ベトナム・カンボジアを跨ぐ庶民料理バインセオ(バンチャエウ)
全くグルメではないし、いつもはなんちゃって日本食を自炊しているし、そこまでローカルご飯を知りませんが、バインセオ (Bánh xèo) は別です。カンボジアでも食べています。お名前はちょっと変わってバンチャエウ(បាញ់ឆែវ)。
カタカナで書くと違う名前ですが、耳で聞いた感じでは「バインセオ(ハノイ)」→「バンセオ(ホーチミン)」→「バンチャオ(カンボジア)」という感じで、発音はグラデーションだなと思います。
今回のバインセオマップ
ベトナム北部:ハノイ
ハノイのレストランにバインセオがあったので、思わず頼んでしまいました。夫には「北部のハノイでなぜ南部料理のバインセオ…」と冷ややかな目で見られましたが笑、これが南部と違う食べ方でちょっと面白かったです。
バインセオをさらにライスペーパーで包みます。
また、細く切ったにんじん、きゅうり、パイナップルも包むのが特徴です。
私は、このライスペーパーで巻くハノイ風にアレンジされたバインセオに「邪道だ…」と思ってしまいましたが、一口食べると気持ちはすっかりハノイ風に吸い寄せられてしまいました。
滞在中に3回も食べてしまいました。
ハノイではライスペーパーで巻く系の料理が多いので、バインセオも巻いてみたら美味しかった、という感じで定着したのかなと思っています…。
ここで、過去のいろんなバインセオ(バンチャエウ)を思い出しました。
ベトナム南部:ホーチミン、ファンティエット
通称ピンクの教会の向かい、タンディン市場の奥に有名店「Bánh Xèo 46A」があります。ミシュランガイドにも載っていました。
ここは何を頼んでも美味しく、ボリュームが非常に多いです。
下の写真はBình Thạnh区のバーチウ市場内のバインセオ屋さんです。ここの
bánh xèo nhỏ(バインセオ小)は私にはボリュームがちょうど良く、ベトナム人友人と行った後、一人でフラッとよく訪れました。
ファンティエット風のバインセオ:小さい、海鮮、先に割る
こちらは、別のベトナム人友人と行ったファンティエット風のバインセオ屋さんです。露店で、赤い小さなプラ椅子で食べました。
七輪の上に鉄の専用鍋を置きその中に生地を流していきます。具はエビともやしなどでした。豚肉も入っていたかも…?出来上がったら生地は割ってしまい、生野菜を入れて、上からヌクマム(ナンプラー)ベースの甘辛ダレを掛けて混ぜて食べます。
この鉄鍋にも、食べ方にもびっくりでしたし、とにかく美味しかったことを覚えています。ホーチミンのBình Thạnh区、Bạch Đằng通りから少し入ったところでした。
ベトナム南部:メコンデルタ(カントー、ヴィンロン)
カントーのバインセオ:シャキシャキした何か
料理の写真は残っていませんでしたが、このメコン川が見えるレストラン Mekong 1965 でのバインセオは非常に美味しかったです。
中にシャキシャキした食感のハヤトウリ?が入っていました。
ヴィンロンのバインセオ:食材が美味しい
ヴィンロンはメコン川沿いにある小さな街ですが、交通要所だったために歴史が古く、今のホーチミンよりも昔から街があったそうです。
ここではヴィンロンから小舟で中洲まで行き、一泊しました。夕食がバインセオでした。カントーと同じく、シャキシャキしたハヤトウリ?が入っていて美味でした。ヴィンロン、バインセオ以外も何を食べても素朴で食材の味がしっかりして美味しかったです。
カンボジア南東部: プノンペン
さて、プノンペンに移ってからホーチミンにもハノイにもあるベトナム料理店 Nhà Hàng Ngon を見つけて、バインセオで懐かしみました。
ここでしか食べられないと思っていましたが、後にカンボジアでは「バンチャエウ(បាញ់ឆែវ)」という名前でポピュラーな料理だったことに気づきます。
サロムさんが作ってくれたバンチャエウ
友人宅で、家事サポートのサロムさんが作ってくれたバンチャエウを頂きました。全てが手作りで驚きました。タレは市販があり、粉もバインセオ用のものが市販されているので、それを使うのだと思っていましたが、違いました。
ナンプラーを中心にタレは手作り、粉も自分で米粉などを配合したもので、感動のおいしさだったことを覚えています。
コロナ禍のZoom料理教室で自作バンチャエウ
手作りは美味しいと知ったので、Zoomカンボジア料理教室でバンチャエウがあった時に申し込みしました。
実は材料も手順も多く、ギリギリ1.5時間のレッスン内でおさまりました。非常に美味しく、充実感もありましたが、やはり道具と材料が揃う専門店で食べた方がいいなと思いました笑。
作る経験ができてよかったです。
カンボジア北西部:シェムリアップ
バンテアイサムレ遺跡に行く時に、遺跡見学の前に朝ごはんを食べようかなと遺跡周辺をふらついていたら、目の前に現れたのがバンチャエウ屋さんでした。
中身は何が入っているか聞いたら、もやしと魚をほぐして味をつけたものとのことでした。シェムリアップは内陸なので、まさか魚とは。
トンレサップ湖の淡水魚だと思います。
これが、パリパリ割ってからタレを注ぐ、ファンティエット風と同じ食べ方でした。海側の食べ方がこのアンコールの森の中でも共通しているのが面白いです。
カンボジア人のバインセオに対する複雑な気持ち
カンボジアではPhởはベトナム料理という認識で、お店での表記も Phoではなく Phởとベトナム語で書かれています。
しかしバインセオ(バンチャエウ)は違うように思います。カンボジア人友人にバンチャエウを食べに行こうと誘われた時に、私が好きなベトナム料理だよと答えると、少し難しい顔をしていました。
それは歴史に関係するかもしれません。カンボジアがフランスから独立する時までは、ベトナム南部の主権の回復に希望を持っていたと、ベトナムの歴史の本で読みました。
今の一般的な認識では、ベトナム南部がバインセオの発祥ですが、そのベトナム南部とはカンボジアなのだ、とカンボジア人は心の深くで思っている気がします。
ベトナム文化に詳しい、田畑トマトさんの記事が参考になります。
ぜひ食べてください!
バインセオ(バンチャエウ)はどの地域でも形を変えながら、地元文化が反映されている興味深い料理です。ぜひ、ベトナムやカンボジアを旅行する際にその地域のバインセオを食べてください!