀬泰造さんが遺体で発見されたのはプレダック村だったということを知りました。プレダック村出身の先生にクメール語を習っていたことからこの村を知り、ご飯が美味しいんですよと紹介がありました。
そして少し前にはプレダック村で念願の名物ノンバンチョック(カンボジアそうめん)を堪能しました。
あの穏やかな村と一ノ瀬さんの命懸けの戦いは、自分の中で繋がりませんでした。繋がらなかったということは、平和になったのだなと実感したりしました。
したたかな敗者たち
ベトナム戦争のジャーナリスト、近藤紘一さんの本は結構読んだと思っていましたが、この本は未読でした。「地雷を踏んだらサヨウナラ」と共に、カンボジアからベトナム経由で日本に帰る時にkindleで読みました。
「したかかな敗者たち」とはベトナム戦争で負けたサイゴン(ホーチミン)市民のことです。「サイゴンの一番長い日」と被る内容もありましたが、驚いたのは後半はカンボジアの章で、ポルポト政権下の市民とカンボジアの政治家について直接見聞きしたことが書いてあったのでした。
サイゴン陥落とポルポト政権、タイ国境のカンボジア難民キャンプとベトナム・カンボジアの政治家の駆け引きを同じ人が取材して書いているということだけですごいです。外国人が入国できなかったこの時代のカンボジアを、サイゴン駐在とバンコク駐在で至近距離から描写した様子は圧巻でした。
(そしてこの時代のインドシナの知識層の共通言語はフランス語だったのだと実感します)
米大統領選関連
Who is Kamala Harris?
米大統領選で、大統領候補・副大統領候補の中でWho isシリーズに誰かいるかな?と調べたところ、カマラ・ハリス氏の本があることがわかりました。
読んだ直後に大統領候補となり、急激に本の売り上げが増えたようです。
Amazonでの非常に評価は高いのですが、推薦している人の多くはアフリカ系女性ではないかと思いました。
たいていこの伝記シリーズは外れがない一方で、実はこの本はあまり印象に残りませんでした。著者がハリス氏の政策に関して「これは異論がある」「論争中である」との記述が多く、公平さを保とうとしたのかもしれませんが、ストーリーに入り込むのにブレーキをかけられた気がしたからです。
ですので、違った本を読むとまた印象が変わるかもしれません。
関係ないですが、Kamalaという名前は、インド系アメリカ人が主人公のドラマ"Never have I ever"で主人公の従姉妹Kamalaと同じ名前ですね。このドラマのKamalaはインドとアメリカの文化に挟まれながら最終的に独自の道を選ぶかっこいい役です。
カマラ・ハリス氏の母親がインド系とのことで、Kamalaはインドの名前なのだなと、アフリカ系女性として有名ですがアジア系でもあるのだなあと思いました。
Hillbilly Elegy
J.D. ヴァンス氏の自伝、ヒルビリーエレジーです。共和党に追い風が吹いている?中でトランプ人気の背景を理解したいと読み始めました。翻訳版と迷いましたが、kindleでは原書が翻訳の半額だったこともあり、また本人の言葉を直接受け取りたかったため原書にしました。難しかったら翻訳版を改めて読もうと思っています。
カンボジアに戻る飛行機で読み始め、時間はかかっていますが現在40%ほどです。
ヴァンス氏の幼少期から少年期の体験は凄まじく、虐待と言えるかもしれません。そしてそれが特殊な一家庭の環境によるものではなく、構造的な町の貧困がもたらしたものだったというのが、ヴァンス氏が街を脱出し勉強し続けることによって徐々に明かされていきます。
自分が殺されるかもしれないと母から逃げて警察に保護され、母親を裁く法廷において、生まれて初めてテレビで聞くような英語のアクセントを話す人を実際に見た、というのが生々しすぎました。(英語で読んでいるので詳細はちょっと違っているかもしれませんが…)正直日本語で読んでいたらダイレクトすぎて読み進められなかったかもしれません。
アパラチアやラストベルトについて、「聞いたことがある」程度の認識でしたが、出身者のリアルな生い立ちをなぞっていくと「アメリカの知らない半分」が見えてきたのでした。日本でもこのような分断はありそうですが、アメリカがあまりに広いために生まれた土地に縛られ、パスポートどころか一生に一度も州外に出ないという保守的な層が生まれる背景を知りました。
NPR(アメリカの非営利公共ラジオ)の「ブックオブザデイ」でもヴァンス氏が副大統領候補になったことを受けて、以前(恐らく2021年)のヴァンス氏のインタビューを振り返っていました。ご本人から書籍について語られています。
ポッドキャストで聴くことができます。
iPhoneのポッドキャストアプリを開き、左下の吹き出しマークをタップすると、話している内容と同期してスクリプトが表示されます。これが非常に便利です。
そのほか
Villainous Victorians
最新の版では装丁が変わったようです。私が持っていた本はビクトリア女王が有名なセリフ "We are not amused" をつぶやいたイラストでした。
確かに、クリミア戦争の章で「今ではウクライナとなっているクリミアでは…」と書いてあり、驚いて出版年を見てみると2010年でした。最新版では内容が変わっているのでしょう。
このHorrible Histriesシリーズ、前回のウィンストン・チャーチルの時は難航しましたが、今回はイギリスの最も華やかな時代で興味深く読み進めました。世界の各地に領土があったために"the sun never set on the British Empire(太陽が沈まぬ国)"と言われた頃です。
ヴィクトリア女王は植民地支配下のインドの皇帝でありながらも、酷暑のため一度もインドを訪れたことはなかったそうです。それでも1901年に亡くなった際にはインドでは会ったことのない女王のために国が喪に服した、との話は印象に残りました。
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